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日の当たらないメタルディスク探訪:第57回 VOLA - Inmazes (2015)

ヘイ、ヘヴィサウンドのハンターたち。第57回は、デンマークはコペンハーゲンの郊外Birkerødから、2015年にひっそりと自主リリースされたモンスター、VOLAのデビューフルレングス『Inmazes』だ。

ジャケットを見てくれ。頭部のレントゲン写真みたいな線が交錯した、不気味なんだけどカラフルな男の顔。デンマークの画家Anders Thraneの水彩・アクリル画がベースになってて、Asger Mygind本人は「人の頭の中のレントゲン写真だと思って気に入ってる。頭の中の色んな線と、あの威圧的な表情が、何かがおかしいって印象を与える。でも同時にすごくカラフルで、歓迎するような感じもある」と語ってる。この「何かがおかしいのに、なぜか歓迎される」という感覚。それがそのまま、このアルバムの音楽そのものだ。

バンドの裏話:郊外の地下室で生まれた、ジャンル分類拒否症

VOLAは2006年、コペンハーゲンの郊外Birkerødで結成された。Asger Myginedが高校生の頃、両親の家の地下室のリハーサルルームで、友人たちとPorcupine TreeやFreak Kitchenのカバーをジャムってたのが全ての始まりだった。「変拍子への共通の興味から、このコラボレーションは育っていった」とMygindは振り返ってる。全員が地元の音楽学校に通ってた仲間たちという、これ以上ないくらい牧歌的な出発点だ。

2008年、初期ラインナップ(Mygind、Niels Dreijer、Jeppe Bloch、Martin Werner、Niklas Scherfig)でEP『Homesick Machinery』を自主リリース。2011年には、ベースにNicolai Mogensen、ドラムにFelix Ewertを迎えた新体制で『Monsters』を発表。ここで7弦ギターとポリメトリック(4/4の上で奇数拍子が同時進行する感覚)を本格的に実験し始めた。Mygindいわく「Monstersでこれがすごくうまくいったから、フルアルバムでもっと掘り下げたくなったんだ」。

そして3年間の沈黙を経て2015年2月2日、満を持して自主リリースされたのが『Inmazes』だ。マスタリングは、Opeth、Katatonia、Amon Amarthといった北欧メタルの重鎮たちを手掛けるJens Bogren。予算も知名度も限られたインディーバンドが、このクラスのエンジニアを起用できたこと自体、当時のシーンで既に一目置かれてた証拠だ。この作品が話題を呼び、2016年9月16日、Mascot Recordsから世界流通で再リリース。デビュー作が、たった1年半でメジャー流通に乗った。地下室でPorcupine Treeをコピーしてた高校生たちにしては、悪くない出世だ。

面白いのは、後にVOLAの音楽性を大きく変えることになるドラマー、Adam Janziとの出会いのエピソードだ。ただし、これは『Inmazes』の後の話。2017年、Felix Ewertが円満に脱退した後、バンドはYouTubeでたまたま見つけたMeshuggahカバー動画に一目惚れしてAdam Janziをスカウトした。だから『Inmazes』を叩いてるのは、あくまでEwertだってことは覚えといてくれ。ネットの海を漁ってたら理想のドラマーを見つけた、なんて話は、令和のバンド結成譚として出来過ぎてるけどな。

地域の雰囲気:デンマーク、メタルの辺境から届いた異物

デンマークのメタルシーンといえば、Mercyful FateやKing Diamondの国、というイメージが強い人も多いだろう。でも、VOLAが出てきた2010年代は、ちょっと違う文脈だった。当時世界中を席巻してた「Djentブーム」の真っ只中だ。Periphery、TesseracT、Animals as Leaders、Intervals、Plini。7弦・8弦ギターの低音パームミュートと、ジャズ的な変拍子を組み合わせたこのムーブメントの中で、VOLAは「北欧の異物」として突如現れた。

音楽メディアEverything Is Noiseの回顧記事はこう書いてる。「みんながPliniのThings三部作の完結を辛抱強く待ってた2015年の夏、どこからともなくデンマークのバンドVOLAがデビューフルレングス『Inmazes』を落とした。このアルバムは瞬く間に、シーンの多くの人々の心を掴んだ」。同記事の筆者は、このアルバムの名前をタトゥーで腕に入れてるとまで告白してる。「ジャケットがクールだからってだけじゃない。VOLAの音楽なしの人生なんて、ほとんど想像できないからだ」。ここまで言わせるバンドも、そう多くない。

VOLA自身は、自分たちのルーツについて非常にオープンに語ってる。Meshuggah、Porcupine Tree、Mew、Opeth、Soilwork、そしてThe Beatlesまで。Mygindは「James Hetfieldに影響されてフロントマンを志した」と語る一方、キーボードのMartin Wernerは「Jordan Rudessの演奏とソングライティングにものすごく心を動かされた」と証言してる。ヘヴィなリフと、予測不能なエレクトロニック/シンセの要素が同居する。この「メタルなのにメタルの文法に縛られない」姿勢こそ、コペンハーゲンの郊外という辺境から生まれたVOLAが、世界のプログレメタルシーンに刺さった理由だ。

アルバム批評:迷宮を彷徨う、51分間の幸福探求

全10曲、約52分。テーマは「幸福を求めて彷徨う、精神の迷路への旅」。Mygindの内省的な作詞は、抑圧、孤立、そして出口の見えない思考のループを描き続ける。

アルバムを開く「The Same War」は、まるで戦場に放り込まれるようなヘヴィリフから始まる。Djentの語彙を使いながら、すぐにMygindの澄んだクリーンボーカルが乗ってくる瞬間、このバンドが「重さで殴るだけのバンド」じゃないことが分かる。

