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うぇい?

 私、海外は二度しか行ったことがありません。
それも、もう15年くらい前になるかな?

 行き先はいずれも。

 中華人民共和国です。

 仕事の組合の旅行でした。

 何と言うか、とんでもない経験でした。
 常識がまったく通用しない。

 まず、飛行機。
 向こうの航空会社で、隣の仲間が座ったら。

 リクライニングが壊れて戻らない。

 さらに離陸時、彼の椅子の背を。
 険しい顔で
「やー、やー、やー」
 とか言いながら、
 多分もどしなさいよ、みたいな意味なんでしょうね。
 バシバシ叩くCAさん。
 なんと理不尽な……

 さらに、着陸寸前、飛行機が高度を下げていき始めると、隣の方。
 おもむろに、携帯を取り出して。
 耳にあてがい

「うぇい?」

 まじか?

 そしたらそこらじゅうから

「うぇい?」「うぇい?」「うぇい?」

 嘘だろ?

 まったく信じられない光景でした。
 そして、なんだかんだで上海に到着したら。
 手荷物を積み込む年期の入った、コンテナ車がやってきます。

 係員が、手荷物を積み込む姿を、機内から見ていた私。
 手荷物が下ろされて、係員が手に取ると、目を疑いました。 

 ぶん!

 迷いなく全力投球です。
 トランクも、バッグも、ZOJIRUSHIとか、Panasonicとか書いてるダンボールも。
 それを見て爆笑する中国の皆さん。

 もうね、大パニックです。
 で、飛行機を降りたら乗り継ぎ便まで、集団ダッシュ。
 成都に到着したら、今度は荷物が流れてこない。
 居合わせた、日本の駐在員の方が問い合わせたら、今いる乗り継いだ人用のレーンじゃないレーンを流れてるとか。
 その方、苦笑いでおっしゃいました。

 いつものことです

 そして、現地のガイドさんと合流。
 仕事ができそうな女性と、メガネがよく似合う若い子。

 バスの車中の自己紹介で、若い子

「ワタシのコトは、ランちゃんて呼んでくだサイ」

 なんでランちゃん?

「名探偵コナン知ってますカ?」  

 あ〜なるほど。
 私たちは、意志が統一されていたはずです。

(いや、アニメのキャラで言うなら、アラレちゃんだよ)

 高速道路を走ります。
 路側帯で、外れたバンパーを取り付けようとしている、おじさんが見えた気がしました。

 両手で、小さな子供の手をとって、左右をキョロキョロしているお母さんも、見えた気がします。

 気のせいだよね、きっと。

 昼食に、本場四川麻婆。
 これは美味しかった。
 別卓では、多分パンダを見に来てたのかな?
 ガイドさんに別れの感謝の手紙を読む、シルバーな日本人のグループ。
 何となく、微笑ましい光景でしたね。 

 三国志の、蜀の英雄を祀った武侯祠を見学し、なかなか豪華なホテル、五つ星の大飯店です。

 私はまずATMのような機械で、換金しました。

 お札、ヨレヨレのボロボロじゃねえか

 ポケットに入れて、うっかり洗濯した千円札の方が綺麗なんじゃないか?
 というくらいのビジュアルです。

(本当に、使えるの?これ)

 さらに、実にラグジュアリーな格式の高いエレベーター。
 到着して開いた扉から現れたのは、くわえ煙草で煙を燻らした男性。
 下り際に

 ぺっ!

 と唾を吐いて行きました。
 もうね、私たち一同ポカンです。

 一日目の夜はこうして更けて行きました。

 二日目の行き先は峨眉山。
 霊験あらたかな場所だそうです。
 麓で登山用の専属バスに乗り換えです。
 これが、地獄のドライブの始まりでした。

 ブォン!

