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AIは人間を映す鏡だった——全員が正しいのに衝突する「景色の構造」と視野の外側を映す技法

プロローグ

正直に言う。

私は、その会議のあと、家に帰って壁を殴りたくなった。

一時間の会議で、五人が五人とも、違うことを言った。
部長は現場を分かっていないと言い、
現場は上が無茶を言うと言い、
営業は納期が全てだと言い、
社長は成長が全てだと言った。

そして、誰一人、譲らなかった。

私はPMとして、その真ん中に座っていた。

みんな正しいことを言っている。
それは分かる。

だが、正しさ同士が、真正面からぶつかっていた。

その夜、私は思いついた。

この会議の議事録を、AIに読ませてみよう。

ただし、普通に読ませるのではない。
五人それぞれの立場になりきって、五回読ませてみる。

結果は、私の予想を超えていた。

AIは、五回とも違う結論を出した。

同じ議事録を読んでいるのに、
立場を変えるだけで、正しい判断が変わった。

そのとき、私は理解した。

会議が噛み合わなかったのは、
誰かが間違っていたからではない。

全員が、自分に見えている景色の中で、正しかったからだ。

この記事は、AIという鏡を使って、
人がなぜ分かり合えないのかを、構造として読み解く試みである。

本記事を含む一連の記事は、書籍化を視野に入れながら執筆を続けている。


一 なぜ、正しい人同士がぶつかるのか

会議が紛糾するとき、
私たちは、誰かが悪いと考えがちだ。

あの部長が頑固だから。
あの営業が数字しか見ないから。
あの現場が保守的だから。

犯人を探す。
悪者を決める。

そうすれば、話が単純になるからだ。

だが、実際に起きていることは、
もっと複雑で、もっと救いがある。

多くの場合、
悪者などいない。

部長は、部門の数字に責任を持っている。
だから、コストを気にする。それは正しい。

現場は、実際に手を動かしている。
だから、無理な工程を拒む。それも正しい。

営業は、顧客との約束を背負っている。
だから、納期にこだわる。これも正しい。

社長は、会社の未来に責任がある。
だから、成長を求める。これも正しい。

全員が、正しい。

問題は、全員が違う場所に立っていることだ。

立っている場所が違えば、見える景色が違う。
見える景色が違えば、正しい判断も違う。

山の東側にいる人は、朝日を見る。
山の西側にいる人は、夕日を見る。

どちらも太陽を見ている。
どちらも嘘をついていない。

だが、話は永遠に噛み合わない。

会議が噛み合わないのは、誰かが間違っているからではない。
全員が、自分の立つ場所から見える景色を、正しく報告しているからである。

二 AIに、五人の立場で読ませてみた

私が試したのは、単純な実験だった。

同じ会議の議事録を、AIに読ませる。
ただし、五回。

一回目は部長として。
二回目は現場として。
三回目は営業として。
四回目は社長として。
五回目は私、PMとして。

それぞれの立場になりきって、
この会議で最も重要な論点は何かを答えさせた。

部長として読ませると、AIはこう答えた。

最重要はコスト超過のリスクだ。
このまま進めれば予算を圧迫する。

現場として読ませると、AIはこう答えた。

最重要は工程の無理だ。
この納期では品質が犠牲になる。

営業として読ませると、AIはこう答えた。

最重要は顧客との約束だ。
納期を割れば信頼を失う。

社長として読ませると、AIはこう答えた。

最重要は成長機会だ。
ここで挑戦しなければ会社は停滞する。

同じ議事録だ。
一文字も変えていない。

なのに、AIは五回とも、違うことを最重要だと答えた。

ここで大事なのは、
AIが間違えたわけではない、ということだ。

AIは、与えられた立場から見て、
最も筋の通った答えを、毎回正確に出していた。

つまり、こういうことだ。

AIは、間違っていなかった。
景色が、違っただけだった。

そして私は、ぞっとした。

これは、あの会議で起きていたことと、
まったく同じ構造ではないか。

五人の人間も、
AIとまったく同じことをやっていた。

それぞれの立場から見て、
最も正しい答えを、正確に主張していた。

彼らは、頑固だったのではない。
自分勝手だったのでもない。

ただ、立っている場所が違っただけだった。

この実験が示したのは、AIの賢さではない。
判断は、能力ではなく立ち位置で決まる、という構造だった。

三 なぜ、人は自分の景色を疑えないのか

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本有料パートで提供する五つの価値。

一つ。なぜ人間は、自分に見えている景色を唯一の真実だと信じ込むのか、その認知の仕組みを明らかにする。

二つ。AIを鏡として使い、自分の視野の外側を可視化する具体的な方法を提示する。

三つ。過去の成功体験が、なぜ新しい判断を歪ませるのかを、人間の言葉で言語化する。

四つ。二十年のプロジェクトマネジメント経験から、景色の違いを橋渡しする実践技術を共有する。

五つ。自分の見えていない景色を洗い出し、対立を対話に変えるための思考ツールを提供する。

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