【極私的名盤をご紹介⑰】〜Free「Fire and Water」〜4人で鳴らす沈黙!

ども、ガムです!
いや、実はこのアルバムのメモを書くなんてマジで書き出すまで思わなかったというのが本当のところ。
かなり懐かしい“ハードロック”と、今でも呼ばれるバンドで間違いないよね...笑
極私的名盤として取り上げるにはどうなんだろ?メジャーすぎて面白くないかも?なんて思う節もあるが、たまぁ〜に無性に聴きたくなって、かけると一気に最後まで聴いてしまう!という意味ではやはり間違いなく名盤だと思う!通して聴いてもほんの35分程度、というのも魅力の一つかな...笑
取り上げる気になったきっかけは完全に偶然です。
ここのところ、私の必ず1日に1度は聴く愛聴盤のうちの2つ、プリンス殿下のアコギを中心としたアルバム「TheTruth」とピアノの弾き語りの「One Night Alone...」。
この2枚のどちらかを、必ず就寝時にかけっぱなしにしているのですが、何をどう間違ったのか「Fire and Water」が鳴り出してしまったのです。
かなり久々に聴いたためかどうか、あるいは鳴らすデバイスが比較的最近入手したデジタルスピーカーだったためかどうか、要するに、記憶の中の曲および演奏と印象が違う、かなり新しい音として刺激的だったのです。
「う〜ん、コレはすごいなぁ〜」
私は、いわゆるプログレ以外のロックバンドとして“お手本”として捉えているバンドが2つあって、それはレッド・ツェッペリンとザ・ポリスなのですが、この2つのバンド以外でまぁまぁメジャーどころを含めてよく聴くのがこのアルバムです。
では、例によって一般的な評価とは違うかもしれませんが、私の個人的な思いや感想だけをメモっておきたいと思います。
⚫️Freeというバンドの“唯一”のアルバム
この「Fire and Water」は3作目にあたり、Freeは全部で6枚のスタジオ盤と1枚のライヴ盤があるのですが、(すみません、他にも出てるかもしれませんが、私が持ってるのはコレだけです...汗)このアルバムだけ、全く違うバンドの作品だと私は思っています。
メンバーは4人で、
Paul Rodgers/Vo.
Paul Kossoff/g.
Andy Fraser/b.
Simon Kirke/ds.
ですが、最後の6枚目のアルバムはギターとベースが変わっています。
単にバンドの最高傑作というというよりも、私にとって、この4人でたった1枚だけ創ったアルバムがこのアルバムと強く思っています!
私が一応持っているFreeのCD音源としては5枚目「Free at Last」以外はあるのですが、このアルバム以外はほとんど聴かないです。
例えば1st.は「I'm a Mover」とブッカーTジョーンズのカバー「The Hunter」が入っているアルバム、2nd.は「I'll be Creepin'」と「Woman」が入っているアルバム。4th.は「Be My Friend」とロッド・スチュアート&ザ・フェイセズの盛り上がりレパートリーカバーであった「The Steeler」の原曲が入っているアルバム。5th.は「Little Bit of Love」が入っているアルバムで、最後の6th.は名曲「Wishing Well」が入っているアルバム...要するにシングル曲の音源を所持しているみたいなものです。
ハッキリさせておきましょう!
私は、この『Fire and Water』以外のアルバムはちっとも好きではありません!...笑
みなさん、ご存知の方も多いでしょうけど、Vo.のPaul Rodgersとds.のSimon Kirkeは、最後のアルバム「Heartbreaker」リリースの1年後に、元Mott The HoopleのMick Ralphsと元クリムゾンのVo./bだったBoz Burrellとバンドを作ってあの名作アルバムBad Companyを出すのですが

『Fire and Water』以外のアルバムのFreeというバンドは誤解を恐れずに言えば、「リズムがよりルーズになったバドカン」という感じです...汗(ちょっと違うのは違うけど)
ただ、この『Fire and Water』は違います!
多くの人はこの作品を「“All Right Now”が入った陽気なブリティッシュ・ロック」としか認識していないかもしれません。しかし実際には、このアルバムは恐ろしく“間”の音楽です。
音数を削り切った結果として成立した、異様にテンションの高いブルース・ロック。後年のヘヴィロックやストーナー、さらには一部のジャズロック勢にまで影響を与えた“引き算の美学”がここにあります。
・・・正確に言えば、ここにしかありません。
Freeというバンド自体、彼らがデビューした当時としては異様でした。
1968年結成時、メンバーはほぼ10代。なのに演奏しているのは老人...笑...みたいな渋いブルースばかり。しかも、同時代のLed ZeppelinやDeep Purpleが「音の密度」と「技巧」で押していた時代に、Freeは逆に“空白”で勝負したという感じです。
このアルバムの中で、特に評論家筋で神格化されていたのは、やはりg.のポール・コソフです。
彼のギターは、速くない。派手でもない。テクニカルでもない。
だが、“一音の圧”が異常です!
