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第12章:ブラッククリニックで得た唯一の光明

ある日、疲れ果てて帰宅した私は、YouTubeをぼーっと眺めていた。

そのとき目に飛び込んできたのが、一本の動画だった。
「資産1000万円ないと、下りエスカレーターを逆走して登ってるようなもん。でも1000万円超えると、今度は登りエスカレーターに乗れる。資産は勝手に増えていく。」

──そう語っていたのは、当時はまだマイナーだった投資系YouTuberの なすびさん。顔出しはしておらず、淡々とした口調で語るスタイルだったが、その言葉の一つひとつが、なぜかやけに刺さった。

動画の内容は「年収300万円台だった人が、FIRE(早期リタイア)を目指して実践してきたこと」についてだった。

私は思った。「そうか、逃げるにはこれしかない」と。

ブラッククリニックから抜け出す方法は、力尽きて辞めることじゃない。
“経済的余裕”を持ったうえで、自分の意思で場所を選べる力を持つこと。
つまり、完全リタイアではなく、働き方を選べる“サイドFIRE”を目指すという選択肢だ。

それから私は、持っていた投資信託を見直した。
楽天VTから、手数料の安いeMAXIS SlimシリーズのS&P500に積立先を変更。
オルカン(全世界株式)は結局、米国株が6割以上を占めている。
だったら最初からS&P500に全振りした方がリターンが最大化されると考えるようになったのだ。そして、高配当株や個別株にも興味を持ち、少しずつ勉強を始めた。

一方で、ブラッククリニックの院長も、実は投資好きだった。
株、不動産、太陽光発電……金儲けの話になると饒舌になるその姿を見て、「あれはあれで参考になるかも」と思い始めた。
要は、自分のような凡人でも、知識と行動次第で何とかなるかもしれないという希望が見えたのだ。

そこから節税についても学び始めた。
iDeCo、ふるさと納税、確定申告のやり方──
調べれば調べるほど、自分が何も知らずに損ばかりしていたことを痛感した。

ブラックな環境にいたからこそ、出会えた情報と覚悟。
あのときなすびさんの動画を見ていなければ、今の私はなかったかもしれない。

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