お母さんになれなかった私
「私、お母さんになれますか?」
息子を産んでたった1ヶ月後、
私は精神科の診察室にいました。
切迫流産からの前置胎盤、
妊娠中はほぼ寝たきり。
とにかく無事に産まれてくれることだけを
祈り続けた待望の赤ちゃん。
それなのに。
息子は、私を恐怖に陥れるもの、
でしかなくなっていました。
泣き止まない、母乳は出ない、眠れない…
怖い…可愛いなんて思えない…怖い…
夫は目を細めて息子を抱っこしています。
「ねえ?本当に可愛いと思ってるの?」
と聞きました。
何言ってるんだ?コイツ、って言う顔。
あ、私がおかしいんだ。
可愛いって思わなきゃ。お母さんなんだから。
ちゃんとしなくちゃ。お母さんなんだから。
思えば思うほど、顔も見たくなくなりました。
子どもを産めば、
お母さんになれると思っていたのに。
我が子を可愛いと思えないなんて、
人間失格です。
もう一度、お腹に戻してしまいたい。
こんな私は生きていてはいけない。
13階に住んでいた私に、頭の中で、
今すぐ飛び降りろ!と声がしました。
実家に帰ることにしました。
子どもの頃から厳しかった両親。
私は一人っ子なので、
息子は両親にとって唯一の大切な孫です。
「お母さんになれなくて、
大切な孫を育てられなくて、ごめんなさい」
と頭を下げました。
その時、母が、
「孫も大事だけど、
お母さんは娘であるあなたが1番大切なのよ」
と言ってくれました。
意味がわからず、
何言ってるの?
人間失格の私なんて価値ないのに、
と思っていました。
精神科に行くと、即入院をすすめられました。
嫌だったけど、
抵抗する力も残ってませんでした。
先生から色々な説明の後、
「何か質問はありますか?」と聞かれました。
私は、
「私、お母さんになれますか?」と聞きました。
先生は
「なれますよ!そのために入院するんです!」
と力強くおっしゃいました。
その言葉も信じていませんでした。
数ヶ月入院して、その後も実家で世話になり、
息子が一歳になる頃でしょうか。
寝顔を見て「可愛いなぁ」と思えたんです。
びっくりして、涙が出てきました。
やっと、お母さんになれた。
そんな夜でした。
あとから振り返ると、
たくさんの人に支えてもらっていました。
母や先生が言ってくれた言葉に支えられて
回復することができました。
もし、育児で辛い思いをして、
自分を責めている人がいたら、
それはあなたのせいではない、
病気のせいですよ、と伝えたいです。
今も人に助けてもらってばかりの私ですが、
私の経験が誰かの役に立てたとしたら、
嬉しいなと思い、初めて投稿してみました。
このきっかけをくださった下間都代子さんの
耳ビジサポーターズクラブの皆さまに、
いつも支えられています。
本当にありがとうございます。
