日の当たらないメタルディスク探訪:第37回 SORCERER'S PLEDGE - Behold... (2012)
ヘイ、ヘヴィサウンドのハンターたち。第37回は、カリフォルニアから2012年ハロウィンにリリースされた、Colin Youngのワンマン・ドゥーム・プロジェクト、Sorcerer's Pledgeの『Behold...』だ。

このプロジェクト名は、Candlemassの1986年の名盤『Epicus Doomicus Metallicus』のクロージング・トラック「A Sorcerer's Pledge」から取られてる。そして、Colin Young自身、ハードコア/メタルコアシーンで最も多才なミュージシャンの一人だ。Twitching Tongues(ボーカル)、God's Hate(ギター/ドラム/ボーカル)、そして...このSorcerer's Pledgeでは全楽器を一人で演奏してる。
全3曲、約20分。カセット100本限定。ハードコア界の才能が、フューネラル・ドゥームに挑戦した、知る人ぞ知る隠れた名作だ。
バンドの裏話:Twitching Tonguesのフロントマンが、一人でドゥームを創った

Colin Youngは、カリフォルニアのハードコア/メタルコアシーンで育った。兄のTaylor Young(Nailsのドラマー、プロデューサー)と共に、2009年にTwitching Tonguesを結成。Twitching Tonguesは、ハードコアとドゥーム・メタル、ゴシック・ロックを融合させた、「ジャンルを超えたバンド」として知られてる。Type O Negative、Candlemass、Bolt Thrower、Crowbarからの影響を公言し、Metal Bladeからアルバムをリリースしてきた。
でも、Colin Youngの音楽的なルーツは、ハードコアだけじゃない。彼は子供の頃、兄のTaylorの影響でハードコア/パンクに目覚めたが、十代後半にType O Negativeを発見して、音楽との関係が変わった。特に、Type Oの「Gravity」という曲が、彼の人生を変えた。Revolverのインタビューで、Colinは語ってる。「この曲には、ハードコア・パンクの激しさと、メロディックな美しさがある。俺は、自殺願望と向き合ってきた人間だ。でも、Type Oの皮肉で舌を巻くような歌詞が、俺を救ってくれた」

2012年、ColinはSorcerer's Pledgeを始めた。Twitching TonguesやGod's Hateとは全く違う、「一人で作るドゥーム・メタル」のプロジェクトだ。彼は、ギター、ベース、ドラム、ボーカル...全てを一人で演奏し、録音した。インタビューで、Colinは「俺は、演奏するのが好きなんだ。ドラム、ギター、ボーカル...どれも楽しい。でも、今は歌うのが一番居心地いい。ただ、声の管理とメンテナンスは、超大変だ」と語ってる。
『Behold...』は、2012年10月31日(ハロウィン)に、カセット100本限定でリリースされた。自主制作、自主リリース。Metal Archivesによると、「カリフォルニアのドゥーム・メタル・ワンマン・バンド」として登録されてる。
そして、このデモの後、Colinは「フルレングス・アルバムのプリプロダクションを始めた」という情報もあるが、Twitching TonguesとGod's Hateが忙しくなり、Sorcerer's Pledgeは「実質的に凍結状態」になった。2025年現在も、フルレングスはリリースされていない。
地域の雰囲気:カリフォルニア、ハードコアとドゥームの交差点