 エンジンが唸ります。
 猛スピードです。頭文字Dです。
 しかも、ギアを5速に入れたまま、カーブをフットブレーキだけで減速するもんだから、体は前後左右に大きく揺れます。

 パー、パー、パー 

 クラクションを鳴らしながら、低速車を次々と追い越して行くバス。
 富士山並みの標高です。
 あたりは濃霧、いや、雲の中。
 前なんて見えません。

 アラレちゃん、いやいやランちゃんが笑顔で言います。

「ダイジョブですヨ、運転下手な運転手だったラ」

「もう、このヨにいませン」

 う〜ん、なんだろう。
 この絶妙に不安になる励まし。

 カルチャーショックは続きます。
 途中トイレ休憩に立ち寄った、茶店の駐車場、私達はもうクタクタのフラフラ。

 すると、運転手がホースを手に取ります。
 何をするのかな?
 様子を伺っていた私は、また目を疑いました。

 ジュー、モクモクモク 

 タイヤに水をかけると、おびただしい蒸気が上がります。

「アラ...ランちゃん、あれ何?」 

「あれしないト、ブレーキが焼けテ、効かなくなるんでス」 

 なんと言うことでしょう。
 頭が真っ白になり、顔を上げると、

 トタン屋根の上のパグと目が合った。

 二階もベランダもありません。
 君は何故そこに?

 雲の中、視界の悪い山道を
 バスは駆け抜ける
 そう言えば、エアコンない
 しかし、今はそんな感覚を感じる暇はない。

 なんやかんやで、無事に峨眉山頂上付近に到着。
 バスから降りて運転手を見たら、学生時代の後輩に似ている。
 そいつのあだ名と同じ、"みねじ"と名づけました。
 生涯、二度と会うことはないでしょう。
 山道に行こうとすると、別の道から、竹籠を背負った行列が、よく見ると

 籠の中には石が山積み

 上から、空の籠を背負った列が降りてくる。

 往復コース!?

 もうね、お疲れ様ですとしか言えませんよ。
 そして、彼らの作業用の道とは違う整備された登山道を上がります。

 ランちゃんは相変わらずニコニコです。

 「そうイえバ、この道オ猿さんいまス」

 私は、「中国の猿?しかも内陸の奥の方だから、あれか?孫悟空のモデルの、金色の、キンシコウ!あれか?」

 ランちゃん笑顔で指差します。

 「あそコ、イましタ!」

 そこにいた、猿の毛色、顔つき、フォルムは

 普通にニホンザル

 厳密に言うと違う種類なんだろうけど?
 古い例えですが。
 トヨタのデュエットが、ダイハツではストーリアだったり、ダイハツのテリオスが、トヨタのキャミだったり。

 住んでる場所が違うだけの、同じ種族じゃないのか? 

 くらいそのまんま。

 私、ニホンザル苦手なんです。と、言うのも私のイメージする、あくまでも個人的なイメージの猿は。

 まるで世紀末、下剋上を繰り返す仁義なき集団、小豆島銚子渓の個体群。

 愛想は良いが、バッグに財布、渓流釣りの餌までも、隙を見せたら奪いに来る。
 手癖の悪い愛媛県、滑床渓谷の個体群。

 さて、ここの猿は?...あれ?

 実に大人しい

 国が変わると違うんだな?しみじみ思いました。

 途中、トイレに立ち寄ります。
 男性用の小のところ、溝です。
 まあ、自分らも子供の頃は公園のトイレそうだったし、大の方はどんな便器かな?
 興味本意で、覗いてみたら

 溝。タイルを貼った溝。


 仕切りはあるが、溝は三つの個室で全て繋がり、一番左の部屋には、溝に流す用の蛇口が

 これ、後ろの部屋にいたら、前から流れてくるのか?途中で真下で止まったりするんじゃないのか?

 この国で、公衆トイレは使うまいと固く決意しました。
 登山道の途中、屋台があって、ガス炊飯器に満載の卵がありました?
 ゆで卵かな?ピータンかな?
 その時、何かで見た"バロット"でしたっけ?
 孵化直前のヒヨコがでてくるあれ、が思い浮かびました。
 今までの傾向として、あり得ない話じゃない。
 そこまでチャレンジャーにはなれない。
 断念しました。

 一時間半ほど山を登ると、昼食の食堂に到着。
 日本の方が多くて、日本語がそこら中から聞こえて来ます。
 ある上品なマダムと、よくある進路を譲ったら、同じ方に避けたみたいなことになり。

