「なるほど」で終わる自分を変える。20年目PMがたどり着いた「構造を見る」を今日ひとつ試す技術
プロローグ
「やばい上司」も、AIも、キャリアも、人生も。変える前に、まず小さく折ってみる。
この記事は、「本を読んでも、セミナーを受けても、なるほどで終わってしまう自分」に、少し疲れている人のための記事です。
読んで終わるな。今日、ひとつ試そう。──20年PMが「構造を見る」を続けてきて、最後にたどり着いたこと
正直に言う。
去年の秋、自分の書いた記事を全部読み返した夜があった。
「人を責めるより、構造を見る。」
「管理するな、構造をつくれ。」
「AIを使うな。AIが使える構造をつくれ。」
読み返しながら、正直、ちょっと引いた。
同じことを、形を変えて、何十回も言っている。
そして、もう一つ気づいたことがある。
この文章を読んで「なるほど」と言ってくれた人のうち、実際に何かを変えた人は、たぶん半分もいない。
これは読者のせいではない。
書き方が、足りていなかった。
気づかせることはできても、動かすところまで、書けていなかった。
だから今日は、いつもと少し違うことをする。
これまでの話を、束ねて渡す。
ただし、「読んで終わる話」にはしない。
第1章|27歳、企画書を鼻で笑われた夜に、何が壊れたか
27歳のとき、製薬会社に企画書を出したことがある。
一晩かけて作った。
自分では、悪くないと思っていた。
会議室で、先方の担当者がページをめくりながら言った。
「これ、うちの業界のこと、わかってないよね」
その一言で、企画書ではなく、自分自身が否定された気がした。
帰りの電車で、何度も同じページを見返した。
何が悪かったのか、正直、わからなかった。
数年後にわかったことがある。
企画書が悪かったのではない。
相手の業界構造を知らないまま、自分の型に当てはめて書いていた。
これが、最初に「人ではなく構造を見る」を体で覚えた日だった。
ただし、この日の私は、まだ何も変えていない。
ただ落ち込んで、次の企画書も同じように書いた。
気づいただけでは、何も変わらない。
これが、今日いちばん最初に言いたいことである。
第2章|初めてのPM、WBSが崩れた夜
初めてPMを任されたとき、私はWBS(作業分解構成図)を完璧に作った。
タスクも、期限も、担当者も、すべて美しく並んでいた。
3週間目に、それが崩れた。
ある担当者が、ずっと同じタスクで止まっていた。
「なぜ終わらないんですか」と聞いた。
返ってきたのは、こうだった。
「そもそも、何のためのタスクか、わかっていませんでした」
私は美しい表を作っていた。
でも、その表の意味を、誰にも渡していなかった。
ここでようやく、少しだけ動いた。
タスクの横に、「これは何のためにやるのか」を一行だけ足した。
たった一行である。
でも、その週から、質問の数が減った。
構造は、見るだけでは動かない。渡して、初めて機能する。
第3章|「やばい上司」も、実は同じ話だった
これは、読者からいちばんよく聞く悩みでもある。
話が通じない。
判断しない。
責任を取らない。
「この人、やばいな」と思ったとき、私は一度だけ自分に聞くことにしている。
能力の問題か。伝え方の問題か。役割の問題か。組織の問題か。
ある上司は、いつも会議で判断を先送りしていた。
「やる気がないのか」と思っていた。
あとで知った。
その上司は、失敗すると始末書を書かされる社内制度の下にいた。
判断しないことが、彼にとっての「正解」だったのだ。
これは、彼を許す話ではない。
彼を動かしている構造を、先に理解する話である。
理解した上で、それでも変わらないなら、距離を取ればいい。
でも、理解する前に切り捨てると、次の職場でも同じ「やばい人」に出会い続けることになる。
第4章|AIも、人生も、同じ折り目でできている
面白いことに、この構造は、AIにもそのまま当てはまった。
「AIを導入したのに、仕事が楽にならない」という相談を、何度も受けてきた。
原因は、AIの性能ではない。
何を渡すか、何を任せるか、誰が承認するかという「構造」がないまま、道具だけ渡している。
そして、これは50代になった自分の人生にも、同じ形で現れた。
若い頃は、足すことが正解だった。
資格、仕事、人脈、情報。
50代になって、容量がなくなった。
そこで気づいた。
足りないのではない。減らす順番が、決まっていないだけだった。
ここで、ひとつだけ新しい話をしたい。
去年、娘に折り紙を教えてもらったことがある。
私は不器用で、何度も同じところで折り目を失敗した。
娘が言った。
「パパ、間違えた折り目も、消えないよ。でも、その線があるから、次はもっと簡単に折れるようになるよ」
その一言が、正直、いちばん刺さった。
人生も、仕事も、AIとの付き合い方も、一枚の紙を折り続けるようなものだ。
最初から完成形には折れない。
間違った折り目も、消えない。
でも、その折り目があるから、次の一手が、少しだけ迷わなくなる。
失敗は、消したい傷ではなく、次に折るための線なのだ。
第5章|「わかった」で終わる人と、変わる人の、たった一つの違い
ここまで書いてきたことを、正直に振り返る。
企画書を鼻で笑われた夜。
WBSが崩れた夜。
初めて部下が離れていった日。
初めて後輩を評価した夜、その人の1年を数字にした重さ。
初めて契約を切られた日、自分の存在価値を疑った時間。
どの夜も、気づいただけでは、何も変わらなかった。
変わったのは、いつも、その次にやった「小さな一つ」だった。
タスクの横に一行足した。
会議を15分だけ短くしてみた。
上司にイラッとした瞬間、3つの質問を自分にしてみた。
大きな決断は、一度もしていない。
小さな折り目を、何百枚も積み重ねてきただけだ。
第6章|今日、ひとつだけ折ってみよう
だから、ここからはお願いである。
大げさなことはしなくていい。
会議が多いなら、次の会議を一つだけ15分短くしてみる。
仕事を抱え込んでいるなら、一つだけ誰かに渡してみる。
「やばい上司」に疲れているなら、次にイラッとした瞬間、「能力か、伝え方か、構造か」と一度だけ考えてみる。
AIを使っているなら、「この仕事のどこまでなら任せられるか」を一つだけ考えてみる。
失敗していい。
むしろ、失敗したほうがいい。
間違えた折り目も、消えない代わりに、次の一手を軽くしてくれる。
エピローグ|あなたの折り紙は、まだ一枚も折られていないかもしれない
この記事を読んで、「いい話だったな」と思ってもらえたら、それは嬉しい。
でも、できれば、そのまま閉じないでほしい。
人生は、完成させるものではない。
一枚の紙を、折っては開き、また折る。
そのくり返しでしか、形にならない。
だから、もう一度だけ聞きたい。
あなたは今日、何を一つだけ、折ってみるか。
30秒宿題
閉じる前に、これだけ書いてみてほしい。
① 今、自分が「しんどい」と感じていることは何か。
② それは本当に「自分の能力」の問題なのか。
③ 今日、5分で試せる小さな折り目は何か。
③まで書いたら、今日、それを折る。
それだけでいい。
問題は、人ではない。構造が、人をそう動かしている。
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