カリフォルニアは、ハードコア/メタルコアの聖地だ。特にロサンゼルスとオレンジカウンティは、Nails、Xibalba、Rotting Out、Fury、Downpresserなどの、ブルータルで暴力的なハードコアバンドを生み出してきた。そして、Twitching Tonguesは、その中でも「ジャンルを超えた変なバンド」として知られてる。
でも、カリフォルニアは、ドゥーム・メタルの歴史も持ってる。Sleep(サンノゼ)、Electric Wizard(イギリスだが、カリフォルニアで影響を与えた)、そしてType O Negative(ブルックリンだが、西海岸のシーンに大きな影響を与えた)。Colin Youngは、この「ハードコア」と「ドゥーム」の両方を愛してる。
Sorcerer's Pledgeは、Colinが「カリフォルニアのハードコアシーンから離れて、一人でドゥームを作る」ための場所だった。Twitching Tonguesでは、バンドメンバーとの協力が必要だし、God's Hateでは、ニューヨーク・ハードコア(NYHC)のスタイルを守る必要がある。でも、Sorcerer's Pledgeでは、Colinは「自分だけの音楽」を作れる。
アルバム批評:Candlemassへのオマージュ、そして孤独なドゥーム
全3曲、約20分。プロダクションは「ローファイ」。デモらしい音質だが、その「未完成感」が、逆にこのアルバムの「孤独」と「絶望」を際立たせてる。
1曲目「Behold...」(6:40)
タイトル・トラックは、アコースティックギターで始まる。静かで、不気味。そして、ディストーション・ギターが加わり、ドゥーム/デス・グロウルが炸裂する。でも、コーラスでは、Colinが「不安定だが、奇妙に美しい」クリーンボーカルを披露する。レビューで「Sorcerer's Pledgeが達成しようとしたことの完璧な要約」と評されてる。
この曲は、Candlemassの影響を受けてるが、リフはPeacevilleの古いドゥーム/デス(My Dying Bride、Paradise Lost、Anathema)に近い。重く、遅く、でも美しい。
2曲目「The Tower」(6:42)
この3曲の中で最も「速い」曲。でも、速いって言っても、フューネラル・ドゥームの基準だから、普通のメタルよりは遥かに遅い。リフは平凡だが、Colinの「奇妙なウェイル(叫び)」が印象的。曲の最後では、Messiah Marcolin(Candlemassの伝説的なボーカリスト)のような「オペラティックなボーカル」を披露してる。
3曲目「Victory Song」(7:08)
このアルバムで最も記憶に残る曲。哀愁のリード・ギター・メロディと、勝利的でナザールなコーラス。ヴァースは、ゆっくりと忍耐強く進むが、中盤と終盤では、Twitching Tonguesの『In Love There is No Law』(2013年のアルバム)みたいな、クランチなミッドペース・リフが炸裂する。
レビューで「この曲は本当に良い。哀愁のリード・ギター・メロディと、勝利的でナザールなコーラスのおかげで、最も記憶に残る」と絶賛されてる。
プロダクションは、意図的に「ローファイ」だ。Colinは、プロデューサーではなく、ミュージシャンとして、この音楽を作った。でも、その「ローファイさ」が、逆にこのアルバムの「真正性」を保ってる。ピカピカのプロダクションだったら、このアルバムの「孤独」と「絶望」は、薄れてたかもしれない。
FFO :Warning、Reverend Bizarre、Candlemass、My Dying Bride、Anathema、Pallbearer、40 Watt Sun
トラディショナル・ドゥームとドゥーム/デスの融合が好きなら、『Behold...』は必聴だ。Candlemassのオペラティックなボーカルと、Peacevilleの哀愁が混ざった、独特のスタイルだ。
最新ニュース:凍結されたプロジェクト、でも愛されてる
2012年のハロウィン、『Behold...』はカセット100本限定でリリースされた。でも、それ以降、Sorcerer's Pledgeからの新作はない。
「このデモが本当に好きだ。でも、Twitching TonguesとGod's Hateが忙しすぎて、このプロジェクトが実質的に凍結状態なのは、心が痛む。Colinがいつかこのプロジェクトを再訪してくれることを願ってる。彼は、フルレングスのプリプロダクションを始めてたって聞いたから、曲がいつか日の目を見る可能性はある」とのレヴューもある。
2018年、Alternative Pressが「Twitching TonguesのボーカリストColin Youngが、サイド・プロジェクトSorcerer's Pledgeをデビューさせた」という記事を掲載。でも、その後も新作はない。
2025年現在、『Behold...』はBandcampで聴ける。Twitching Tonguesは2023年にハイエイタスから復活し、2023年10月にMisfitsのカバーEP『Twitchfits Vol.1』をリリース。God's Hateも活動中。でも、Sorcerer's Pledgeは...静かだ。
ファンの間では、このデモは「過小評価された傑作」として愛されてる。Bandcampのレビューで「Warning、Reverend Bizarreのようなナザールで真正なドゥームに興味があるドゥーム愛好家なら、チェックしてほしい。ドゥーム/デス寄りだ」と推薦されてる。
欠点:「未完成」と「短すぎる」
『Behold...』の最大の欠点は、「未完成」だ。全3曲、約20分。デモだから、当然だけど、もっと長く聴きたい。Metal Archivesのレビューで「Twitching TonguesやNailsが当時やってたことと比べると、明らかに未発達だ」と指摘されてる。
そして、「短すぎる」。20分は、フューネラル・ドゥームのアルバムとしては短い。1曲が6~7分だから、テンポは遅いけど、全体の体験は「物足りない」。もっと曲があれば、このアルバムの「世界観」が完成しただろう。
あと、「リフが平凡」という批判もある。特に「The Tower」は、リフが記憶に残らない。Colinのボーカルが印象的だけど、リフが弱い。CandlemassやWarningのような「記憶に残るリフ」があれば、このアルバムはもっと強力だった。
そして、「Colinが歌に集中しすぎ」という意見もある。ギター、ベース、ドラム...全部一人で演奏してるから、各楽器のパフォーマンスは「十分」だけど、「卓越」じゃない。もしバンドメンバーがいれば、もっと豊かなサウンドになっただろう。
採点:82/100
カリフォルニアのハードコアシーンから生まれた、孤独なドゥーム・プロジェクト。Candlemassへのオマージュ、Peacevilleのドゥーム/デスへのリスペクト、そしてColin Youngの多才さ。全てが、この20分に詰まってる。未完成だけど、その「未完成感」が、逆に魅力だ。もしフルレングスがリリースされてれば、88超えたかも。でも、この「デモらしさ」こそが、Sorcerer's Pledgeのアイデンティティなんだよな。
カリフォルニアからフューネラル・ドゥームへ、そして伝説の断片
『Behold...』は、Colin Youngの「もう一つの顔」だ。Twitching TonguesとGod's Hateでは、彼は「ハードコアの戦士」だ。でも、Sorcerer's Pledgeでは、彼は「孤独なドゥーム・クリエイター」だ。
2012年のハロウィン、カセット100本限定。この小さなリリースが、今でもドゥーム愛好家の間で語り継がれてる。もしColinが、いつかこのプロジェクトを再訪してくれたら...俺たちは、もっと深い絶望に浸れるだろう。
BandcampやSpotifyで今でも聴けるから、深夜にヘッドホンで『Behold...』の孤独なドゥームに浸ってみてくれ。そして、Colin Youngに「もっとSorcerer's Pledgeを作ってくれ」とメッセージを送ろう(笑)。次回もマイナー盤(または過小評価盤)を掘るから、オススメあったらコメントで教えてくれ!
