9年間、ずっとそこにいてくれた。——=LOVEが教えてくれた「壊れない組織」の本当の作り方
プロローグ
正直に言う。
2017年の秋、私は=LOVEのことを、半分しか信じていなかった。
「指原莉乃プロデュース」というキャッチコピー。「AKBの後発グループ」という文脈。「また新しいアイドルが出た」という、少し醒めた目で見ていた。
それでも、デビュー曲「=LOVE」を聴いたとき、何かが引っかかった。
うまく言語化できなかった。「かわいい」でも「歌が上手い」でもなかった。
何かが、刺さった。
そのまま、聴き続けた。
気づいたら9年が経っていた。
2026年6月、=LOVEはMUFGスタジアム(国立競技場)で2日間のライブを行った。初日は大雨でした。それでも両日完売、2日間で約13万2千人の歓声は雨に負けなかった。
私はアリーナ席で、泣いていた。
なぜ泣いていたのか。
「かわいい」からではなかった。「歌が上手い」からでもなかった。
「9年間、壊れなかった」という事実に、泣いていた。
一 「壊れやすいもの」として始まった
アイドルグループは、壊れやすい。
これは偏見ではなく、統計的な事実だ。
デビューから5年以内に活動を終えるグループは多い。メンバーの卒業が続いて、グループの求心力が失われることもある。プロデューサーとの方向性の違いが生まれることもある。ファンの関心が移ることもある。
2017年にデビューした=LOVEも、最初から「長く続く保証」はなかった。
後発グループだった。知名度も低かった。大手事務所のバックアップがある組織ではなかった。
でも、9年後にMUFGスタジアム(国立競技場)に立った。
東京ドーム2daysの発表もされた。
なぜ壊れなかったのか。
20年PMとして組織を見てきた目で、この問いを考えてきた。
答えは、一つではない。でも、いくつかの構造が見えてきた。
二 「設計思想」が最初からあった
壊れない組織に共通しているのは、最初から「設計思想」があることだ。
設計思想とは、「この組織は何のために存在するのか」という問いへの答えだ。
=LOVEの設計思想は、楽曲「=LOVE」の中に入っている気がする。
「好きなのに、言えない。」
この一言が、=LOVEの最初のコンセプトだと私は解釈している。
「完璧なアイドル」ではなく、「不完全だけど一生懸命」な主人公が、気持ちを伝えられずにいる。
これは、等身大の物語だ。
「この子たちは、私たちと同じ世界にいる」という感覚を、最初の楽曲から作っていた。
組織論で言えば、「親しみやすいブランドアイデンティティ」だ。
「手の届かない存在」ではなく、「隣で一緒に頑張っている存在」として始まった。
この設計思想が、9年間ぶれなかった。
三 「君と私の歌」という約束
Apple Musicの私の再生数で、2位に「君と私の歌」が入っていた。
この曲には、こんな約束がある。
「大きいステージに連れて行く。」 ※本来は、「大きなステージに連れてって」です。
2017年に、まだ小さいホールを回っていたグループが、この約束を歌った。
9年後、MUFGスタジアム(国立競技場)に立った。
「大きいステージに連れて行く」という約束が、現実になった。
PMとして、「約束を守ること」の難しさを何度も見てきた。
プロジェクト開始時の「このシステムで業務が劇的に改善します」という約束が、リリース後に「思っていたのと違う」になることを、何度も見てきた。
約束が守られないのは、悪意があるからではない。
多くの場合、「約束の重さを、言葉にした時点では理解していなかった」からだ。
=LOVEの「大きいステージに連れて行く」という約束は、9年間の積み重ねによって、言葉の重さ通りに実現された。
これは、偶然ではない。
約束を「言葉」として扱わず、「設計図」として扱ったからだ。
設計図は、実行のための地図だ。地図がある組織は、迷わない。
四 「壊れそうな瞬間」に何が起きたか
9年間、=LOVEが壊れなかったわけではない。
壊れそうになった瞬間は、あったはずだ。
メンバーの卒業があった。体制の変化があった。コロナ禍でライブができない時期があった。
でも、壊れなかった。
なぜか。
私が観察してきた限りで言えば、「壊れそうな瞬間に、グループが正直だったから」だと思っている。
卒業を発表するとき、「次のステップへ」という言葉とともに、正直に伝えた。
コロナ禍でライブができないとき、その状況を正直にファンと共有した。
「困難を隠す」のではなく、「困難をファンと一緒に経験する」という選択をしていた。
組織論で言えば、「透明性の設計」だ。
問題が起きたとき、隠すと後で大きく壊れる。正直に共有すると、ファン(チーム)が一緒に支える側になる。
「一緒に困難を経験したチーム」は、壊れにくい。
共に乗り越えた経験が、信頼の基盤になるからだ。
五 「感情の専門店」という設計の天才性
以前の記事で、「アイドルグループは感情の専門店だ」と書いた。
=LOVEがここまで長く続いた理由の一つは、「提供できる感情の幅が広い」ことだと思っている。
「=LOVE」「スタート!」そして、癒やし系の楽曲では、希望と幸福感を提供する。
「劇薬中毒」「ラストノートしか知らない」「記憶のどこかで」などのドロっとした楽曲では、心の暗部への共感を提供する。
「君と私の歌」などの組織の絆を感じる楽曲では、信頼とともに歩む感覚を提供する。
一つの感情しか提供できない組織は、その感情が必要でなくなったとき、関係が終わる。
でも複数の感情を提供できる組織は、「今はこの感情が必要」という状況に合わせて、ファンが戻ってこられる。
プロジェクト組織で言えば、「特定のスキルしかないチーム」より「複数の対応能力があるチーム」の方が、長期的に機能し続けるのと同じ構造だ。
六 「完成形を自ら壊した日」の意味
うまくいっているときに変える。これが最も難しく、最も重要な経営判断だ。
危機が来てから変えるのは、遅い。
「まだうまくいっている」段階で、次の設計を始める組織だけが、長く存在できる。
=LOVEが9年間壊れなかった理由の一つは、「完成形に固執しなかった」ことだと思う。
一番怖いのは、人が減ることではない。
変われなくなることだ。
この哲学が、9年間ぶれなかった。
ここまで読んで、こう思った人がいるかもしれない。
「=LOVEの話は分かった。でも、これを自分の組織やキャリアにどう活かせばいいのか。」
あるいは、「壊れない組織を作りたいが、何から手をつければいいのか。」
この先の有料パートでは、=LOVEの9年間から学んだ「壊れない組織・チームの設計原則」を、PMのフレームで実践知として渡す。
さらに、ダウンロード特典として「壊れないチーム設計シート——=LOVEの9年間から学ぶ組織の長期残存価値診断」を本パートの末尾に収録する。
ここから有料(¥980)
本有料パートで提供する5つの価値
一 =LOVEの9年間から抽出した「壊れない組織の5つの設計原則」
二 「壊れそうになった瞬間」に組織が取るべき行動——透明性と信頼の設計方法
三 「感情の設計」をチームに導入する具体的な方法——メンバーが「ここにいたい」と思う環境の作り方
四 「完成形を更新する意思決定」をチームで議論するための、三つの問い
五 【特典】壊れないチーム設計シート——長期残存価値診断(書き込み式)
このラインより上のエリアが無料で表示されます。
ここから先は
¥ 980
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!