 「ごめんなさい」とマダム。
 「いえ、いえ、こちらこそ」と私。

 すると顔を上げたマダム。

 「日本の方でらしたの?」

 その時のマダムの眼差し、忘れられません。

 一週間ぶりに帰って来た飼い猫を見るような眼差し

 中国の旅、相当お疲れのご様子。
 わかります。

 昼食のメニューほとんど忘れたけど、トンポーローは美味しかった。
 あと、チョウザメの丸揚げの餡掛けをみんなでつつきました。
 ご存知の方も多いでしょうが、中国のお箸って、先が尖ってない。
 ここのお箸はすぼんですらない。
 だから

 魚の身が掴み辛い。

 なんやかんやで、参拝もできた。
 いつも雲に隠れていると言う、巨大な観音様のお姿も拝観させて頂きました。

 そして帰りのバス乗り場へ、自分たちの乗るバスを待っている間、待機していた運転手が、他のバスの運転席にいる運転手に、声をかけていました。
 それが私にはこう聞こえました。

「サキイッタンチャウンカイ」 

 疲れてたのか、空耳アワーなのか、つい吹き出してしまいます。
 そうこうしているうちに、私たちの乗るバスが到着。
 扉が開きます。
 それまでの人生で、あれほど絶望した出来事があっただろうか?
 運転席でハンドルを握るのは...

 みねじ

 でした。
 地獄のドライブその2のスタートです。
 唸るエンジン
 轟くクラクション
 数メートル先、対向車のヘッドライトすら見えない視界の雲の中で、バスに追い越される低速車。
 5速マニュアルでフットブレーキしかない急加速、急減速の連続。

 そして、往路では感じなかった、ある感覚が芽生えます。

 き、気持ちが悪いじゃないか

 恐怖も慣れたんでしょうね、私の三半規管が目覚めたようです。

 また、同じ茶店で休憩。
 ブレーキから立ち昇る蒸気も、普通に眺めていました。
 煙草を燻らしながら、視線を上げるとやはりいる。パグ
 時々首を傾げるから、ちゃんと生きてる。
 これは躾の一環か?それか、リードがいらないとかか?
 じーっと見つめ合っていると、なんだか声が聞こえて来る気がします。

 申し訳ありませんが、ここから下ろしていただけませんか?

 みたいな。

 バスは麓の駐車場に到着。
 なんとか無事に、生きて帰って
これました。
 しかし、みねじの強烈な運転で、三半規管を猛烈に刺激された私たち。

 真っ直ぐに歩けません

 なんとかバスに辿り着き、普通の運転がどれだけ心地よいか。
 しかし渋滞が凄い。
 それもそうか、たとえば進路を変えるときの交差点。

 2車線に4台並んでいる

 もう、少々のことは驚きませんよ、私は
 てな訳で、翡翠博物館に到着です。
 こちら、翡翠の採掘や、加工方法を映像で紹介、ちゃんと日本人の方がナレーションしている感じでした。
 それから展示物を見学し、最後のブース。
 嫌な予感がします。
 売店です。
 なんと言うか、販売スタッフみんな。

 口元以外笑っていない

 それどころか、その爛々と輝く眼差しは、瞬きせずに見据えられています。

 もはや、売る気マンマン

 もうね、ちょっと見てるとすかさずやって来ては?
 「それ、イイですヨ」
 とか
 「コレ、欲しいですカ」
 とか

 いきなり凄い圧です。
 とあるブースで、猛然とネックレスを勧められます。
 「コレ、いいですヨ」
 「いくらですか?」
 「20マンえんでス」
 「別のにします」

 離れようとしたら、肩を掴まれて。
 「でしたラ、10マンえんで」

 いきなり半額!?

「要りませんて」
「ジャあ、5マン円デ」

 どれだけふっかけてたんだよ?

「だから、要らないって」
「じゃあ、2マン円ならどうですカ?」
 え?やすぅ〜い!

 夢グループもビックリだなオイ!

