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「怒らない上司」が部下をダメにする構造|20年PMが明かす「感情で怒る」と「フィードバック」の決定的な違い

対象読者
部下に嫌われたくなくて、指摘すべき場面でつい見て見ぬふりをしてしまう管理職・PM。「怒らない上司」でいることを、無意識に良いことだと思い込んでいる人。


「怒らない上司」は、いい上司なのだろうか。

その問いに、正面から向き合ったことはあるだろうか。


プロローグ

正直に言う。

私にも、「怒らない上司」でいようとしていた時期がある。

部下がミスをしても、強く指摘しなかった。空気が悪くなるのが嫌だった。嫌われたくなかった。「厳しい上司」よりも「話しやすい上司」でいたかった。

だから、注意すべき場面で、いつも少しだけ言葉を弱めていた。「まあ、次から気をつけてね」くらいで済ませていた。

その結果、何が起きたか。

同じミスが、何度も繰り返された。

今は違う。

20年現場を見てきて、ようやく分かったことがある。

20年現場にいて、結局そこに戻ってくるのである。


第一章 「怒らない=優しい」という思い込み

「怒らない上司」は、部下から見ると一見、働きやすい上司に見える。

叱られない。詰められない。委縮しなくていい。

だから、多くの管理職が「怒らないこと」を、良いマネジメントだと思い込んでいる。私もそうだった。

しかし、これは大きな勘違いだった。

「怒らない」ことと「フィードバックしない」ことは、本来まったく別の話だ。ところが、怒ることに苦手意識のある上司ほど、この二つを混同してしまう。「怒りたくないから、指摘もしない」という選択をしてしまうのだ。

第二章 怒らないことで奪われる「フィードバックの機会」

部下にとって、一番怖いのは怒られることではない。

自分の間違いに、誰も気づかせてくれないことだ。

若手のうちにやり方の癖を指摘してもらえなければ、その癖はそのまま定着する。基準を伝えてもらえなければ、部下は自分なりの基準で仕事を続けてしまう。

「怒らない上司」の下にいる部下は、一見のびのびと働いているように見える。しかし実際には、修正の機会を与えられないまま、間違った方向に進み続けていることが多い。

優しさのつもりだった沈黙が、実は部下の成長機会を奪っていたのだ。

第三章 見て見ぬふりが積み重なった、ある現場の話

あるプロジェクトで、若手メンバーの報告の粒度が粗いことが気になっていた。

しかし、以前叱った際に相手が落ち込んでしまったことがあり、それ以来、私は指摘を避けるようになっていた。「まあ、そのうち慣れるだろう」と自分に言い聞かせていた。

数ヶ月後、その粗い報告が原因で、重要な仕様変更の情報がクライアントに正しく伝わっていなかったことが発覚した。

本人を責める気にはなれなかった。なぜなら、彼はずっと「これでいい」と思い続けていたからだ。誰も、それが違うと教えなかった。

そのとき、はっきりと気づいた。

「怒らなかったこと」は優しさではなく、問題の先送りだった。

第四章 「怒る」ではなく「構造で伝える」という選択肢

ここで大事なのは、「怒ればよかった」という話ではない。

感情的に怒ることと、必要な基準を伝えることは、まったく別のスキルだ。

必要なのは、感情をぶつけることではなく、何が事実で、どこにズレがあったのかを、構造として本人に見せることだ。「あなたが悪い」ではなく、「この報告のこの部分が、こういう理由で伝わりにくくなっている」と伝える。

人を責めるより、構造を見る。

これができれば、怒る必要はほとんどなくなる。同時に、「怒らないから何も言わない」という逃げ道もなくなる。

優しい上司であることと、フィードバックを避けることは、両立しない。

エピローグ

正直に言う。

今でも、指摘するときには少し緊張する。相手ががっかりする顔を見るのは、正直気が重い。

それでも、あの日クライアントへの報告で起きたことを思い出すたびに、伝えるべきことを伝えなかった代償の方が、ずっと大きいと分かる。

もし今、あなたが部下に嫌われたくなくて、言うべきことを飲み込んでいるなら。

一度だけ、その沈黙が誰のためのものなのか、考えてみてほしい。

それが部下のためではなく、自分が嫌われたくないためだと気づいた日から、伝え方が少しだけ変わる日が、きっとある。


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©shiraco|PMPおじさんの実践ノート @NoteCcm42090

構造学。──人を責めず、構造を見る。
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