【極私的名盤をご紹介⑯】〜DuncanBrowne/TheWildPlaces〜プログレ進化のカタチ...これがひとつの究極!

ダンカン・ブラウン(以下、D/B)のソロ3枚目のアルバムです。まずは、このアルバムのものすごい参加メンバーをご紹介しますね。
JohnGiblin:bass
SimonPhillips:drums
TonyHymas:Keyboard
DuncanBrowne:Vo.AllGuitars
完全に4人編成のバンド指向で作られたアルバムです!
この1年前にリリースした、このアルバムとほぼ同じ指向性の、METROというバンドのアルバムがあります。

メトロはD/Bと同じくソロアーティストとして活動していて、パッとしなかったピーター・ゴドウィン(白いスーツの人です。担当はVo.key.)と意気投合して、ついでにギタリストのシーン・ライオンズを一緒に誘って作ったトリオバンドです。ちなみにこのMETROのアルバムも、リズム隊(JohnGiblin:b.&SimonPhillips:ds)はD/Bのソロと同じメンバー!
つまり、サウンドとしてはMETROと「TheWildPlaces」は、ほぼ同じです!
私はこの2枚はD/Bの作品だと思っています。
METROのファーストアルバムリリース後すぐにD/Bは脱退してしまうのですが、ベースとドラムはD/Bとその後も一緒に...という感じです。いかにこのMETROというバンドのファーストアルバムがD/Bの主導でつくられたかのわかりやすい証明だと思います笑
このアルバムとバンドは、のちにデヴィッド・ボウイが「Let'sDance」(1983年)の中でA-1.CriminalWorldをカバーしたことで広く知られることになりましたが、そのカバーバージョン自体は丁寧な言葉遣いに気を割いても「クソ」みたいなものだったので、私はとてもがっかりしました。このアルバムは仏国やスペインやイタリアなどのヨーロッパ各国ではかなりヒットしたそうなので、ボウイも原曲やこのアルバムをとても好きだったのだと思います。ナイル・ロジャースにはその良さを理解することは全くできなかったようなので、ボウイもおそらくは残念だったのではないでしょうか笑
METROというバンド自体は、D/B脱退後もピーター・ゴドウィン主軸に活動は続けられるのですが、ソングライターを失ったバンドの音楽は一気に変わり、さして取り柄のないエレポップになりました。(なので、もうこのバンドはどうでもいいです笑)
D/Bの「TheWildPlaces」に話を戻すと、私にとってはオールタイムベストテンに入るほど好きなアルバムです!
ジャケット写真を見て、すぐわかると思いますが、レコード会社は明らかにロキシー・ミュージックまたはブライアン・フェリーの路線を狙ってます。まぁ、率直に言って、気持ち悪い、安易で酷い世界観ですね〜汗
でも、楽曲とサウンドは超一級品です!
完全にパーマネントなバンドとしての指向性を持っていたようで、要するに4人組のバンドとして、活動しています、という感覚です!とにかくGiblinさんとPhillipsさんによるリズム隊の演奏がとても素晴らしく、二人の相性も抜群で、サウンドの完全な「主役」となっています。
そこにクラシックギターで鍛えたD/Bの繊細なアコギの紡ぎと1音1音がとても綺麗なエレキギターの伸びのある俗に言うバカテクフレーズに、ずっと後にジェフ・ベックのサウンドマスターとして活躍するセンスとテクニックを兼ね備えたTonyHymasの見事なシンセアレンジと鍵盤テクニック...
私はこのサウンドが、プログレッシブ・ロックというものが洗練されていった「ひとつの究極」の姿なのではないかと思っています。
まずはこのアルバム全曲(CD版)についてメモっておきましょう!
1.The Wild Places (5:55)
METROの「CriminalWorld」と同じ傾向の“姉妹曲”ですね...笑
Giblinさんのフレットレスベースとセンスの塊のようなPhillipsさんのタイコのフレーズに導かれて、D/Bのウィスパーヴォイスが艶かしいです。名曲だと思います!!!このアルバムの唯一の不満点はD/Bのウタですが、ウィスパーやルー・リードばりの語りぽい入れ方だと苦になりません...笑
2.Roman Vécu(4:43)
粒ダチの綺麗なD/Bのエレキギターのアルペジオにロマンティックなメロディのウタ。シンプルなバラードかと思いきや途中から思いっきりフレットレスベースとキレのあるタイコがキメッキメのプログレちっくな演奏に展開されていきます!
3.Camino Real, Part I, Part II, Part III" (Browne, Giblin, Thomas, Hymas) (8:30)
6/4と展開後は4/4、さらに変拍子が絡む思いっきりプログレッシブ・ロックのインスト曲です。D/Bはこのアルバムの前まではアコギが中心なこともあり、マイク・オールドフィールドと同様にエレキギターでも指弾きが主体なのですが、この曲ではおそらくピック弾きで完全にプログレ・ギタリストになってます。
4.Samurai(4:25)
この曲は、ピーター・ゴドウィンとの共作とクレジットされている(7.PlanetEarthも)ので、METROの頃に創られた曲のようです。シンバルワークによる深みのある空間の中からフレットレスベース特有のヌルッとした輪郭のベース音フレーズのイントロから、いきなりノリの良い“普通の”ロックになります...笑
Giblinさんのノリの良いベースに救われてますが、やはりこんなテンポの良い曲になるとウタがD/Bというのはちょっとツライ汗ですね...笑
