黒白のソックス
学生の頃の通学路に葬儀屋があって、そこではソックスという名のネコが飼われていた。足だけ靴下履いたみたいに白いからソックスだ。
室内の机の脚からリードが伸びていて、当猫の気分によって外玄関で人間を眺めたり、室内のショーケースの上で寝てたり、または姿は見えないけどリードが揺れてるのが見えたりした。
特別愛嬌のない顔で気性も荒くダミ声だったが、私はどんなネコでも好きなので下校の際にはしょっちゅう眺めていた。
ソックスを眺めながら、「看板猫って言葉があるけど葬儀屋の場合は縁起でもないな」なんて考えていた。
社会人になって久しぶりに実家に帰ると、あの葬儀屋にソックスがいなくなっていることに気がついた。私は傍にいた母に尋ねた。
「誰かが勝手にリードを外して逃がしちゃって、それから見つかってないんだって。店主さんすごい落ち込んでたらしいよ」
ソックスは数年経った今も見つかっていない。高齢のネコだったし野良になったとしたらもう生きてはいないだろう。
しかし、今でも葬儀屋の前を通りかかる度にソックスを探してしまうのだった。
この記事は雑談アドベントカレンダー2023参加作品です
