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日の当たらないメタルディスク探訪:第58回 SCALE THE SUMMIT - Carving Desert Canyons (2009)

ヘイ、ヘヴィサウンドのハンターたち。第58回は、俺の個人的な大傑作を紹介する。テキサス州ヒューストンから2009年に放たれた、インストゥルメンタル・プログレッシブメタルの金字塔、SCALE THE SUMMITの2ndアルバム『Carving Desert Canyons』だ。

ジャケットを見てくれ。アリゾナ州の砂岩地帯にある奇岩「The Wave」の写真だ。風化した波状の岩肌が、幾千年もの時間をかけて彫刻されたような造形をしてる。このアルバムの音楽そのものが、まさにこの岩と同じだ。歌詞もボーカルもない。ただギターの旋律と、幾重にも織り重なるリズムだけが、38分間、風のように吹き続けて、聴き手の中に何かを彫り込んでいく。

バンドの裏話:レコード屋の立ち話から始まった、大陸を横断する物語

Scale the Summitの物語は、テキサス州ヒューストンのレコード屋から始まる。Chris LetchfordとTravis LeVrierは同じ地元育ちだったけど、別々の高校に通ってたせいで疎遠になってた。10代後半、たまたまレコード屋で再会した2人が意気投合したきっかけは、Between the Buried and Meというバンドへの共通の愛だった。「俺たちはいつも結局BTBAMの話に戻ってくるんだ。なぜかは分からないけど、それがきっかけだった」とLetchfordは振り返ってる。

2004年、2人はロサンゼルスのMusicians Instituteに揃って進学する道を選ぶ。「その時、他に特にやることもなかったから、いい考えだと思ったんだ」とLeVrierは語ってる。人生における最も重要な決断が、こんな消極的な理由で下されることもある。西海岸の音楽学校で、2人はドラマーのPat Skeffingtonと出会う。声をかけたきっかけがまた振るってる。「BTBAMのTシャツを着てて、バックパックからドラムスティックがはみ出してたから」。音楽性の一致よりも先に、Tシャツで運命が決まった瞬間だ。ベーシストのJordan Eberhardtは、後にMySpaceのクラシファイド広告(「低音担当求む」)を見て加入した。インターネット黎明期らしい、実に牧歌的なメンバー集めだ。

2年間のリハーサルと試行錯誤を経て、2006年末、全員がLetchfordの地元ヒューストンに移住。彼らが「adventure metal(冒険メタル)」と自称する、極めて技巧的な音楽性を練り上げ、自主資金で製作したデビューアルバム『Monument』をリリースした。この作品が、Dream TheaterのドラマーMike Portnoyの耳に留まり、2009年のProgressive Nationツアーへの招待に繋がる。Dream Theater、Zappa Plays Zappa、Bigelfと肩を並べるツアーだ。無名のインストゥルメンタルバンドにとって、これ以上ない後ろ盾を得た瞬間だった。

そして同じ2009年2月17日、Prosthetic Recordsから満を持してリリースされたのが2ndアルバム『Carving Desert Canyons』だ。ニュージャージー州ホーボーケンのNuthouse Recordingで、バンド自身とTom Beaujourによってセルフプロデュース。前作『Monument』が「若さゆえの過剰さ」を抱えてたとすれば、このアルバムは、その技巧を「成熟」の域まで昇華させた作品として迎えられた。Sputnikmusicは4.0/5.0の「Excellent」評価を与え、「Carving Desert Canyonsは、過剰にテクニカルだったデビュー作Monumentと比較して、バンドの音楽性の成熟と洗練を証明している」と評した。

地域の雰囲気:ヒューストンという奇妙な起点、そしてLAとの往復

ヒューストンは、テキサス州最大の都市であり、宇宙産業と石油産業で知られる街だ。メタルシーンとしては、Rick DerringerやDimebag Darrell(Pantera、Damageplan)を輩出したテキサス州の中でも、決して中心地ではない。でも、Scale the Summitのユニークな点は、彼らの音楽的アイデンティティが、特定の「シーン」の産物じゃなく、Letchford個人とLeVrier個人の「趣味の一致」から生まれてることだ。

