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PMやコンサルは正解を出す仕事ではない——20年やって分かった、違う正解を持つ人たちを同じ方向に向ける仕事の構造

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〜10月10日 16:30

正直に言う。

PMやコンサルを20年やってきて、若い頃の自分に一番伝えたいことが何かと聞かれたら、それは「正解を出そうとするな」という一言になる。優秀になれば全部解決すると思っていた時期が、私にも長くあった。知識を増やし、資格を取り、フレームワークを覚え、方法論を学び、業界事例を頭に入れれば、プロジェクトは成功すると信じていた。だから本を読んだ。研修を受けた。先輩の技を盗もうとした。深夜まで提案書を書き直した。誠意を見せれば伝わると思っていた。頑張ればなんとかなると思っていた。お客様が正しいと思っていた。要求には応えるべきだと思っていた。それで炎上が止まると信じていた。

しかし現実は違った。要求は正しくぶつかった。誰も悪くないのに、立場が違うだけで、結論が割れた。お客様にはお客様の事情があった。開発現場には開発現場の事情があった。経営には経営の事情があった。営業には営業の事情があった。パートナー会社にはパートナー会社の事情があった。それぞれが、それぞれの位置から見た正解を持っていた。そして、それぞれの正解は、互いに衝突した。私はその間に立った。立ち続けた。立っているうちに、ある日気づいた。これは正解を出す仕事ではない。違う正解を持つ人たちが、同じ方向を向けるように調整する仕事なのだと。本記事は、その気づきを構造として書いたものである。若手PM、若手コンサル、リーダー層、そして「管理という言葉に反応してしまう」すべての人に向けて書く。


第一章 若い頃に信じていた四つの誤解と、二十年後に分かった四つの構造

若い頃の私は、四つのことを信じていた。お客様が正しい。要求には応えるべき。頑張ればなんとかなる。誠意を見せれば伝わる。この四つは美しい。実際、社会人として持っておくべき基本姿勢でもある。否定されるべきものではない。しかし、これらをそのまま現場運用の指針にすると、PMもコンサルも壊れる。壊れるか、あるいは「壊れたまま動き続ける何か」になる。なぜなら、現場はこの四つの美徳が成立するように設計されていないからである。

二十年見ると、別の四つの構造が見えてくる。要求と契約は別である。期待と合意は別である。努力と成果は別である。善意と責任は別である。要求は感情の発露である。契約はその一部を文書化した制約である。両者の間には、必ず差分が残る。期待は内心の状態である。合意は言語化された共有事項である。両者の間にも、必ず差分が残る。努力は投入量である。成果は受け取られたものである。両者の間には、評価者の主観という変換器が挟まる。善意は動機である。責任は結果に対する引き受けである。両者の間には、契約と組織構造という法的・社会的な層が挟まる。この四つの差分を理解しないまま現場に出ると、人は「誠意で全部解決しよう」とする。そして消耗する。誠意は道具であって、構造ではない。構造を見ずに誠意だけで戦う人は、燃料切れを起こす。

第二章 炎上案件の多くは技術不足ではなく構造不足である

炎上案件を二十年見続けて、ひとつ確信したことがある。炎上の大半は、技術不足では起きていない。エンジニアの腕が悪いから燃えるわけではない。コンサルの分析が浅いから燃えるわけではない。PMのスキルが低いから燃えるわけではない。もちろん、それらが原因の炎上もある。しかし主要因ではない。主要因は、構造の不在である。具体的には、ゴールが握れていない。成功条件が曖昧である。誰が決めるかが不明である。契約範囲が曖昧である。期待値が言語化されていない。この五つのうち、どれか一つでも欠けていれば、案件は燃える。どれか二つ欠けていれば、確実に燃える。三つ欠ければ、関係者の誰かが壊れる。四つ欠ければ、訴訟一歩手前まで行く。五つ全部欠ければ、それはもうプロジェクトではなく、出口のない迷路である。

面白いのは、これらの五つはすべて、プロジェクト初期に設計可能であるという点だ。技術的に難しい話ではない。書けば書ける。話せば話せる。文書化すれば文書化できる。にもかかわらず、なぜ多くの案件でこの五つが欠落するのか。理由は単純で、初期に握ろうとすると、関係者が嫌な顔をするからである。ゴールを明確にしようとすると、お客様の中で意見が割れていることが露呈する。成功条件を言語化しようとすると、達成不可能な水準であることが見える。決裁者を明確にしようとすると、社内政治の地雷を踏む。契約範囲を明確にしようとすると、営業が困る。期待値を言語化しようとすると、夢が現実に押し戻されて場の空気が悪くなる。だから誰もやらない。やらないまま、走り出す。そして燃える。PMが管理ではなく調整役だというのは、まさにこの五つを、嫌な顔をされながらでも、嫌われながらでも、初期に握りに行く役割だからである。

第三章 管理という言葉に反応してしまう若手の感覚は正しい

若手PMや若手コンサルは、管理という言葉に強く反応する。人を動かす、指示を出す、監視する、進捗を詰める、数字で締め上げる。そういうイメージが先に立つ。だから「自分は管理職に向いていない」と早々に結論を出す人が多い。この感覚は、実は間違っていない。管理という言葉が指している古典的な姿勢に違和感を持つことは、むしろ健全である。なぜなら、現代のプロジェクトはもう、管理だけでは動かないからだ。指示を出せば動く時代は終わった。監視すれば品質が上がる時代も終わった。詰めれば人が頑張る時代も、ほとんど終わった。今の現場で動いているのは、調整である。

