あの夏に見た火をもう一度
キャンプファイヤーで「火のこを 巻き上げ/
天まで こがせ」と歌ったあの歌は、フランス民謡に串田孫一が歌詞をつけたものだったとは知らなかった。
子供の頃、夏になると小学生のキャンプに参加した。住み慣れた家と家族から離れる数日間は、夏休みの待ち遠しい催しだった。そして最後の夜には、キャンプファイヤーが待っていた。木材を格子状に積み上げていって、自分の背丈よりも高い木組みができる。それを見ているだけでもワクワクした。
火が灯されると、炎が立体的にうねりながら、上空を目掛けて高く立ちのぼっていく。その大きな火を囲んで子供たちは歌う。
キャンプファイヤーの火をじっと見つめる。刹那の時を共に過ごした友達の横顔が、火に照らされて浮かび上がる。みんながいて楽しいのに、そこにはなぜだか少し寂しい気持ちが混じっていた。火の周りだけが明るく、その向こうには闇が広がっていた。
あのメロディーには別の歌詞もあった。
『星かげさやかに』だ。
「今日の一日の幸/静かに思う」♪
キャンプファイヤーを囲んでいた、あのときの気分に近い。
火の粉のぱちぱち跳ねる音は耳に心地よかった。けれども、見つめてばかりはいられない。火の粉は、ときどき顔めがけて飛んでくるから。
今では日常的に火を見ることは、ほとんどない。ロウソクの火ですら見ることは稀だ。焚き火もめったに見なくなったし、そこで焼く焼き芋もなつかしい。
そういえば、お盆の迎え火、送り火の炎も好きだった。誰かを迎え、そして見送るための静かで小さな炎。
かつて実家の庭には、近所の人がブロックを組んで作ってくれた簡易焼却炉があった。紙屑を燃やしては、火を眺めていた。今では考えられない光景だ。
「光と 熱との/元なる 炎」♪
あのキャンプファイヤーのように、闇の中で大きな火をみることは、もう叶わないもしれない。それでも冬になったら暖炉のあるカフェか、宿を訪れてみようか。
出典:「燃えろよ燃えろ」作詞・串田孫一/フランス民謡
「星かげさやかに」作詞者不詳/フランス民謡
