🌸経営未来手帳・第224号「沈黙は、賛成ではない」―日本企業と海外企業の心理的安全性は、なぜすれ違うのか
🌸経営未来手帳・第224号「沈黙は、賛成ではない」―日本企業と海外企業の心理的安全性は、なぜすれ違うのか
(執筆者:安村明史/ビジネス能力開発株式会社)
今日は水曜日です。
noteでは日本語版、英語版を21時にLinkedInで投稿しています。海外企業が日本市場に参入しようとした時に起きる困りごとや、その背景にある日本人・日本組織の特徴、対策について考えます。
■はじめに
海外企業と日本企業が一緒に仕事をすると、会議で不思議なことが起こります。
海外側が聞きます。
「何か反対意見はありますか?」
日本側は黙っています。
海外側は「賛成なのだ」と理解する。
ところが会議が終わった後で、日本側から、
「実は、あれは難しいと思います」
という話が出てくる。
海外側から見れば、「なぜ会議で言わなかったのか」となります。
しかし日本側から見ると、その場で反対することで関係を壊したくなかった。少し考える時間が欲しかった。あるいは、周囲の空気を見ていた。
ここに、心理的安全性の捉え方の違いがあります。
■欧米と日本では「安全」の意味が少し違う
欧米側では、
「安全なら、意見を言う」
という考え方があります。
一方、日本では、
「関係を壊さず、本音を出せる」
ことが大切になります。
似ていますが、同じではありません。
だから日本人に、
「もっと率直に意見を言ってください」
と言うだけでは、うまくいかないことがあります。
むしろ、日本企業と仕事をする海外の方には、最初にこう伝えた方が分かりやすいでしょう。
“Silence does not always mean agreement in Japan.”
日本では、沈黙は必ずしも賛成ではありません。
考えている。
反対している。
まだ判断できない。
関係を壊さないよう、様子を見ている。
日本では、沈黙やためらい、間も、コミュニケーションの一部なのです。
■海外側にお願いしたい3つのこと
一つ目は、会議で即答を求めないこと。
「Any objections?」
だけで終わらせず、
「明日までに気になる点があれば教えてください」
と時間を置く。
二つ目は、沈黙を賛成として扱わないこと。
発言がなければ、
「何か気になることはありますか?」
「日本側から見て、難しいところはありますか?」
と、もう一段聞いてみる。
三つ目は、重要事項を口頭だけで終わらせないこと。
誰が、何を、いつまでにやるのか。
短いメールやチャットでも構いません。
文章でもう一度確認することです。
■日本側も「察してほしい」だけではいけない
しかし、海外側だけに日本文化を理解してもらうのでは長続きしません。
日本側にもルールが必要です。
私は、とても簡単でよいと思います。
「反対なら、最低一言は言葉にする」
“I need more time to think.”
“I have one concern.”
“I am not fully comfortable with this yet.”
これだけでも十分です。
流暢に反論する必要はありません。
「少し考えたい」
「一つ気になる」
その一言があれば、沈黙が賛成に変換されることを防げます。
■発言の方法を一つにしない
日本人に突然、
「もっと主張してください」
と求める。
これ自体がストレスになることがあります。
ならば、発言する方法を増やせばよい。
会議で話す。
チャットに書く。
会議後に個別に伝える。
翌日までにメールする。
重要なのは、「その場で発言できる人」だけを基準にしないことです。
日本人を欧米式に変える必要はありません。
沈黙を翻訳する仕組みをつくればよい。
私は、こちらの方が現実的だと思います。
■二つだけ、ルールを決める
海外側と日本側が一緒に働く時、最初から複雑な異文化研修をしなくてもよいと思います。
まず、この二つから始めてみる。
「沈黙を賛成にしない。」
「反対は、一言でも言葉にする。」
この二つなら、明日の会議から使えます。
心理的安全性とは、何でも自由に発言できることだけではありません。
本音が消えない仕組みをつくること。
そこから始めてもよいのではないでしょうか。
■編集後記
日本人の「沈黙」には、いろいろな意味があります。
黙っている人を、黙ったまま理解する。
日本の組織では、そんなマネジメントも必要なのだと思います。
■今日の問いかけ
あなたの会議では、発言しなかった人の意見を、どう拾っていますか?
「沈黙=賛成」になっていないでしょうか。
■ネコのつぶやき
「ネコも黙っている時ほど、いろいろ考えているにゃ」
■この記事について
本稿は、日本企業と海外組織の間で起きやすい「沈黙」のすれ違いを、実務で使えるルールとして整理した記事です。
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■次回8月20日予告
「「銀行員は、どこまで企業に伴走できるのか」
――金融庁「地域金融力強化プラン」の先にあるもの」
■安村 明史
🌸経営未来手帳
組織・経営の相談役(静かに伴走する役割)
「疲れた経営者が、少し言葉を預けられる場所として。
―#経営者の深夜食堂」
■付録

