これを知らずパランティア(PLTR)は語れない:私がピーター・ティールに賭けた「人間とAI」哲学
未来は自然に起きるわけじゃない。
絶滅か、それとも進歩か。それは僕たち次第だ。
未来が勝手に良くなるわけはない。
〜ピーター・ティール〜
2000年、ペイパルは財務の危機に瀕していた。
ペイパルとは世界初のオンライン決済会社であり、イーロン・マスク率いるX.comとピーター・ティールが率いたコンフィニティとの合併でできた企業です。
圧倒的なシェアを奪うため、アカウントを作ってくれたユーザーに現金を配り、そこからまた新しいユーザーを紹介してくれた場合にも現金を配るというサービスを行い(現在では当たり前のサービスですが歴史的にはX.com,コンフィニティが始めたサービス)、まさにマーケットの支配、完全に利益を度外視し、ユーザー獲得に動き、競合他社は全く存在しない状態へと地位を獲得していました。
利益などユーザーがペイパルのサービスから離れられなくなってからでいい、業界に二番はいらない、我々が全てを支配する。
まさに伝説のスタートアップにふさわしい戦い方だったのです。
しかしペイパルはそのサービスゆえに現金は限界ギリギリ、さらにありとあらゆるボット、ハッカーからの不正利用、それすら必要経費として割り切っていました。
しかし今まさにその不正利用こそがペイパルを危機に追いやり、継続的にその不正取引をされれば破産という状況に陥っていたのです。
「私はロボットではありません。」
天才エンジニアのマックス・レブチンはこの問題に対し、若手数学科の軍団を引き連れ、チームをつくって会議を開きました。
対象となったのは「自動ボットをどう人間と区別するか」ということです。
レブチンらは数学上偉大な問い「チューリングテスト」への物理的解決を求められていた。
人間にできて、コンピュータにできないことは何か?
この問いに全員が真剣に何日も考え、ある結論を出します。
「文字認識」
コンピュータはわずかに文字に曲線を加えたり、線を増やすと人間には読めるが、コンピュータには手も足も出せない、これをユーザーに見てもらい自身で打ち込んでもらう。
「ガウスペック=レブチン・テスト」と呼ばれる、この方法はあらゆるボットからの不正をブロックし、この手の問題を解決することに成功しました。
現在では、「CAPTCHA」の名で知られるこのシステムを知っている方もいるのではないでしょうか?
この解決の最大の功績は、「人間とコンピュータの能力の純粋な違い」を明確に線引きしたことです。
人類初の物理的チューリングテストの発明は、現在のセキュリティー対策にも大きな影響を与えることになります。
しかし、これでペイパルの問題は解決したわけではありません。たいしたスキルを持たないボット使用者を撃退しただけ、本当の敵はコンピュータに精通し、アルゴリズムを駆使してその網を掻い潜る国際的ハッカーや詐欺集団。
倫理観はともかく彼らは優秀です。
ペイパルのエンジニアをもってしても彼らは「考える人間」であり、一筋縄ではいきません。
毎分何千という取引を行うペイパルのシステムを人力で監視し切るのは不可能との結論を出したエンジニアたちは、まず不正取引を抽出するアルゴリズムを作り出しましたが、相手は考える人間しかもハッカーや詐欺集団、仮に一度不正を暴かれ失敗したところで、次にはアルゴリズムを掻い潜り、あの手この手で平然と不正を行います。
結果、完全ないたちごっことなり、この方法では根本的には問題解決には至りません。その中でも「イゴール」と呼ばれるハッカー(集団?)には幾度も煮湯を飲まされ、嘲笑うかのようにシステムを突破されていったのです。
ペイパル社員たちは焦りをかくせず、「なんとかしないと」と、その雰囲気に包まれていました。
問題は、不正者が幾千の取引の中に不正取引を紛れ込ませること、人間は大規模なデータを高速で処理できず、コンピュータはプログラム通り動くだけで、「怪しい」などの人間の感覚つまり違和感には恐ろしく鈍感であること。
この問題を全て解決するために何度も何度も、上司も部下もなく、熱く議論し、全員が問題解決にあたりました。
ペイパルは、この問題に「人間とコンピュータが補完し合う」という画期的なアイデアを出します。