普通のロックギタリストはフレーズを弾く。コソフは「感情の重さ」を弾く。あの極端なビブラート。音を置いたあと、まるで肺から絞り出すように揺らす。ブルース由来ではあるのですが、B.B.キングほど洗練されていないし、クラプトンほど知的でもない。もっと生々しい。“傷口が開いたまま”みたいなギターです。だから、このアルバムは聴き込むほど「暗い」。代表曲の “All Right Now” だけ聴くと豪快なロックに聞こえますが、アルバム全体はむしろ沈鬱です。
例えば “Heavy Load”。これはほとんど鬱の歌です...汗 若さの理想と疲弊が同居している。
1970年の若者が歌っているとは思えないほど老成している。
そして “Mr. Big”。
この曲は後のハードロック/メタルに与えた影響が異常に大きい。重く、遅く、執拗なリフ。しかし同時にグルーヴが“黒い”。ここがこのアルバムにおけるFree最大の特徴です。
彼らはハードロックなのに、“白人ロックっぽくない”。特にアンディ・フレイザーのベースは、ほぼソウル/ファンク畑の発想で動いている。だからFreeは単なるブリティッシュ・ブルースにならなかった。実際、このアルバムはジャズロック好きにも刺さることが多いんです。
理由は単純で、「演奏の会話」が非常にジャズ的だから。例えばマクラフリン系のジャズロックが“音数による対話”だとしたら、このアルバムのFreeは“沈黙による対話”。
誰かが弾きすぎると成立しない。だから、派手なプレイヤーほどFreeをコピーできない。逆に、本当にグルーヴを理解しているミュージシャンほど、このアルバムを恐れるという感じです。
あと重要なのは、やはりAll Right Nowの存在です。
この曲はロック史上でも珍しい、「巨大ヒットがアルバムの本質を隠してしまった」タイプの名曲と言えます。もちろん曲自体は素晴らしい。あのリフはロック史に残る発明と言ってもいいでしょう。シンプルなのに永遠に耳に残る。 ただ、この曲のせいでFreeは“陽気なクラシックロックバンド”として消費されてしまった。
本当は違う。
Freeはもっと危うい。もっと繊細で、もっと痛々しい。
実際、コソフは後年ドラッグ依存で崩壊していくし、その破滅性は既にこの時点で音に滲んでいる。 だからこのアルバムを聴く時は、“70年代英国ブルースロックの名盤”というより、
「若すぎる天才たちが、一瞬だけ完全なバランスに到達した記録」
すなわち“奇跡的均衡点”として聴いた方がいいと思っています。
個人的には、このアルバムの本質は“熱”ではなく“緊張”だと思っています。
音は少ない。・・・なのに、空気が張り詰めている。
つまり、優れたジャズのカルテット演奏に近いんです。特に静かな場面ほど怖い。
そして皮肉なのは、この「何も弾かない美学」が、その後のロック界で『最も真似されなかった』点でしょうね。
みんな「All Right Now」のリフはコピーした。
でも、本当に危険だったのは、その“隙間”の方だったんですよ。
この『Fire and Water』というアルバムの凄さは、
“ロックバンドが4人とも同時に引き算を覚えた”ことだと思います。
普通は誰かが埋めたくなる。
ギタリストが弾きすぎる。
ドラマーが叩きすぎる。
しかしFreeは逆でした。
特に “Mr. Big”。
これは後のドゥームとか、ストーナーとか、グランジにまで繋がる“重さの原型”です。
Black Sabbathが“暗黒”なら、Freeは“虚無”。しかも、それをブルースでやっている。
さらに重要なのは、“All Right Now”の存在。 あまりに巨大ヒットだったせいで、アルバムの陰鬱さが隠れてしまった。実際はFree史上もっとも緊張感の高い作品です。
この『Fire and Water』という作品だけは、若さ、危険性、グルーヴ、緊張、メロディ、空白、黒さ、ポップ性が全部同時に存在しているというまさに奇跡のような作品だと思います。普通、こういうバランスは長続きしません。実際、Freeも長続きしなかった。
だからこのアルバムは、完成品というより、
「崩壊する直前にだけ現れる均衡」
として聴こえるんです。そして本当に皮肉なのは、ロック史がこのバンドから学んだのが“リフ”ばかりだったことです。本当はFree最大の発明は、