5.Kisarazu(7:10)
ハーモニクスと指弾きの美しいアルペジオ、ベースもハーモニクスと複弦弾き、金属モノ主体で空間を作るタイコのテクニック、そしてトニーの真骨頂とも言えるアンディ・サマーズばりの空間シンセとリリカルなピアノ。静かに語るようなD/Bのウタがとても柔らかに聴こえます。
6.The Crash(3:53)
タイトなキメフレーズからシンプルでご機嫌なロックになりますが、この曲が素晴らしいのは珍しくD/Bのウタです。爽やかなメジャーの、一見、なんの変哲もないロック・ソングですが、D/Bのウタのおかげでかなり優しく“英国の田園風景”ぽい楽曲になってます。勢いがあるロックではなく、ヨーロッパ的でどこか醒めているような...ちょっと珍しい感じです。
7.Planet Earth(6:15)
ピーター・ゴドウィンとの共作というのがとてもわかりやすいミディアムテンポのフォークソングですね。曲としてはまぁ、普通のフォークソングでちゃんとしたVo.が歌えばなんとかなるかもという感じですね...汗
2分くらいある長めのアウトロにおける、GiblinさんとPhillipsさんの演奏で救われている感じです。
◯プログレッシブ・ロックの“一つの究極”とはどういうことか?
KingCrimsonとかPinkFloydとかを、TheBeatlesと同じくらい好きでとにかく聴きまくっていた中学生とか高校生あたりの頃から、それぞれのプログレバンドがさまざまな音楽的進化(?)を遂げていく中で、もっと研ぎ澄まされたり洗練されたりしたら、プログレッシブ・ロックってどんな感じになるのだろう...と漠然と考えていたことを覚えている。
このD/Bの「TheWildPlaces」というアルバムに出会ったのは、高校2年生くらいの頃だっと記憶していて、たとえば、マイク・オールドフィールドの「Ommadawn」(1975年)とかクリムゾンで言えば「Red」(1974年)とかフロイドで言えば「炎」(1977年)とかを比較的よく聞いていたと思う。
で、当時は、確かに好きだったけど、それは、実はJohnGiblin+SimonPhillipsの2人が好きだという理由だったと思う。つまり音楽性というより演奏が好きだった気がする。
それがなぜ、〜これこそプログレの究極の姿ではないだろうか〜なんて大袈裟に捉えるようになったのか・・・?
おそらくだが、それはマイクオールドフィールドが全欧州で人気を獲得することになるアルバム、「Crisis」(1983年)および「Discovery」(1984年)がめちゃめちゃ好きになったせいだと思う。ちなみにあのYesの「90125」も1983年リリースです。
あの「TublarBells」(1973年)のアーティストが、このPOPサウンド???それも極上の???
しかもヒットチャートTOPのバカ売れアーティストの仲間入り???
あらためて聴いても、この頃のマイク・オールドフィールドのウタ入り楽曲の演奏は、偏執狂ぽいほどの完璧主義志向を持つプログレのソロアーティストが創ったとはにわかには信じられず、完全にその爪を(テクニック的にも指向性としても)隠し切っているんです!
でも、たとえば米国で当時、あたり前にスタジオミュージシャンの起用でしっかりと細部までプロデューサーにより整備された金太郎飴ぽい「売れ線」サウンドとは真逆のちょっと変わった個性的な音づくり。
「うーん、ちょっと待てよ...なんか同じような違和感を感じたサウンドがどっかにあったよなぁ...」
という白羽の矢が刺さったのがこのアルバム「TheWildPlaces」であり、そのアーティストD/Bだったという感じだったと思う。
要するに、とても普通の努力だけなどではたどり着けないような超絶テクニックとどう頑張っても隠し切ることができない個性を使って、POPソングを演る=創造するということ。
これがプログレロックの『進化』の正統なあり方なのかもしれない...と強く確信したわけです。そしてそのマイク・オールドフィールドの一連の「ウタもの」楽曲を凌ぐ究極のプログレ作品がこのアルバムということです。
マイク・オールドフィールドの一連の「ウタもの」楽曲は、間違いなくサウンドとしては個性的で独特ではあるけれど、プログレの定番とも言える“変拍子”や“変調”は見られない。というより、それら=つまりプログレそれ自体の特徴をてんこ盛りにした長尺のインスト曲用にLPの片面を贅沢に使っているというスタイルを基本としている感じだ。
D/Bの作品「TheWildPlaces」と次作の「StreetsOfFire」(1979年)はメンバーを固定化し、「ウタもの」楽曲の演奏の中に“変拍子”や“変調”を見事に盛り込んでいる...というわけです!ヨーロッパ的な憂いや諦め、デカダンスなニュアンスなどの“匂わせ”にも成功している!

特に私がD/Bの創造した楽曲の中で、もっとも好きな1曲は、アルバム「StreetsOfFire」収録の「Fauvette」では、これだけPOPな曲なのに“変拍子”と“変調”が盛り込まれ、そこら辺の腕自慢レベルのミュージシャンではとてもコピーできないレベルの演奏なんです。
「この『1拍』は何?なんで入っているの?」
普通に演奏するとリズムが裏返っちゃうような感じがするし、いわゆる“ノリ”がまったく作れないし・・・
そうです。プログレロックを演る凄腕ミュージシャンだからこそ、つまり超絶テクニックを持つ職人だからこそ創ることができる音ということなんです!
死ぬまでに、ボケる前に、どうしても「Fauvette」を1度は演りたい!
みっともなくも赤裸々に、私の夢を告白して、このメモを締め括ろうと思います!