大規模なデータを処理する際、不正の可能性のあるアカウントに警告を出すプログラムを作り出し、そのアカウントに警告を立てる、そのアカウントの過去の取引とリアルタイム情報を人間にわかりやすいように視覚化したグラフで表示、不正対策チームはその視覚化情報から怪しいものに注意し監視するというハイブリッド型の不正検知システムです。
「イゴールシステム」と呼ばれるこのシステムは、不正者を無力化し、それを掻い潜るには、不正方法をさらに複雑化する必要に迫られます。
しかし不正は複雑化するほど痕跡を残しやすくなるのです。
このシステムは不正者を減らし、ペイパルでの不正率は金融業界の中で極めて少なくなったのです。
さらにこのデータの処理は住所や名前などの「文字」や金額などの「数字」など全く別の情報かつお互いの関係がコンピュータにはわかりにくい情報を同時に扱うことになる「ビッグデータ解析」の走りにもなりました。
「イゴールシステム」は大量の別種のデータを同時に大量に扱い、かつ足りない部分を人間の得意分野が補うという全く新しい問題解決の模範となるものとなったのです。
ペイパルのCEOを務め、のちに「シリコンバレーのドン」と呼ばれることになるピーター・ティールは、ペイパルの売却後、大金を得ても不正検知問題を真剣に考え続けていました。
その背景には、「9.11」、同時多発テロというアメリカ最大の悲劇があります。
アメリカ同時多発テロはイスラム過激派組織「アルカイダ」によって行われたテロ攻撃であり、多額のインフラ被害、そして多数の死者を出し、世界規模での対テロ戦争の引き金となった事件です。
ティールは、非常に明晰な頭脳、高い教養を持つだけでなく、自身でそれを昇華し哲学を形成する。
そして脅威のリスクテイカーでありながらそのリスクとの付き合い方を熟知しており、駆け引きの天才、人を惹きつけるカリスマ的な言動を持つ人間です。
しかし実はあまり知られていない、恐ろしいまでの「自由主義者」という側面を持ちます。
彼は自由を愛していました。
しかし超大国アメリカですら小規模集団の復讐心で強大な敵の自由を侵害できる。
自由と安全は同時に達成することはいかに難しいのかをティールに教えることになるのです。
「自分の大切で愛する自由が侵害される。」
ティールにとってこれほどの恐怖はありません。
「テロを未然に防ぎ、アメリカ市民の自由、ひいては自分自身の自由を守らねば」、ティールにとってアメリカは自由でかつ安全な存在ではなくなってしまったのです。
詐欺集団、そしてハッカー、ボット、あらゆる不正者を取り締まる際、ペイパルでは、「人間とコンピュータとの違い」、「コンピュータと人間の補完関係」、という哲学的問いに物理的回答を出してきた経験をテロの問題に生かせないものか?
ティールはペイパルの同僚、スタンフォード大学時代の友人を誘い、ペイパル売却資金を使って「パランティアテクノロジーズ」を創業することになったのです。
パランティアテクノロジーズは、ビッグデータを扱うデータマイニング、セキュリティソリューション企業です。
パランティアのルーツはティールが得たペイパルの思想です。
人間とコンピュータの補完関係という思想を使い、テロ、金融犯罪などの人々の安全に関わる大規模な需要を持つ問題を解決するというのが出発点なのです。
さらにティールはCEOを選択に大学時代の友人で哲学の博士号を持つアレックス・カープに声をかけます。
カープは専門ではない情報工学の話に関わるパランティアという企業の重要性を瞬時に理解し、候補者のリストに乗り、面接を経てCEOになります。
哲学者という異彩を放つ経歴のカープをデータ分析企業という全く関係ない分野のCEOにしてしうことは、ティールひいてはパランティアの異質性の象徴と言えるでしょう。
カープは自身がCEOに選ばれた理由について「他の候補者がパランティアの財務、潜在市場を語る中、私だけはこの企業は世界一重要な企業である。」と語ったことだと言っています。
私がカープの特性を理解する上で重要だと思う発言があります。
自身の専門の社会哲学を専攻したことやパランティアのCEOを引き受けた理由について「社会哲学は、失業に向かって直走り、最も高い教養を持つ、最も低い年収を得る方法なんですが、世界において非常に重要なことだから専攻したんですよ。わたしがパランティアのCEOを引き受け、共同創業者になったのも同じなんです。パランティアが世界にとって非常に大切な企業だからです。」