Djent時代の名刺代わりになった2曲

先行シングルとして切られた「Gutter Moon」は、Distorted Sound誌のレビューが「巨大なリフとフック満載」と評した通り、VOLAというバンドの「取っつきやすさ」を証明した曲だ。歪んだベースとギターが奇妙な小道を作りながら、その上に広がるボーカルハーモニーとダークブルーの質感を持つエレクトロニカが絡み合う。キャッチーなのに、一筋縄ではいかない。この二律背反こそがVOLA印だ。

「Emily」も同時期にシングルとして切られた楽曲で、より内省的な側面を見せる。歌詞に固有名詞を持ち込むことで、抽象的な「精神の迷路」というテーマに、生々しい人間の輪郭を与えてる。

タイトルトラック「Inmazes」は、アルバムを締めくくる大作だ。progarchivesのレビューは「アルバムの後半3分の1、想像力に満ちた密度の濃い展開が実に印象的だ」と評し、この曲を「見事に全体を締めくくる」楽曲として名指しで称賛してる。長尺の中で、ヘヴィなセクションとアンビエントな静寂が交互に押し寄せ、まさに「迷路」を彷徨う感覚をリスナーに追体験させる。

他にも「Stray the Skies」「Feed the Creatures」といった楽曲が、アルバム中盤から終盤にかけての名場面として挙げられることが多い。同レビューは「アルバムの中盤には忘れがたい瞬間が一つ二つあるかもしれないが」と若干の贅沢な不満も漏らしつつ、全体としては「近年出た中で最も有望で、生き生きとして、創造的な音楽の一つであり、今年のベストアルバムになる可能性すら秘めている」とまで評してる。

プロダクションは、Jens Bogrenのマスタリングによって、ヘヴィなリフの輪郭を保ちながら、エレクトロニカ的な質感を潰さない絶妙なバランスに仕上がってる。「高く舞い上がるようでメロディックに満たされてると同時に、むずむずするようでヘヴィでもある」というレーベルの紹介文は、決して誇張じゃない。

FFO:Periphery、TesseracT、Meshuggah、Porcupine Tree、Karnivool、Leprous、Mew、Devin Townsend、Soilwork

Djentのヘヴィネスと、プログレッシブロックの叙情性、そしてエレクトロニカ的な浮遊感が同居するサウンドが好きなら、『Inmazes』は必聴だ。

最新ニュース:地下室のバンドが辿り着いた場所

『Inmazes』のブレイク以降、VOLAは着実にキャリアを積み上げてる。Katatoniaとのツアーを経て、2018年に2ndアルバム『Applause of a Distant Crowd』をリリース。SNS時代の人間関係の希薄さをテーマにした作品で、Dream Theater、Anathema、Monuments、Hakenといった大物とのツアーに帯同した。

2021年の3rdアルバム『Witness』は、累計2750万回以上のストリーミングを記録する大ヒットとなり、BillboardのCurrent Hard Rock Chartsでトップ20入り。Metal Hammer、Prog Magazine、Kerrangといった主要メディアから絶賛され、VOLAは「ヨーロッパで最もエキサイティングなメタルバンドの一つ」という評価を確立するに至った。あの地下室で「変拍子への共通の興味」を語り合ってた高校生たちが、10年ちょっとでBillboardチャートに載る。ハードコアのクルーが血で絆を刻む一方で、こういう静かな結束の物語もある。ジャンルは違えど、「仲間で何かを始める」という原点は驚くほど普遍的だ。

欠点:中だるみと、「Djentすぎて損してる」宿命

『Inmazes』最大の弱点は、中盤の一部楽曲がやや印象に残りにくいことだ。progarchivesのレビューも「中盤には一つ二つ忘れられがちな曲があるかもしれない」と正直に指摘してる。10曲52分という尺の中で、全曲が均等に輝いてるわけじゃない。

そしてもう一つ、皮肉な弱点がある。VOLAが登場した2015年前後は、Djentというジャンルタグが乱発され、猫も杓子も8弦ギターでパームミュートを刻んでた時代だ。VOLAの音楽性は本来、Djentの枠に収まりきらないくらい多彩なんだけど、リリース当初は「またDjentバンドか」という色眼鏡で見られがちだった。実際は、Meshuggahの重さとPorcupine Treeの叙情、Mewのエレクトロニカ的浮遊感まで飲み込んだ、かなり贅沢な混合物なのに、そのニュアンスが伝わるまでには時間がかかった。

採点:92/100

Djentのヘヴィネスと、プログレッシブロックの叙情性、そしてエレクトロニカの浮遊感。この三つが奇跡的に同居する、唯一無二のサウンド。Jens Bogrenのマスタリング、Anders Thraneの不穏で美しいアートワーク、そしてMygindの内省的な作詞。全てが、この52分間に詰まってる。中盤がもう少し粒揃いなら95超えも狙えた。でも、この「迷路っぽさ」も含めて、Inmazesというタイトルへの忠実さなんだよな。

コペンハーゲン郊外の地下室から、世界の迷路へ

『Inmazes』は、2015年のプログレッシブメタル/Djentシーンにおける隠れた金字塔。両親の家の地下室でPorcupine Treeをコピーしてた高校生たちが、10年かけて辿り着いた場所だ。Meshuggahの重さ、Porcupine Treeの叙情、そしてデンマークらしい静かな執念。全部が、この一枚に詰まってる。

BandcampやSpotifyで今でも聴けるから、深夜にヘッドホンで『Inmazes』の迷路に自ら迷い込んでみてくれ。出口はすぐには見つからないかもしれないけど、それでいい。次回もマイナー盤を掘るから、オススメあったらコメントで教えてくれ

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