「4人で鳴らす沈黙」
だったんだと思います。
では、『Fire and Water』の全曲解説メモを。
このアルバムを細かく聴いていくと、実は「曲」以上に、“4人の呼吸”が主役であることが分かります。
特に重要なのが、
・サイモン・カークの「前ノリでも後ノリでもない、沈むようなビート」
・アンディ・フレイザーの「親指主体のベース」
・コソフの「音価を伸ばすギター」
・ロジャースの「歌うというより“乗る”ボーカル」
です。
普通のハードロックは“縦”で聴かせる。Freeは“横”で聴かせる。だからこのアルバムは、リフより“うねり”を聴く作品なんだと思っています。
【全曲メモ】
01.Fire and Water
タイトル曲にして、このアルバムの“哲学”そのもの。
まずサイモン・カーク。
この人、技術的にはボンゾ級の派手さはない。
でも“キックの位置”が異様なんです。
普通のロックドラマーより、ほんの少し後ろ。
しかもバスドラムを「ドン!」ではなく「ボフッ…」と沈ませる。
この“空気を押すようなキック”がFreeの重さの核心です。
特にこの曲では、ハイハットを開けすぎない。
だから空間が乾いている。
その乾いた空間の中を、アンディ・フレイザーのベースが泳ぐ。
そして重要なのが、彼のサムピッキング。
フレイザーはピック弾きでも指弾きでもなく、かなり独特な“親指主体”のタッチを使います。そのせいでアタックが丸い。しかし丸いのに、前へ出る。
普通、親指弾きは輪郭がぼやけます。でもフレイザーは逆に、“塊”として前へ来る。
この曲のベースラインなんて、実質的には第二のリフです。
しかも彼、単純なルートを弾かない。
和音の“隙間”を埋めるように動く。
だからFreeは4人なのに音像が異様に広い。
そしてコソフ。
この人の凄さは、コードストロークですら“苦悩”に聞こえること。
リフ自体は単純。でも音を切らない。
音符と音符の間に、“ため息”みたいな余韻がある。
そしてロジャース。
この人はロックボーカリストというより、ソウルシンガーです。
しかもかなり黒い。ここでの歌唱は、「俺が前に出る」というより、バンドグルーヴの中央に“沈む”。だから全員が一つの巨大なリズム楽器みたいに聞こえる。
02.Oh I Wept
これはアルバム最初の“闇”。実はこの曲、かなりジャズ的です。
特にサイモン・カーク。
彼はここでビートを明示しすぎない。ライドもスネアも、あくまで“気配”。
Tony Williams的なテクニックはない。でも発想は少し近い。
つまり、「グルーヴを叩く」のではなく「グルーヴを漂わせる」タイプ。
そしてコソフの泣きのギター。
ここ、本当に凄いのはビブラートです。
コソフのビブラートは、クラプトンみたいな均一振動じゃない。
もっと“不安定”。揺れ幅が一定じゃないんです。
だから感情が制御不能に聞こえる。
しかも彼、この曲では“弾かない勇気”が異常。
下手なギタリストなら絶対オブリを入れる空間で、黙っている。
この沈黙が怖い。
03.Remember
ここでアンディ・フレイザーの異常さが爆発します。
この曲、実はベース主導。普通のロックならギターが空間を支配する。
でもFreeは違う。フレイザーが曲構造を決めている。 特に彼のサムピッキング。
親指で弾くことで、“ドゥン”という柔らかい低域になる。
でもリズムは前に突っ込む。これ、黒人R&Bベーシストに近い発想です。
だからFreeは英国ブルースなのに、どこかソウル臭い。
そしてカーク。
この曲ではフィルが異様に少ない。
しかし、その代わり“間の配置”が完璧。
スネア一発の位置だけで空気を変える。
ジャズドラマー的な「会話」がある。
04.Heavy Load
これはFree版の“深夜3時”。アルバムで最も疲弊している曲です。
まずロジャース。
この人、普通は男臭いボーカルの象徴みたいに語られる。でも本質は“弱さ”なんです。ここでは特にそれが出ている。歌っているというより、“耐えている”。
そしてコソフ。
この曲のギターは、もはやブルースというより“呻き”。レスリーを通した独特の揺れも相まって、音が溶ける。