非常に大きな企業を作り出す場合、私はお金が全てだと考える人間を信用していません。
銀行口座に入った大量のお金の数値を眺め、ニコニコ笑っている人間に世界が変えられるとは思えないからです。
マスク、ティール、カープなどもお金を求めます。守銭奴のように欲しているのは間違えありません。しかし守銭奴ではないのです。
彼らはお金は紙切れだということを何より知っています。
しかし何か大きなことをなすために、そして世界を変えるには、どうしてもお金が必要なのです。
しかしお金を目的にしているわけではありません。
そのお金がゴールではなくそのお金で何を為すかを常に求めています。
彼らの世界の理想、テクノロジー開発にはお金が必要だというだけなのです。
パランティアテクノロジーズはCIAが運営するBCから出資を受け、その資金で「パランティア・ガバメント(のちのゴッサム)」をつくり、ソフトを提供。
ペイパル時代と同じアプローチを使い、コンピュータで大量のデータを処理し、例外や変則なものを検知、その上で人間の専門家がその検知を調査しパターンを分析し、結論を引き出す。
このソフトウェアは、オサマ・ビン・ラディンの発見や巨額金融詐欺事件の解決の証拠に重要な役割を果たしたのです。
私の「第2のポートフォリオ、パランティアテクノロジーズ」
このようにパランティアの創業とそのうちに眠る思想を読み解いてきました。
パランティアという企業を理解するのはとにかく容易ではありません。
製品、そして思想、哲学、技術全てが高次元で結びついている。
テスラのビジネスを理解するのは難しくはありません、それはテスラは直線的で直接的な世界変革と結びつけ、想像可能な人類の進化という哲学から理解しやすかったのです。
人類に対し明らかな敬意をもってプロダクトに昇華するテスラに対し、パランティアは特定の人種を明らかに忌み嫌っています。
彼らの中には明らかに思想の上位下位という差別的な思想があり、敵味方問わず人間の持つ「ネガティブで暗い思想」を「自由」という全く逆の概念と結びつけ、そこから生じるパラドクスをジンテーゼ的に理解した上でその思想がプロダクトに昇華される様を読み取らなければなりません。
私はテスラを最大ポートフォリオとして株式を購入してきましたが、パランティアテクノロジーズも市場が全く相手にしていない時期(ちなみに散々な言われようでした)に確信をもって購入してきました。
しかし買い始めて一年半くらいは給料と貯金を注ぎ込みそれなりの株数は購入できましたが、一度マーケットに価値を理解されるとあまりの株価の上げに買い増しできない残念な日々も過ごしてきました。
パランティアテクノジーズの私の平均約定単価は11.96ドル(約12ドル)、現行の株価は190ドル程度で、ものすごい含み益が出ています。
利確すべきでしょうか?
私は全くそのようなことは考えていません。
私はパランティアの株価を買ったことはありません。
パランティアという企業価値を買い続けてきたのです。
パランティアテクノロジーズはまだ何も成し遂げていないのです。
私にとっては所詮、株価が10倍、20倍になったに過ぎないのです。
しかし色々な記事や動画などを見ていると私がパランティアテクノロジーズの圧倒的な優位性と考える製品とその哲学を語るものが少ないように感じています。
むしろ私と買う理由が全く違うように感じてしまうことが多くあります。
次回はそのパランティアの独自性と圧倒的な優位性、他が全く追随できないと私が考える理由について書きたいと思います。
真にパランティアを理解したい方はお読みいただけると励みになります。
お読みいただきありがとうございました。記事が面白かったという方がいましたら、スキ、フォロー、コメントで応援していただけると励みになります。
(免責事項:この記事は、筆者個人の体験と主観に基づき執筆されています。特定株への投資を推奨するものでは一切ありません。投資の最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。こんな投資家もいるのだ、と読んでいただけると幸いです。)
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