【裏パテック杯出展作】悪い意味で良い人
この度、私の捨身の自虐エッセイ
「人生の後悔を語ってみる 恋愛編」
が、パテック様の主催する
「パテック杯」にて、57作品の美しく紡がれた作品の中から、決選作品8作の中に選ばれました。
また、同時にパテック杯に出展された作品に関する内容を語る場として。
「裏パテック杯」が開催されるとのこと。
ちなみに、私は決選投票では
wink.さんの
「#77(番外編)彼の名前は思い出せないけれど」
こちらに投票させて頂きました。
理由は、最も感情移入をさせられたからです。
そして、若かりし頃に抱いていた気持ちが蘇りました。
こちらの作品に出てくるような、調子に乗ったイキった男。
何故、こんな奴に限ってモテるんだろう?
と、いう不条理な記憶が、「悪い意味で良い人」の称号を頂いた私には、深く深く刺さりました。
そして、心の支えを見つけて自分を取り戻していく姿が、本当に感動的で、思わず拍手を贈らざるを得ませんでした。
さて、本題はここからです。
以下書き物を、「裏パテック杯」に出展させて頂きたいと思います。
「人生の後悔を語ってみる 恋愛編」
の中に登場する、「悪い意味で良い人」
と私を叱ってくれた人。
その言葉に至るまでを、
平成トレンディドラマ風の脚本形式で、お届けいたします。
題して
「実録(うろ覚え)悪い意味で良い人と呼ばれて」
◽️とあるレストラン、円卓に男性Nと女性Sが向き合って座っている。
Nは、重苦しい固い表情
Sは、貼り付けたような笑顔で、無理に明るく振る舞っている
語り「時は20世紀最後の年、ここに、ひとつの決断を迫られる、二人の男女がいました。」
S「久しぶりだね」
N「うん、2ヶ月くらいかな?前に会ったの、バレンタインだったし」
S「(視線落として)そうだったね、元気だった?
N「うん、君も元気そうで良かった」
飲みものが運ばれてきて、グラスを合わせる
しばし沈黙。
S「(意を決して)あの留守電の返事...聞きたい?...よね」
N「もちろん。だけど...」
N「(溜め息混じりに)良い返事じゃないことは、わかるよ」
N「その様子を見てたら」
一度テーブルに顔をついて、Nを見上げるS
S「ぜんぜん気づかなかったから」
S「いつも、踏み込んでこようとしなかったから」
S「あなたは、私に興味ないかと思ってたから」
S「お付き合い...してる人が、できたの」
天を仰ぐN、グラスのビールを飲み干す。
語り「なんと言うことでしょう。惚れた腫れたは世の常ですが、この瞬間はいつも切ないものです」
N「だと、思ったよ」
心配げにNを見るS
N「電話もなかなか繋がらなくなったし、誘って断る時の声も弾んでたし」
テーブルに置いた指先を見つめるN
S「なんで?」
N「何が?」
S「知り合って半年だよ。なんでもっと早く言ってくれなかったの」
N「(グラスにビールを注ぎながら)自信がなかったんだ」
S「自信?」
N「うん、君は、ちゃんと自分の将来の事を考えて、自分のやりたい事のために、仕事も辞めて、資格も取って、努力して、今はそこで頑張ってるじゃないか」
S「それは、あなたが後押ししてくれたからで...」
N「それに引き換え、俺は、ちゃらんぽらんで、仕事もロクにできないし」
S「だけどさ、コンクールで最終選考に残ったんでしょう?あなたの脚本」
N「(窓の外のネオンを見る)あれだって、まだ入賞したわけじゃない。でも、あれを書けたのも、最近仕事にも身が入って、そこそこ契約も取れるようになってさ」
N「全部、おかげ様だよ。ありがとう」
S「あなたは、自分が思ってるより、ずっとちゃんとしてるよ」
目を閉じて、深い溜め息をこぼすS
S「...なんか、悔しいな」
N「(苦笑)なんで?君には、決まった人がいるんだろう?」
N「...気にする必要ないよ、俺なんか」
S「あなた、良く言うよね『俺なんか』って」
N「実際そうだからさ」
S「あなたは、優しいし、色々知ってるし」
S「ちゃんと伝えれば、断る人いないよ」
N「でも、11人目だよ、君で」
S「なんのこと?」
N「フラれるの」
S「あれ、大袈裟に言ってると思ってたけど、なんか、わかる」
N「まあ、人に好かれるタイプじゃないから」
S「そう思ってる限りは、無理だろうね」
店内にまた、沈黙が訪れる。
重い空気に、Sが口を開く。
S「あのさ、今夜、これから」
じっとSを見つめるN
S「もう、最後だし、色々連れて行ってもらって楽しかったし、その、最後までは言わせないで」
Nは目を見開いて、Sの顔を見る。
Sは、俯きながらも、チラチラとNの様子を伺う。
N(聖女だ...いや、女神か?この人)
N(ずっと夢見ていた瞬間が......)
