記事を書く前にGrokで「間違える」|20年PMが実践するAIを偵察機にするリサーチ&プロンプト術
プロローグ
正直に言う。
私は、記事を書く前に、必ずGrokを開く。
こう言うと、原稿もGrokに書かせているのだろうと思われることがある。
違う。
私が任せているのは、執筆ではない。偵察である。
一 自分の経験だけで書くと、見落とす
長くPM・コンサルとして働いていると、自分なりの型ができてくる。
現場でよく起きること。人がつまずくポイント。うまくいくパターン。
これは強みだ。具体性のある記事は、この経験から生まれる。
だが同時に、経験が強いということは、その経験の外側が見えにくくなるということでもある。
自分が正しいと思っている前提が、実はもう古いかもしれない。自分が知らない反論が、どこかで盛んに交わされているかもしれない。
記事を書く前、私が一番恐れているのは、間違った情報を書くことより、この「見落とし」の方だ。
そこでGrokに、次のことを任せる。
関連する公式情報を探させる。X上で、当事者や実際の利用者がどう反応しているかを探させる。自分の仮説に対する反論を探させる。今まで結びつけていなかった領域との接点を探させる。
Grokは、答えを決める役ではない。調べる場所を増やす、偵察隊として使っている。
二 Grokが強いのは、整った情報より「動いている情報」
公式資料には、確定した事実が載っている。
一方、Xには、まだ整理されていない違和感や、現場の反応、利用者の失敗談、期待と批判が、そのままの形で流れている。
Grokには、Web上の情報を調べる機能と、X上の投稿を検索する機能の両方が備わっている。これはxAIの公式ドキュメントでも説明されている。
私がGrokを使うのは、主にこの後者のためだ。まだ論文にも記事にもなっていない、現場の温度を拾うために使う。
ただし、ここで一つ、自分に言い聞かせていることがある。
Xで多く見かける反応を、そのまま「世論」と呼んではいけない、ということだ。
Xには、発信する人の偏りがある。声の大きい人の意見が目立ちやすい構造がある。推薦の仕組みによって、見える景色そのものが変わる。
だから私は、Grokで見えているものを「世の中の総意」ではなく、「Xという場で、今観測できている言説」として扱うようにしている。
この一線を越えると、記事の説得力は上がるが、正確さは下がる。
三 Grokの答えを、そのまま記事にしない
もう一つ、自分に課しているルールがある。
Grokが返してくる情報を、そのまま原稿に流し込まないことだ。
Grokは、もっともらしい数字や、出どころのはっきりしない事例を挙げてくることがある。他のAIも同じだが、Grokも例外ではない。
だから私は、調べてもらった内容を、必ず四つに仕分ける。
原典で確認できた事実。
報道や研究による解釈。
X上での、個人の体験談。
まだ確認できていない仮説。
この四つを混ぜたまま書くと、文章は強く見える。だが、記事としては弱くなる。
読者が信じていいものと、参考程度に留めるべきものが、区別できなくなるからだ。
四 偵察のやり方を、型にしてみた
毎回ゼロから調べ方を考えると、時間がかかる。
だから、次の順番を型にしている。
まず、調べたい問いを一つに絞る。次に、自分の暫定的な仮説を書く。そのうえで、公式情報、研究・報道、X上の反応を、混ぜずに集める。
そして、自分の仮説にとって都合の悪い反証を、意図的に探させる。
最後に、確認できた原典は、必ず自分の目で開く。
Grokに正解を尋ねているのではない。
自分が何を見落としているかを尋ねている。
ここが、普通の検索との一番の違いだと思う。
実際に私が使っているプロンプトの型は、こういうものだ。
次のテーマについて、記事を書く前の「偵察調査」をしてください。
テーマ:
暫定仮説:
次の3種類を混ぜずに収集してください。
1. 公式発表・原典
2. 信頼できる研究・報道
3. X上の当事者・利用者の反応
各情報について、発信者、公開日、URLを示してください。
また、内容を以下に分類してください。
・確認できた事実
・発信者による解釈
・個人の体験談
・確認できない情報
私の暫定仮説に不利な反証や別の説明を、最低3件探してください。
確認できない数字や事例は推測せず、「確認できない」と明記してください。
最後に、記事として検討できる構造仮説を3案提示してください。
五 GrokとShiracoの役割は、同じではない
Grokと自分の関係を、最近はこう捉えている。
Grokは情報の範囲を広げる係。私は、その情報を自分の経験で濾過する係。
Grokは仮説を増やす係。私は、残す仮説を決める係。
Grokは世の中の反応を運んでくる係。私は、その背後にある構造を読む係。
つまり、思考を代わりにやってもらう関係ではない。
自分の経験だけでは閉じてしまう視野を、いったん外側に開くための関係である。
Grokを使うようになって分かったのは、大事なのはAIをどこまで信用するかではなく、どこから先を信用しないかを、自分で判断する力だということだった。
エピローグ
記事を書く前にAIを使う、と言うと、原稿ごと任せているように聞こえるかもしれない。
だが私がGrokに任せているのは、答えを出すことではない。自分の見落としを見つけることだ。
人を責める前に構造を見るのと同じように、AIの答えも、正解か不正解かだけで見ない。
なぜその答えが出てきたのか、という構造から読む。
それが、私が記事を書く前にGrokを開く理由である。
優しいまま、壊れない。
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