日の当たらないメタルディスク探訪: 第27回 Immortality - 関西ハードコアの異端児が刻んだ魂の叫び
さて、今回も深淵なるメタルとハードコアの沼から、とっておきの逸品を引っ張り出してきたぜ。今日の主役は、神戸が産んだ呪われた落とし種、Immortalityだ。

Immortalityとは何者か?
2000年、神戸。この港町で産声を上げたImmortalityは、日本のエクストリームミュージックの歴史において、黙殺するにはあまりにも危険な存在だ。彼らの音楽性を一言で表すなら、「デスメタルとハードコアの不義密通」。Discogsではハードコアだのメタルコアだの、Metal-Archivesではデスメタルだのと、もっともらしく分類されているが、そんなカテゴライズは彼らの本質を捉えきれていない。彼らは、その両方の「旨味」だけを、一切の妥協なくしゃぶり尽くしている。ブルータルなリフとブラストビートの嵐が吹き荒れたかと思えば、次の瞬間には、フロアを乱闘騒ぎに変える極悪非道なビートダウンが炸裂する。この予測不能な暴力性こそが、Immortalityの真髄であり、俺たちのような好事家を惹きつけてやまない魅力なのだ。

特筆すべきは、このバンドのフロントマン、Naohiro Takayamaが、あの伝説の大阪ハードコアバンド、Straight Savage Styleの元メンバーだという事実だろう。

Straight Savage Styleと言えば、その名の通り、野獣の如き獰猛さで当時の関西ハードコアシーンに君臨した、カリスマ中のカリスマ。その中心人物が、デスメタルへと傾倒したバンドを始めたという事実は、シーンに大きな衝撃を与えた。これは単なる音楽性の変化じゃない。ハードコアが本来持つ「怒り」や「衝動」といった本能を、デスメタルという、より残虐なフォーマットで再構築しようとする、ある種の「業」だったのかもしれない。ハードコアの魂を、デスメタルの肉体に無理やり詰め込んだ、グロテスクで美しい突然変異。それがImmortalityだ。
さらに言えば、同じ神戸の地で活動していたDyingraceの存在も無視できない。

彼らもまた、デスメタル、グルーヴメタル、ハードコアを融合させた「デスグルーヴ」と称されるサウンドで、当時のシーンに強烈な足跡を残していた。Immortalityのブルータルかつグルーヴィーな側面には、Dyingraceが築き上げた土壌の影響も少なからずあったはずだ。同じ釜の飯を食った仲間たちの間で、互いに刺激し合い、より過激な音を追求していった。そんな背景が、彼らのサウンドをさらに深みのあるものにしているんだ。
そして、Straight Savage StyleでNao氏と共にギターを掻き鳴らしていたChikara Tamuraが率いた43Urbanの存在も忘れてはならない。
43Urbanは、Straight Savage Styleの遺伝子を受け継ぎつつも、よりメタリックで重厚なサウンドを追求していたバンドだ。Nao氏がImmortalityでデスメタルへと傾倒していったのは、Straight Savage Style解散後、Chikara氏が43Urbanで示した方向性も、少なからず影響を与えたのかもしれない。かつての盟友がそれぞれ異なる道を歩みながらも、互いの音楽性に影響を与え合っていた。そんな男たちの熱いドラマが、このシーンには確かに存在していたんだ。
3つの魂の叫び:主要リリース深掘り
Immortalityがこの世に残した音源は、数えるほどしかない。だが、そのどれもが、そこらの凡百のバンドが束になっても敵わないほどの、濃密な殺意と美学に満ちている。今回は、その中でも特に重要な3つの音源を俎上に載せ、彼らの暗黒の世界を解剖していくとしよう。
1. 『I Think Therefore I Am』 (2001年, EP)

Immortalityの存在証明にして、その音楽性の全てを凝縮したデビューEP。2001年、Hardcore Kitchenという、これまた筋金入りの神戸産レーベルからリリースされたこの一枚は、当時の関西アンダーグラウンドの熱気と、ジメっとした湿度をそのまま閉じ込めた、タイムカプセルのような代物だ。ザラつききったギター、地を這いずるベース、そしてNaohiro Takayamaの、獣が喉を引き裂かれるような咆哮。その全てが渾然一体となって、聴く者の鼓膜と常識をズタズタに引き裂く。
• Sympathize: EPの幕開けを飾る、Immortalityからの宣戦布告。デスメタル譲りの邪悪なリフと、ハードコアの十八番である急転直下のブレイクダウンが、聴く者の脳髄をシェイクする。Naohiro Takayamaの咆哮は、もはや歌詞なんてどうでもいい。苦悩と怒りが渦巻く、魂そのものの叫びだ。
• Strength: ここで加わるのが、ゲストボーカルのKosei (John Holmez)。彼の爽快で
ラッピン調のノリが、楽曲にさらなる狂気と深みを与えている。ミッドテンポでじわじわと圧力を高め、一気にブラストビートで爆発四散する展開は、まさに芸術的。Immortalityが、ただの脳筋ブルータルバンドじゃないことを証明してくれている。
• Memories: 暴力一辺倒じゃないぞ、とでも言いたげな、叙情的な側面を垣間見せる一曲。デスメタル由来の物悲しいメロディが、激しさの中に一瞬の静寂と、そこはかとない悲哀を描き出す。デスメタルとハードコアの狭間で引き裂かれそうになる、彼らの内面の葛藤が透けて見えるようだぜ。
• Road: そして、このEPのハイライトが、ゲストにKoji (GNz-Word)とMakoto (Sand)を迎えたこの曲だ。当時の関西ハードコアシーンの顔役たちが集結したこの一曲は、シーンの固い結束と、Immortalityがその中心にいたことの証だ。ハードコアへの忠誠を誓いながら、デスメタルという禁断の果実に手を伸ばす。そんな彼らの生き様が凝縮された、クロスオーバーの金字塔だ。
このEPは、デスメタルとハードコアの境界線を曖昧にし、新たな可能性を提示した、日本のエクストリームミュージック史における重要な一枚だ。今聴いても、その衝撃は全く色褪せちゃいない。
2. Swarrrm / Immortality – Split (2005年, Split CD)