語り「しかし、男の米粒のようなプライドが、あるスイッチを押してしまいました」
N(だけど、これを受けたら、どうなる?)
N(自分の性格上、きっと別の後悔をする)
語り「男は気持ちだけは、え〜と、誰にしよう...三上博史になります」
N(どうしたって、これで最後になる......)
N(それは、変わらない)
語り「この男の当時の悪癖です」
N(どっちにしろ、後悔するなら、俺は.....!)
語り「自己陶酔モード発動」
♪aikoカブトムシのイントロが流れる
N「その申し出はありがたいけれど、それはだめだ」
S「え?」
♪悩んでる体が〜
N「君には、もう決まった人がいるんだろう?申し訳ないよ。」
N「君にも、その人にも」
S「それは、貴方が気にすることじゃないよ」
N「同じ人を好きになった相手だ、その人に、嫌な思いはさせたくない」
S「なんで?」
N「何より、君に、そんな自分を安売りするような真似をして欲しくない」
また、天を仰ぐN
♪わたしもどんどん年老いて〜
S「良い人だ、悪い意味で」
S「(口調がきつくなる)あなたは、それじゃあこのままだよ。ずっと良い人のまま」
S「何人と出会って、何回恋しても、男の人が、ただの良い人になったらおしまいなんだからね」
N「うん(グラスのビールを飲み干す)ありがとう」
♪白馬の鬣が揺れる〜
店を出て向き合う二人
S「じゃあ、ここで」
N「待って、駅まで送るよ」
S「いいよ」
N「送らせて、ください」
♪少し背の高い〜
S「(噛み締めるように)...はい」
語り「駅に続く道を歩く二人、男の脳裏に彼女との思い出が去来します」
映画を見終わったあと、ミラーに巻かれた黄色い札。
交番で切符を切られてる間にみた、ベンチに座る退屈そうな姿。
警察「彼女待ってるから、早く行ってやんな」
N「まだ、違うんですよ。なって、くれますかね?」
警察「あちゃあ、これはポイントさげたね」
水族館、イルカショーに夢中で、満面の笑みでNに顔を向けるS
S「かわい〜」
N(あんたもな)
千葉側からアクアラインの、海中トンネルの入り口を、真正面にした時。
S「(テンション高く)ねえ、見て見て!凄いよ」
N「(ハンドルを握り、目を泳がせて)いや、危ないから」
Nの肩をバシバシ叩くS
S「だって本当に凄いから、ほら」
N「(にやけて)だから、危ないって!」
語り「楽しい思い出も、露と消えてしまう瞬間が訪れます」
地下鉄の改札前で、向き合うふたり
♪生涯
N「今まで、ありがとう、元気でね」
S「うん、あなたも、遠慮しないで、何かあったら電話...してね」
♪忘れる
改札をくぐり、ホームへと降りて行く
Sの背中に向かって呟くN
N「.....さようなら」
♪ことはないでしょう
語り「それから、5年後のことです」
駅前の雑踏の中、携帯を耳に当てるN
N「もしもし?あの...わかるかな?」
S「N...くん?」
N「(微笑む)覚えていてくれたんだ、嬉しいな」
S「どうしたの?久しぶり」
N「実は、東京離れて、故郷に帰る事になってさ」
S「そうなんだ」
N「だから、最後に会いたいな、なんて、無理だよね」
S「うん、あ、ちょっと待ってね」
受話器の向こうから、赤ん坊の泣き声。
N「赤ちゃん、いるんだ。おめでとう!それじゃあ無理だね」
S「ごめんね、私も東京にいないんだ」
N「そうなの!?」
S「うん、北海道」
時は三月
N「それは、また、なまら寒いっしょ?」
S「うん、なまら寒いよ」
N「幸せなんだね」
S「まあね」
N「俺、こっちに12年居たけど、君との思い出が一番楽しかったよ。ありがとう」
S「こっちこそ、でも、そっか(少し寂しげに)
帰っちゃうんだ......」
N「君がずっと幸せでありますように」
S「あなたも、頑張ってね」
N(電話、切りたくねー)
N「それじゃ、元気で」
♪生涯 忘れる ことはないでしょう
語り「こうして、男のほろ苦い思い出は、幕を下ろすのでした」
語り「この時、男はまだ知りません。このほんの数ヶ月後、生涯を共にする伴侶に出会い」
「安らぎと幸福に満ち溢れた毎日を、送って行くことを」
おしまい
なんだか......
めちゃくちゃ恥ずかしいな!
こんな思いをしたからには!
裏パテック杯
取りに行きます!
応援よろしくお願いします。
あれ?13人じゃなかったっけ?
ばれましたか、その後5年間の間にお二人。
あはは💦
尚、このエピソードを元に書いた私の物語
note創作大賞2026「恋愛小説部門」
に挑戦いたします。
万が一受賞して、妻にバレたらうちの家庭は、どうなってしまうのか?
ヒヤヒヤしながら、遠くにいるSさんにも、ご覧になって頂けるかも、とか
この場をお借りして、サクッと宣伝して。
恐縮です。
ではでは
