新参者日記8─ 夢のリンクコーデは、「大きすぎる」、「小さすぎる」事件
父の野望・その③ 新参者とリンクコーデをキメて街を歩く
これについて、父はなかなか本気である。
新参者がやって来た翌日のこと。
仕事帰りに寄り道をしたのだろう、
父はかわいらしい紙袋をぶら下げて帰ってきた。
それを見た妹は、
風のように近寄る。
「なになに?!」
「えー、なんだろう?」
「開けてもいい?」
言いながら、もう手は袋の中へ。
「……私、こんなに小さくないよ?」
そんなの当然である。
中身は新参者の洋服だ。
かわいいのか、かっこいいのか、何と評価すればいいのか分からず、
無難な感想すら浮かばない。
「なぁんだ。」
いつもなら袋を放置して自室へ消える妹だが、
「新参者へのプレゼント」
となれば別。
急にやる気がみなぎる。
「着せてみていい?」
そう言いながら、
すでに商品タグを外している。
父は満足げにうなずきつつ、
そそくさと風呂場へ消えた。
その気配を察したのか、
新参者はお気に入りの“かまくら”へ避難。
自立する毛布でできた小さな家で、新参者が最も落ち着く場所だ。
時々、妹も頭を突っ込んで瞑想しているが、
そのたびに新参者は「返せ!」と言わんばかりに妹を掘り返している。
さて、
妹は洋服を手に、
新参者をかまくらから引っ張り出した。
「はーい、お洋服着ましょうね〜」
犬服には色々なタイプがある。
頭から被るもの、お腹側で留めるもの、背中側で留めるもの……。
この“頭から被るタイプ”は難易度が高い。
頭はなんとか通せても、
前脚を折りたたんで腕に通すという動作がとにかく難しい。
これは飼い主との信頼関係あってこその技。
妹と新参者の間には、まだそこまでの絆は生まれていない。
案の定、
新参者は拒否を続け、
格闘は10分に及んだ。
なんとか着せ終えた――と思ったら。
「あれ……大きすぎる?」
だぼだぼで歩きづらそう。
母が
「これはもうしばらくしまっておきましょうね」
と静かに結論を出す。
まだ父は風呂の中だ。
「じゃあ、次のいくね!」
2着目はお腹側でボタンを留めるタイプ。
先ほどより簡単なはずだった。
一人が新参者を持ち上げれば、
さっと着せられる
…はずが。
「しまらない。」
パツパツどころか、あと2センチは足りない。
これはもはや“ちゃんちゃんこ”。
母が再び言う。
「これもしまっておきましょう。」
そこへ、風呂上がりの父が登場。
「どうだった?よかっただろう!」
妹は明るく言う。
「ちょっと大きすぎたから、しばらくは置いておくね!」
「おお、そうか。楽しみだなぁ。」
母が言う。
「次はみんなで選びたいわね。」
父も乗ってくる。
「そうだな。大きいペットショップに行ってみようか!」
服は棚上げされたけれど、
新参者が来てから、
家族で話すこと、集まること、出かけること
ずいぶん増えた。
子は鎹(かすがい)というけれど、
本当にそうだなと思う。
新参者が来て23日目。
――この時、体重5.7kg。
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