彼はここで速弾きを完全放棄している。代わりに、一音を“持続”させる。これ、実はかなりジャズ的なんです。
マクラフリン系とは逆方向ですが、「音数ではなく、サステインで緊張を作る」という意味で。
そしてカーク。
ブラシを使っていないのに、感触はブラシ的。輪郭を曖昧にしている。
この人、本当に“叩かない”。でも、それが異様に重い。
05.Mr. Big
これは怪物です。後のハードロック、ドゥーム、グランジの原型。
そしてアンディ・フレイザー最大の名演。
この曲のベースは、もはやリード楽器。しかもサムピッキングゆえに、“硬くない”。普通、ヘヴィリフは硬質になる。でもFreeは柔らかく重い。
ここがBlack Sabbathとの違いです。
サバスは“鉄”。
Freeは“鉛”。
沈む。
そしてコソフ。
この曲では珍しく、かなり攻撃的。ただし、それでも“詰め込まない”。
彼のソロは、テクニックではなく“間合い”で圧を作る。
そしてサイモン・カーク。
この曲のキックが本当に凄い。
ほとんど引きずるように入る。
だからグルーヴが“転がる”んです。
普通のハードロックの直進感ではない。
もっと粘る。そして途中の長尺ジャム。ここが完全にジャズロック的。
ただし技巧ではなく、「反復によるトランス」へ行っている。
Canや後のクラウトロックに近い瞬間すらあります。
06.Don’t Say You Love Me
この曲は地味ですが、実はアルバムの裏核心。Freeの“間”が最も露骨。
特にカーク。
彼、ここでは「拍を説明しない」。
だから聴き手が自然に“揺れる”。これ、ジャズで言うレイドバック感に近い。
そしてコソフ。
この曲は、彼の“歌伴能力”が分かる。
彼はシンガーの邪魔を絶対しない。でも存在感は消えない。
つまり、「歌を支えながら、自分の痛みも鳴らしている」んです。
こういうギタリスト、本当に少ない。
07.All Right Now
有名すぎる曲。しかし、聴き直すと実はかなり“黒い”。
まずフレイザーのベース。
ここ、普通に聴くとギターリフばかり耳に行く。
でも実際はベースが曲をドライブしている。しかも例によって親指主体だから、弾力がある。単なる8ビートにならない。
そしてカーク。
この曲の凄さは、“軽快なのに重い”こと。普通は両立しない。
キックの置き方が絶妙に後ろだから、ノリは良いのに浮かない。
ロジャースも素晴らしい。
この人、シャウトしているのに力んで聞こえない。完全にリズムの中にいる。
そしてコソフ。
あのソロ。技術的には難しくない。でも、“あの間”はコピー不能です。
速く弾けば成立しない。埋めれば死ぬ。
だから多くのギタリストがリフだけコピーして、本質を逃す。
この曲の本体は、「抜いた時の緊張」だからです。
『Fire and Water』を聴く時、多くの人は、
・コソフの泣き
・ロジャースの歌
・“All Right Now”
に注目します。もちろんそれも正しい。でも本当に異常なのは、リズム隊です。
特に、
・アンディ・フレイザーの“黒い親指”
・サイモン・カークの“沈むキック”
この二つ。ここがFreeを唯一無二にしている。
だから彼らは単なる英国ブルースでも、単なるハードロックでもない。
むしろ、「ブルースとソウルとジャズ的空間感覚が、偶然ロックバンドの形になったもの」なんです。そしてその奇跡が、最も完全な形で封じ込められているのが、このアルバム『Fire and Water』なんですよ。
随分前から公言しているつもりなのですが、私は基本的にブルース、というよりも汗を感じてしまう音楽がちょっと苦手です。....アタマ悪そうで...笑
私自身が汗っかきでアタマが悪いから、苦手なんだと思います...汗
その私が、なぜかとてつもなく魅かれてしまうブルースROCK、それも私がどうやら好きになるサウンドの共通項ではないかと思われる“ソフィスティケート(洗練)”の欠片もないほぼ10代〜20代そこそこの若造たちの再現性など考えたこともない放りっぱなしたようなサウンド。
そんな唯一性に強く魅かれるというのは、ひょっとすると、死期が近いのかもしれないですね...汗
いかん、名城でも見に全国をあまねく廻る計画でも立てなくちゃ・・・なんか要るでしょ、明日を楽しみにするものが...笑