2005年、同じく神戸の狂犬、グラインドコアバンドSwarrrmとのスプリットをリリース。Swarrrmの、理性のタガが外れたカオティックなグラインドと、Immortalityの計算され尽くしたブルータリティが激突するこの一枚は、当時の関西シーンの「何でもあり」な活気を伝える貴重な記録だ。Immortalityサイドの楽曲は、よりタイトに、より残虐に進化しており、彼らが決して過去の栄光に安住するようなタマじゃなかったことを物語っている。
3. Edge Of Spirit / Immortality – Real Sights, Realize, Real Lights (2004年, Split CD)

そして2004年、日本のメタルコアの雄、Edge Of Spiritとのスプリットを、なんとメジャーレーベルのVAPからリリース。これでImmortalityも安泰か、と思いきや、彼らは全くブレていない。Edge Of Spiritの洗練されたメタリックなサウンドに対し、Immortalityは、あくまでアンダーグラウンドの流儀を貫き、持ち前のデスメタル/ハードコアで殴りかかる。メジャーの水にも全く染まらない、その反骨精神や良し。このスプリットで、彼らのサウンドはさらにメタリックな切れ味を増しており、その実力がシーン屈指のものであったことを証明している。
バンドの背景と関西ハードコアシーン

Immortalityが生まれた神戸という街は、昔からいろんな文化が混じり合う、ごった煮のような場所だ。そんな土地柄が、デスメタルとハードコアなんていう、水と油のような音楽を混ぜ合わせる、彼らの無謀な試みを後押ししたのかもしれない。そして、彼らが主戦場とした関西、特に大阪は、「東の東京、西の大阪」なんて言われるが、その実、東京なんざ目じゃねえほど、ドロドロで人間臭い、独自のハードコアシーンを育んできた。SxSxSクルーを筆頭に、この土地のバンドは、どこかウェットで、極めてブルータル。Immortalityもまた、「Hardcore Pride」みたいな、シーンの重要イベントでその名を轟かせ、関西ハードコアの歴史にその名を刻んだのだ。

Hideath (Hidenori Sato) 氏とラグビーの意外な繋がり

ここで一つ、全く毛色の違う話を。日本のブルータルデスメタル界の至宝、Infernal Revulsionのボーカリスト、Hidenori Sato、またの名をHideath。この男、ステージを降りると、なんとラグビーの通訳というとんでもない大役に精を出している。それも、Canon Eaglesだの、果てはラグビー日本代表チームだの、超一流どころでだ。2019年の時点で、16年もその道を極めているってんだから、そのプロフェッショナルぶりには舌を巻くぜ。

エクストリームミュージックのボーカリストが、紳士のスポーツであるラグビーの、それも国際的な舞台で活躍している。この「二刀流」っぷりは、まさに異常。だが、この一見相容れない二つの世界が、一人の男の中で融合しているという事実こそが、Immortalityのようなバンドを生み出した、関西シーンの懐の深さを物語っているのかもしれない。音楽だけじゃない、そこに生きる人間たちの、予測不能なドラマ。それこそが、俺たちがアンダーグラウンドに惹かれる、本当の理由じゃないのか?
FFO:
Immortalityの毒にやられた君たちに、処方箋代わりのバンドリストだ。心して聴きやがれ。
Straight Savage Style, Sand, Infernal Revulsion, Edge Of Spirit, Swarrrm, Merauder, Dyingbreed
採点:90/100点
神戸の港町が産み落とした、デスメタルとハードコアの混血児が吠える
Immortalityは、日本のエクストリームミュージックの歴史の中で、デスメタルとハードコアの融合という、ありふれたテーマを、誰よりも深く、そしてブルータルに追求した、真の求道者だ。彼らが残した音源は、その活動期間の短さにもかかわらず、今なお、俺たちの耳の奥で、鈍い輝きを放ち続けている。特に、Straight Savage Styleの血を受け継ぎながら、デスメタルという修羅の道へと足を踏み入れたその生き様は、関西ハードコアシーンの、一筋縄ではいかない多様性と奥深さを、何よりも雄弁に物語っている。
そして、Hideathのラグビー通訳話みたいな、予測不能な人間ドラマが、このシーンにはゴロゴロ転がっている。それこそが、俺たちがやめられない、アンダーグラウンド探訪の醍醐味だ。まだ「日の当たらない」場所にいる、彼らの音楽を、今こそ掘り起こし、その魂の叫びに耳を傾けてみやがれ。きっと、君のメタル探訪の旅に、新たな血と肉、そしてほんの少しのユーモアを与えてくれるはずだ。じゃあな、また次の沼の底で会おうぜ。
