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杜甫の漢詩3篇 『春望』、『石壕吏』、『登岳陽楼』を唄う



『春望』の書き下し文

国破れて山河在り
城春にして草木深し
時に感じては花にも涙を濺(そそ)ぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
烽火(ほうか)三月(さんげつ)に連なり
家書(かしょ)万金(ばんきん)に抵(あた)る
白頭掻(はくとうか)けば更に短く
渾(すべ)て簪(しん)に勝(た)へざらんと欲す
『春望』の現代語訳

我が朝廷は国家が破壊されてしまったというのに山河は今もここにある。
長安の町は春を迎えたけれど草木だけが勢いよく生い茂っている。
世の移り変わりに心痛み、花を見ても涙が流れる。
家族との別れを思って鳥のさえずりにもびくびくしてしまう。
いくさの烽火(のろし)は三か月続き
家からの手紙は万金に値する
白くなった頭を掻けばいっそう短くなり
かぶり物の簪(かんざし)をさすこともできない。



『石壕吏』の書き下し文

暮に石壕の邨(てい)に投(とお)ず
吏(り)有り夜人(やじん)を捉う
老翁(ろうおう)かきをこえて走り
老婦門をいでて看る
吏の呼ぶこといつに何ぞ怒れる
婦のなくこと一に何ぞ苦しき
婦のすすんでしを致すを聴くに
さんだんぎょうじょうにまもる
いちだん書を附して至る
にだん新たに戦死すと
存する者はすばらく生をぬすみ
死せる者はとこしへにやみぬ
しつちゅう更に人無く
ただにゅうかの孫有るのみ
孫に母の未だ去らざる有るも
しゅつにゅうにかんくん無し
ろろう力衰(ちからおとろえ)へたりといえども
請(こ)ふ吏(り)に従つて夜きせん
急にかようのえきに応ぜば
なほしんすいに備うるを得(え)ん
夜久(よるひさ)しうしてごせい絶え
泣いてゆうえつするを聞くが如し
天明前途(てんめいぜんと)に登り
独り老翁(ろうおう)と別る
『石壕吏』の現代語訳
暮に石壕の村で宿をとった
夜役人が兵隊にしようと人をつかまえにきた
宿の老主人は垣根を越えて逃げていった
宿の老女は玄関まで出ていった
役人が怒って怒鳴る
老女はただ泣きくれる
彼女は前に進み出てあいさつを述べる
息子三人兵隊として鄴城で守りについておりました
そのうちの一人が手紙を寄こしました
それによると息子二人は戦死したとのことです
残された者はなんとか生きていますが
死んだ者はもう帰ってはきません
我が家にはこれ以上兵に出す人間はおらず
まだお乳を飲んでいる孫がいるばかり
孫の母親はまだこの家におりますが
外に出ようにもまともなスカートもないありさま
この私め老いて力は衰えましたが
お役人様についてこれからお役所に行かせてください
急いで河陽で仕事につくなら
朝食の支度ぐらいはできるでしょう
夜が更け話し声も絶えた
むせび泣く声が聞こえてきた気がする
夜が明け旅を急ごうと
宿の主の老人ただ一人に別れを告げる



『登岳陽楼』の書き下し文

昔聞く洞庭の水
今登る岳陽楼
呉楚東南にさけ
けんこん日夜浮ぶ
しんぽう一字無く
老病こしゅう有り
じゅうばかんざんの北
のきによればていし流る

『登岳陽楼』の現代語訳
昔から洞庭湖の眺めを耳にしていた
今その湖畔に建つ岳陽楼に登る
呉と楚、二つの国は洞庭湖で東南に分けられ
太陽と月とを昼と夜代わる代わるに湖面に浮かべる
親族友人からの手紙一通なく
老いて多病の身には舟が一隻あるのみ
関所の山なみの北は今も戦火が絶えない
岳陽楼の軒にもたれて涙を流す
壮大な風景と卑小な自分と。

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