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Nvidiaに挑むチップ新興2社の対照:Etchedは推論専用ASIC「Sohu」で評価額50億ドル・受注10億ドル、Tenstorrentは汎用RISC-Vで買収報道80〜100億ドルも創業者Jim Kellerが否定【2026年6月】

二本の刃

いつだったか、市場の外れで、二人の鍛冶屋の仕事を並んで見ていたことがある。一人は、一つの魚をおろすためだけの包丁を打っていた。その一本は、その仕事にかけては誰の刃も寄せつけないほどよく切れる。けれど、他のものは何も切れない。もう一人は、何にでも使える万能の刃を打ち、その鍛え方を隠さず、見物人の誰にでも教えていた。切れ味では専用の刃に一歩譲るが、台所のどんな仕事にも回せる。

この二人のことを、近ごろのAIチップのニュースで思い出した。いま、GPUで最大手のNvidiaに、二つの新しい会社が別々のやり方で挑もうとしている。Etchedと、Tenstorrentだ。

Etchedは、一つの魚だけをおろす包丁のほうに似ている。Sohuというチップは、いまのAIの主流であるTransformerという型の推論だけに絞って作られている。その一点では最大手のH100の二十倍速いと会社は言う。ただしこれは同社自身の主張で、外の誰かが確かめた数ではない。評価額は五十億ドル、契約済みの受注はすでに十億ドルあるという。それでいて、最初のラックはこの夏に出す予定で、まだ客の手には渡っていない。速さのために、Transformer以外は何も切れない刃を選んだのだ。

Tenstorrentは、万能の刃のほうだ。RISC-Vという、誰でも使える土台の上に作られていて、設計を隠さず開いている。率いるのはJim Keller、Appleでも、AMDでも、Teslaでも、Intelでも刃を鍛えてきた名工だ。製品はすでに世に出て回っている。この六月、大きな店であるQualcommが、八十億から百億ドルでこの工房ごと買い取ろうとしている、とThe Informationが報じた。噂は広がったが、月末になって、Keller本人が東京でそれを否定した。工房は自分で続ける、と。ただし、色々な相手と話してはいる、とも言い添えた。

僕は、その二つの刃を頭のなかで並べてみた。速さのために、切れる相手を一つに絞るか。それとも、どんな相手にも回せる代わりに、いちばん速い一本の座は譲るか。そして、名工の工房は、大きな店に招かれて看板を掛け替えるのか、それとも独りで火を焚き続けるのか。同じ相手に挑むのに、賭けているものがまるで違う。

どちらの刃が、これから台所の主役になるのか、僕にはまだわからない。ただ、市場で見たあの日、見物人の多くは万能の刃のまわりに集まり、料理人の何人かは、あの一本の専用の包丁を静かに買っていった。次にこの二つの名前を聞くとき、どちらの火がまだ燃えているか、たしかめてみようと思う。

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