浮気疑惑 #せりふ三題噺
■セリフ
「調べないほうがいいよ」
■三題
・合皮
・シーグラス
・将棋
※創作です、一部、暴力的な表現を含みます
すぐに目に入ってきた
彼の部屋にある合皮の大きな鞄
私は、留守番中
散らかっている部屋を見兼ねて片付けている
最近は、喧嘩ばかりすれ違いで少ししか会えなくて
ここに来るのも1ヶ月ぶりだった
デートらしいデートが本当に久しぶり
私は、彼を束縛したくないから我慢していたよ
◇
彼の部屋で、2人でゆっくり映画を観ていたら
彼のスマホが鳴る
彼は出ない
チラッと覗いて、また伏せる
また鳴る
音を消して、また伏せる
女の子からか?もしかして浮気か…?
怪しい…いや、けどそんな浮気する時間あるかな
最近、ずっと忙しい忙しいと言っていた
転職したばっかりだからそれが本当なのは分かっている
だけど…不安は残る
彼はめちゃくちゃイケメンで、ただすこしだらしないところもあったから
また、スマホが鳴る、バイブにしていたみたいだけど
スマホのバイブが鳴る
彼は私の頭を撫でて、スマホを取り何かメッセージをうちはじめる
覗くなんてしない、私はいい女だから
ごめん
すこしだけ、仕事いく
すぐに帰るから
軽く唇を合わせて彼は立ち上がる
私は何も言えなかった
それくらい彼は急いで部屋を出ていく
残された私は
映画を止めて、そう
掃除をし始めた
震える
浮気なの?仕事なの?
何かしていないと、泣きそうだった
その時に見つけた合皮の大きな鞄
ベッドの下に
私は、それをずっと見つめていた
勝手にみてもいいかな
明らかにその合皮の鞄だけ、この部屋から浮いている
ゆっくり鞄の方に近づいて
私は正座する
重みがある鞄、ジャーとチャックをあける
中には将棋の駒…?と、あとコレは何?
シーグラス?
綺麗な色のソレを手に取り、窓の方にかざそうと
した時、私は息が止まりそうになった
手にヌルッとした感触
えっっ、ち、血だらけだ
シーグラスも、将棋の駒もー…
だめだめだめだめ
声が出ない
あぁ
鞄を閉める
けど、手についた血液が鞄についている
私はもう、震えるしかできない
あぁぁぁなになになに
腰が抜けて
その時に
ガチャ
玄関のドアの音
彼は一瞬で状況が分かったようで
私は腰が抜けて、座り込んだまま
血がついた手を膝にのせて
彼は急に笑い出しながら
「調べないほうがいいよ」
私の顔と、手と合皮の大きな鞄とを見渡して
「あーあ、出掛ける前に言えば良かったな
ごめんな」
私は首を横に振る、何度も
「見たんだろ?ってか血だらけだもんな、お前」
また、笑う
そしてゆっくり近づいてくる
そして、思い出した
強盗事件のニュースを
骨董品屋だか、アンティークショップの強盗事件
店主が殴られて
盗まれたのが貴金属とシーグラスと…
あれは、1ヶ月ほど前なのか
彼は私の前にしゃがむ
「見たの?シーグラスと将棋の駒、おまえさ、
なぁ、もう調べないほうがいいよ」
笑っていない
私はまた首を振る
そして力をこめて彼に言う
「ねぇ、浮気じゃないなら
浮気じゃないならなんだって許すから!!」
彼はびっくりした顔をして
また笑う
「お前、狂ってるな…」
彼は私を抱きしめる
私も血だらけの手のまま彼を抱きしめる
私は涙が出てきた
「心配するな、大丈夫だから」
彼はそう、ゆっくり言いながら私をさらに強く抱きしめる
私は涙が止まらない、手も体も震える
!?
あっっっつ
突然、叫ぶ 彼氏が
「何?お前、何やってんの」
私は
包丁で彼の背中を
刺していた…んだ
「狂ってるなんて言わないでよ!!!」
そう
狂ってなんかいない
不安だったから、ちょっと脅そうと思ってただけ
ベッドの下に隠そうと思って持ってきていた
だって全然会ってくれなかったし
喧嘩の度に私のこと狂ってるって言うし
今日のデートだってどこにも行かないし
私ばっか私ばっか私ばっか
私は涙がどんどん出てくる
彼の背中からはドロドロと赤いあったかいもの
狂ってない狂ってない狂ってないのに
ああー
どっちの声か分からない
けど、いいや
浮気じゃなかったのは安心したから、いいや
痛みに耐える彼氏の顔は
今までていちばんイケメンだった
私はぬるっとした手を彼氏の顔に塗りつけた
こちらに参加しました
いけたかしら、すこしホラーというか
狂気な感じに初挑戦してみました