2人がロサンゼルスのMusicians Instituteに進学し、そこで残りのメンバーと出会い、最終的にヒューストンに戻ってバンドを完成させたという経緯そのものが象徴的だ。地元の泥臭いシーンから叩き上げられたわけじゃなく、音楽学校という「技術の坩堝」で磨かれた演奏力を、ヒューストンという故郷に持ち帰って結実させた。AllMusicは、彼らのサウンドを「プログレッシブな探求(Cynic、Dream Theater、Kongを思わせる)と、純粋な超絶技巧(Joe SatrianiやSteve Vaiのようなインストゥルメンタル・ギターヒーローを彷彿とさせる)の見事な融合」と評してる。

面白いのは、Scale the Summitが最初から「歌のないバンド」を目指してたわけじゃないってことだ。当初は普通にボーカルを入れたプログレッシブメタルとして活動してたけど、「自分たちの楽曲は、歌詞の伴奏なしで完結してる」と気づいた瞬間、インストゥルメンタルへと舵を切った。ボーカルという「分かりやすい手すり」を自ら手放す決断は、決して簡単じゃなかったはずだ。

アルバム批評:砂漠の彫刻、38分間の風化の記録

全8曲、約38分(アナログ盤収録尺は39分55秒)。プロダクションは非常にクリーンで、AllMusicのレビュアーEduardo Rivadaviaは「歌詞とボーカルが通常与えてくれる、便利な手すりの欠如」がこのバンドの創意工夫と裏腹に、慣れないリスナーを退屈させかねないと指摘した。でも、これは裏を返せば「歌詞に頼らず38分間聴かせ切る」だけの構成力があるということだ。

Last Ritesのレビューは、このアルバムの本質を的確に言い当ててる。「Scale the Summitは、テクニカルで洗練された方向に傾きながらも、同じ系統の多くのプロジェクトが陥る、退屈などん詰まりには決して迷い込まない、ノリノリなインストゥルメンタル・プログレッシブメタルを演奏する」。同レビュアーは、このアルバムが2009年の担当キューの中に長らく埋もれてたことを告白しつつ、「Carving Desert Canyonsは、初っ端から俺を完全に吹き飛ばした。これに挑戦する幸運を掴んだ自分は、極めて幸運だったと思う」と綴ってる。

「Dunes」と「Giants」、アルバムの二つの頂点

アルバムタイトルにも通じる砂漠のイメージを最も色濃く反映した楽曲が「Dunes」だ。Lambgoatのレビューは「Giantsと並んで、DunesはアルバムのよりヘヴィなSaide(重厚な側面)をうかがわせる」と評してる。風に吹かれて形を変え続ける砂丘のように、静と動、繊細さと重さが波状に押し寄せる構成が特徴的だ。

そして締めくくりを飾る「Giants」(7:20)は、アルバム最長の楽曲であり、Teeth of the Divineのレビューが「Misery SignalsやLife In Your Wayのボーカルなし版、もう少しプログレッシブなポストロック版」と形容した通り、荘厳なメロディと緻密な変拍子が同居する大作だ。じわじわと高まっていく展開の末に訪れるクライマックスは、まさに「巨人(Giants)」という名にふさわしいスケール感を持ってる。

アルバム全体を通して、Chris LetchfordとTravis LeVrierのツインギターが、まるで会話するように絡み合う。7弦ギターを駆使したリフワークは、当時勃興しつつあったDjentシーンとの共振を感じさせながらも、彼らは頑なにクリーンなギタートーンを多用し続けた。この点についてLambgoatのレビューは「スクィーキークリーンなPro Toolsの録音とプロダクションが、音楽から感情の一部を奪ってる」とやや辛口に指摘してる。でも、この「磨き上げられすぎたクリーンさ」こそが、風化した砂岩の滑らかな曲線を思わせる、このアルバムのコンセプトそのものだと俺は思ってる。

