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「置いていかないで」が、「ママはもう手を振らないで」になった朝|子育てエッセイ


幼稚園の園庭を、息子がひとりで歩いている。
お弁当が入ったバッグを肩にかけ、絵本と大きな水筒が入った手提げバッグを持って。よいしょ、よいしょと一歩ずつ。




年少になって、変わったこと。
園門から自分の組のお部屋まで、ひとりで歩いて行かないといけなくなったこと。

これは年々少から年少になった子どもたちの初めての試練だ。

大声で泣きながら。何度も後ろを振り返りながら。
時には途中で走って戻ってきてしまう子もいる。

一生懸命歩いていく、お友達や息子の姿を見ていると胸がいっぱいになる。
子どもが生まれてから「となりのトトロ」を見て、メイちゃんが七国山病院へ向かうシーンでうるっときた、あの感じに似ている気がする。
メイちゃんみたいに、お母さんのために何かしようとしているわけじゃないけれど。




GWが明けたある朝、息子がわたしの目を見てはっきりと言った。

「ママはお別れの時、手を振らないで。すぐ帰って。」
その言葉に戸惑いながらも、わたしはその日から手を振らなくなった。


園門の前で「それじゃあ、いってらっしゃい」と声をかける。
わたしを見上げ、無言で手を広げる息子に合わせ、しゃがんでハグをする。「いってきます」と手を振って、息子は歩き出す。


その後、息子がこちらを振り返ることはない。


園庭の向こう側で、大きく手を振る先生をまっすぐ見つめて、
よいしょ、よいしょと息子は進む。

そして部屋の前に到着すると、下駄箱の前に座り込み、ぼーっと園庭を眺めるのだ。




幼稚園の塀の陰では、たくさんのお母さんが我が子を見守っている。

「それじゃあ、また後でねー。」
そう言って、ひとり、またひとりと長い列が少しずつばらけていく中、
わたしはいつも塀に張り付いて、最後まで離れられずにいる。


最後に来たお友達がお部屋に入っていって、とうとう息子ひとりになった。
先生に何か声をかけられて、やっと息子は立ち上がり、靴を脱いで部屋に入って行く。

そうしてやっとわたしも、小さなため息と一緒に、塀からベリっと体を引き剥がして帰路につく。
いつの間にか、周りには誰もいない。



「置いていかないでー!」と泣かれていたあの日々は終わりを告げた。
でもきっとまだ、息子の中でその気持ちはあるのだと思う。

そして今、置いてけぼりになったわたしもまた、
「手を振らないで。すぐに帰って。」という言葉の重みを感じている。




▷「置いていかないでー!」と言われていた頃の話


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最後まで読んでくださり、
ありがとうございました🌱


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