一番目立つ人が一番大事な人ではない。20年PMがアイドルのフォーメーションに見た「支える人」の組織論
対象読者
チームの中で「縁の下」の役割を担っていて、リーダーやセンターのように目立つ人ばかりが評価される現場に、どこか納得のいかなさを感じているPM・会社員・コンサル。
センターに立つ人だけが、そのチームを動かしているわけではない。
そのことに、私は現場より先に、ある場所で気づかされた。
プロローグ
正直に言う。
20年PMをやってきて、ずっと引っかかっていたことがある。
プロジェクトが成功したとき、評価されるのはいつも、クライアントの前に立つ人、プレゼンをする人、目立つ資料を作った人だった。
その裏で、誰よりも早く出社してスケジュールの矛盾を潰していた人。誰も見ていないところで、関係者間の小さな行き違いを毎日調整していた人。派手な成果物は何も作っていないのに、その人がいなくなった瞬間にプロジェクトが崩れる、そういう人。
その人たちの名前は、報告書にはほとんど出てこなかった。
「まあ、そういうものだ」と、長い間そのまま受け入れていた。
今は違う。
ある場所で「目立つ人」と「支える人」の構造を、あらためて見せつけられてからだ。
第一章 「センターに立つ人」だけが主役、という思い込み
アイドルグループには、たいていセンターというポジションがある。
隊列の真ん中に立ち、映像の中心に映り、多くの人がまず名前を覚える存在だ。
グループを知らない人でも、センターの顔と名前だけは自然と覚えていく。それくらい、センターというポジションには強い光が当たる。
だから最初は、こう考えてしまいがちだ。
「センターの人が、そのグループで一番価値のある人なんだろう」
私も、最初はそう思っていた。
第二章 フォーメーションを見ると、違う景色が見えてくる
しかし、パフォーマンスをよく観察していると、違う景色が見えてくる。
センターの一歩後ろで、常に隊列の角度を微調整している人がいる。声量は控えめでも、ハーモニーの土台を支えている人がいる。振り付けの中で、目立たない位置を任されながら、実は一番動きの精度が求められる役回りを担っている人がいる。
センターが輝いて見えるのは、実はその人一人の力ではない。
周囲が正確に機能しているからこそ、センターが安心して前に出られる。
これは、フォーメーションという構造を見て初めて分かることだ。センターだけを見ていたら、一生気づかない。
第三章 PMの現場にも、同じ「フォーメーション」がある
この構造は、プロジェクトの現場とまったく同じだった。
クライアントの前で説明するPM。目立つ提案をするコンサルタント。彼らが「センター」だとすれば、その周りには必ず、フォーメーションを支える人たちがいる。
議事録を誰よりも正確に取り、認識のズレを未然に防ぐ人。スケジュールの矛盾を、誰にも気づかれないうちに調整し直す人。誰かがミスをしたとき、表に出る前に静かにリカバリーする人。
彼らは目立たない。むしろ、うまくいっているときほど、その存在に誰も気づかない。
支える人の仕事は、うまくいっているときほど見えなくなる。
これが、評価が歪む最大の理由だ。「何もトラブルが起きなかった」ことは、報告書には書かれない。書かれるのは、目立つ成果だけだ。
第四章 支える人がいなくなった日に、初めて分かること
私は、この構造を痛感した出来事がある。
あるプロジェクトで、目立たないが調整役に徹していたメンバーが、体調を崩して数週間離脱した。
最初は「大丈夫だろう」と誰もが思っていた。派手な仕事をしていたわけではないからだ。
しかし、数日も経たないうちに、あちこちで小さな行き違いが表面化し始めた。スケジュールの矛盾、関係者間の認識のズレ、誰も拾っていなかった細かい確認事項。それまで「なぜか起きなかった問題」が、次々と起き始めた。
その時、初めて分かった。
問題が起きなかったのは、運が良かったからではない。誰かが、見えないところで支えていたからだった。
センターが輝いていたのは、その一歩後ろで、正確に機能し続けていた人がいたからだ。
エピローグ
正直に言う。
私は今でも、目立つ仕事に憧れる気持ちがある。
しかし、20年現場を見てきて、はっきり言えることが一つある。
一番目立つ人が、必ずしも一番大事な人ではない。
チームがうまく回っているとき、その静けさの中には、必ず誰かの調整と我慢が隠れている。
もし今、あなたが「縁の下」の役割を担っていて、評価されている実感が持てずにいるなら。
一度だけ、自分がいなくなった日のことを想像してみてほしい。
その日、何が静かに崩れ始めるだろうか。
その答えが、あなたの本当の価値を教えてくれる日が、きっとある。
関連記事
▼ 8年という時間軸で「積み上げの強さ」を証明した組織構造
=LOVEが8年で証明したこと
https://note.com/quiet_emu2080/n/n9343382ad9e2
▼ 遅咲きの経験と暗黙知を、AI時代のアドバンテージに変える方法
マガジン|50代からのAI時代キャリア術
https://note.com/quiet_emu2080/m/m2c943315dd13
▼ メンバーの個性をフォーメーションに配置し、組織の力を最大化する思考OS
PMおじさんが、指原莉乃から学んだマネジメント論
https://note.com/quiet_emu2080/m/m957be4f5d32b
©shiraco|PMPおじさんの実践ノート @NoteCcm42090
構造学。──人を責めず、構造を見る。
問題は、人ではない。構造が、人をそう動かしている。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!