FFO:Between the Buried and Me(インストゥルメンタルパート)、Animals as Leaders、Cynic、Dream Theater、Canvas Solaris、Protest the Hero(インストゥルメンタル的側面)、Intervals、Plini

歌もの抜きで、ギターの旋律と複雑なリズムだけで聴かせ切るインストゥルメンタル・プログレッシブメタルが好きなら、『Carving Desert Canyons』は必聴だ。

最新ニュース:メンバーが入れ替わっても、山は登り続ける

『Carving Desert Canyons』のブレイク以降、Scale the Summitは着実にキャリアを重ねてる。2010年、Between the Buried and Meとの北米ツアーを経て2011年に3rdアルバム『The Collective』をリリース。2011年にはPeriphery、Fair to Midland、Cynic、Protest the Heroとのツアーにも参加した。

その後、ラインナップは大きく入れ替わった。2012年にJordan Eberhardtが脱退しMark Michellが加入、2015年にはドラマーのPat Skeffingtonが解雇されJ.C. Bryantが後任に。そして2017年、結成メンバーのTravis LeVrierがEntheosに加入するため脱退。現在のScale the Summitは、Chris Letchfordを唯一のオリジナルメンバーとして、Kilian Duarte、Charlie Engenという体制で活動を続けてる。2004年のレコード屋での立ち話から始まった物語は、当初のメンバーがほとんどいなくなった今も、Letchfordという一人の男の情熱によって走り続けてる。

欠点:中盤の均質さ、そして「クリーンすぎる」プロダクション

『Carving Desert Canyons』最大の弱点は、Lambgoatのレビューが指摘する通り「40分という尺の中で、楽曲ごとの変化に乏しく、暖かみのあるメロディですら記憶に残りにくくなる」という点だ。各楽曲に可能な限り多くの泣きのギターリックと高揚感あるメロディを詰め込もうとする姿勢が、時に「特定の音響スタイルへの過剰な傾倒」となって、麻痺したような感覚をリスナーに与えることもある。

そして先述の通り、プロダクションの磨き上げられすぎたクリーンさも、賛否が分かれるポイントだ。パームミュートやダブルベースを多用した激しいドラムパートでさえ、「キャンディーでコーティングされたような」感触になってしまうという指摘は、的を射てる部分もある。ボーカルがないという構造上の挑戦に加えて、この「感情の抜けたような綺麗さ」が、一部のリスナーには物足りなく映るかもしれない。

でも、俺個人としては、この「クリーンさ」こそが、風化した砂岩の滑らかな曲線と重なって見える。荒々しさで殴るタイプのメタルとは全く違う美学が、ここにはある。

採点:95/100

歌詞に頼らず38分間を聴かせ切る構成力、ツインギターの精緻な絡み合い、そして砂漠の彫刻を思わせる音楽的コンセプトの一貫性。俺個人としては、この時代のインストゥルメンタル・プログレッシブメタルの頂点の一つだと思ってる。中盤の均質さがもう少し解消されてれば文句なしの満点だった。でも、それを差し引いても、この一枚が俺にとって特別な理由は揺るがない。

ヒューストンから世界へ、風が彫り上げた38分間

『Carving Desert Canyons』は、2009年のインストゥルメンタル・プログレッシブメタルの隠れた金字塔にして、俺個人にとっての大傑作だ。レコード屋での立ち話から始まった友情、Musicians Instituteでの出会い、そしてMike Portnoyの後押し。全部が、この一枚に詰まってる。

BandcampやSpotifyで今でも聴けるから、深夜にヘッドホンで『Carving Desert Canyons』の砂漠に身を委ねてみてくれ。歌詞という手すりがなくても、ちゃんと最後まで連れていってくれるアルバムだ。次回もマイナー盤を掘るから、オススメあったらコメントで教えてくれ

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