調整とは何か。お客様の期待値の調整。開発側の負荷の調整。スケジュールの調整。品質の調整。契約の調整。経営判断の調整。さらに言えば、感情の調整、関係性の調整、政治的立場の調整、評価制度との整合性の調整。PMの一日を分解してみると、純粋な管理作業はせいぜい二割で、残り八割は調整である。コンサルも同じである。分析が二割、ドキュメント作成が二割、残り六割は、関係者を同じ方向に向けるための調整である。だから、管理という言葉に反応してしまう若手は、その違和感を消す必要はない。むしろ、その違和感こそが、調整役としての適性の入り口である。管理者になりたくないと感じることと、PMやコンサルに向いていないことは、まったく別の話である。

第四章 PMやコンサルは矛盾する要求の間に立つ仕事である

PMやコンサルの本質を、私が一行で書くとすれば、こうなる。矛盾する要求の間に立つ仕事である。お客様は早く欲しいと言う。同時に、品質も高くしてほしいと言う。同時に、追加費用は出せないと言う。早く・良く・安くという、いわゆる三角形の三辺をすべて最大化したいと言う。これは矛盾である。物理的に成立しない。しかし、お客様がそう言うのは、別に意地悪をしているからではない。お客様の中にも、早く欲しいと言う事業部と、品質を担保したい品質保証部門と、コストを抑えたい経理部門が同居しているからだ。お客様の社内ですでに矛盾している要求が、外注先である我々のところに、矛盾したまま降りてくる。

開発側も同じである。技術者は良いものを作りたい。営業は早く納めたい。経営は利益を出したい。法務はリスクを下げたい。これも矛盾する。社内ですでに割れている。そしてPMやコンサルは、その両側の矛盾を、自分一人の身体の中で受け止める。お客様側の三つの矛盾と、開発側の四つの矛盾と、自社の経営判断と、パートナー会社の事情と、現場メンバーの心身状態。これらを全部、一人の頭の中で同時に処理する。だからPMもコンサルも疲れる。当たり前である。疲れない設計の仕事ではない。疲れる前提で、いかに長く立ち続けるかを設計する仕事である。気合や根性ではなく構造として自分を運用するというのは、まさにこの「疲れる前提の長期戦」を、自分の身体と頭と感情で持続させるための運用設計のことを指している。

第五章 優秀になれば解決するという信仰の限界

若い頃の私は、優秀になれば全部解決すると信じていた。知識を増やせば、フレームワークを覚えれば、資格を取れば、業界知見を積めば、プロジェクトは成功すると思っていた。この信仰は半分正しい。たしかに、知識ゼロでは戦えない。フレームワークを知らなければ、議論が空中戦になる。資格や業界知見がなければ、お客様の懐に入れない。だから優秀になることは、入場券としては必要である。しかし、入場券を集めても、ゲームには勝てない。なぜなら、ゲームのルールが「正解を出すこと」ではないからである。

ゲームの本当のルールは、違う正解を持つ人たちを、同じ方向に向かせることである。これは知識量では解けない。フレームワークでも解けない。資格でも解けない。なぜなら、これは人間と組織の問題だからである。人間は、自分の正解を譲るとき、何かを失う。面子を失う、過去の判断を失う、社内の立場を失う、自己肯定感を失う。だから人間は、簡単には自分の正解を譲らない。譲らない人を、譲らないまま、しかし同じ方向に歩いてもらうための工夫が、調整の本体である。これを優秀さで解こうとすると、人は「論破」に向かう。論破は短期的には気持ちがいい。しかし論破された人は、その瞬間からプロジェクトに協力しなくなる。だから優秀な若手ほど、論破で炎上を増やす。優秀さは武器であるが、振り回し方を間違えると、味方を斬る武器でもある。

第六章 社内政治はなくならないし、なくす必要もない

若い頃は、なぜあんな人が評価されるんだと思っていた。技術もない、見識もない、現場も知らない、それなのに上に取り入って、社内で出世していく。理不尽だと思った。怒りも感じた。しかし二十年見ると、見え方が変わる。組織には複数の役割が必要である。営業型、技術型、調整型、政治型、実行型。これらはどれも、組織が動くために必要な機能である。政治型を全否定すると、組織は外部との交渉が弱くなる。技術型を全否定すると、組織は中身が薄くなる。営業型を全否定すると、組織は仕事を取れなくなる。実行型を全否定すると、組織は何も完成させられなくなる。調整型を全否定すると、組織は内部で割れる。

つまり、自分が好きになれないタイプの人間も、組織のどこかで何かの機能を果たしている可能性がある。中には「パートナー会社の申し子」みたいな人もいる。お客様や上層部にだけ評価される芸風の人もいる。それを尊敬する必要はない。好きになる必要もない。ただ、自分まで同じ芸風になる必要もない。自分の芸風を持てばよい。私の芸風は調整役である。媚びる人には媚びる人の芸風があり、戦う人には戦う人の芸風があり、調整する人には調整する人の芸風がある。社内政治はなくならない。なくならない前提で、自分が何者として仕事をするかを決めるのが、長く生き延びる人の作法である。人を責めるより、構造を見る。組織はそういう構造でできているのだと受け入れた瞬間から、政治型の人間に消耗させられる時間が、少しだけ減る。


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    3. 嫌な顔をされても初期に5大要素を握りに行く「嫌われ方の作法」

    4. 管理者型から調整役型へステップアップする「90日移行ロードマップ」

    5. 単発の成果に振り回されない「長期残存価値(地層)」の育て方

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