 まあ、当時はまだ有名ではなかったけど
 引用させていただきました。
 結局妻への土産に2万円で購入。

 色々見ていると、漢方薬のコーナーもありました。
 高血圧の気のある、母親に何かないかな?
 と、見ていると、ありました。
 話に聞く

 冬虫夏草

 何に効くかはわかりません。
 しかし、セミの幼虫から生えて来るきのこ、かなりの生命力のはず。
 すごい効能があることでしょう。
 ガイドリーダーさんに聞いてみると。
 急に鼻息荒くして。

「男のヒトが元気になりまス」

 ああ、そう言うやつね。
 ふつうに血圧を下げる、煎じて飲む薬を買いました。

 なかなか面白かった、翡翠博物館。
 しかし、明後日の上海にもあるんだよな。

 シルク博物館

 一路、ホテルに戻り夕食です。
 しかし、何かの手違いで、時間通りに私たちの食事が準備されていません。

 そこで、我らがランちゃん。
 忙しなく働くウェイトレスさんを呼び止めるとウェイトレスさんが、おもむろに振り返り、眉を吊り上げ、口をへの字に曲げて。

 ハァーーー!?

 なんと言うか、叫ぶウェイトレス。
 ランちゃんも、笑顔が消えて応戦。
 なんと言う緊張感。
 戻ってきたランちゃん。
 ニコッとして
 「スぐ、ジュんびしてくれまス」

 食事しましたが、青島ビール。

 常温

 ランちゃんに聞いたら、当時の中国。
 冷やすと体に悪い。
 と言う風潮があったみたいです。

 部屋に戻り、中国のテレビ番組見てみました。
 まずは視聴者参加バラエティみたいなやつ。
 メガネの男性が、ステージでインタビューされています。

 画面切り替わって、斜面みたいな場所で、お茶の葉っぱを世話しているその男性。
 なるほど、この人のお仕事ね。

 ステージに戻り、司会者に囃し立てられて意を決する男性が駆け出します。
 すると、そこには横一列に並ぶ女性たち。
 その中にいる一人の前に立ち、手を差し出します。

 ねるとん?

 まあ、そう言うお見合い系のバラエティだったみたいですね。

 他のチャンネルは、ドラマのようです。
 旧日本兵が、日本刀を片手で振り回し、いわゆるチャンバラをしていました。
 体を回転させ、足を翻し

 もうね、剣舞です。

 それを煙草の煙を静かに吐き出しながら、なんとも言えない、深みのある不敵な笑みを浮かべて見つめるベテラン俳優のアップ
 日本で言うところの、役所広司さんみたいな感じです。

 言葉は、わからないけど、つい引き込まれてしまいました。
 そして、勝負あり。
 勝った日本兵役の中国の俳優さんが、高らかに叫びます。

「どうダ!これが剣道ダ!」

 絶対違う!断じて否!
 そんなこんなで二日目の夜も更けて行きました。

 三日目は成都空港へ
 なんか

 兵隊さんがいっぱいいる

 ミリタリーな衣装に身を包んだ兵士達。
 肩からは、機関銃をぶら下げていて、まさに厳戒態勢。

 そして、到着ロビーから伸びる真っ赤なカーペット。
 誰か要人が来るのかな?
 ランちゃんに聞いてみました。
 相変わらず、ニコニコで

「プーチン大統領ガ、パンダちゃんミにきまス」

 うん、それは大変だね。
 と言うことで、ガイドリーダーさんとアラレちゃんじゃなくて、ランちゃんとはここで再見。
 一路上海へ。
 一回「ほよよ」って言ってもらっても良かったな。

 ランちゃん達に手を振られ、機上の人になった私たち。
 早速また、洗礼を浴びました。
 私たち、ツアーですよ?
 まとめて申し込みましたよ?
 なのに

 座席バラバラ

 そんなことある?
 まあ、いいかと寛いでいたら。
 CAさんが無愛想に尋ねます。
 ドリンクを。
 ここでランちゃん直伝の、中国語です。

 「か、かーふぃー」
 コーヒーゲットです。
 ずずっ。

 「!」

 焦げてない?

 前日から、サイフォンに放置したコーヒーの風味。
 まあ、次から次へと飽きないこと。
 で、ふと隣に目を向けると、中国ビジネスマンがノートPCでドラマ見てる。
 昨夜の「コれが、剣道ダ」がトラウマになりつつ、覗くと、見覚えのある白髪の俳優さん。

 宇津井健さんじゃないか

 そして、次の場面に出てくる女優さんは、

 長澤まさみさんじゃないか

 中国でも、日本のドラマは人気なのね。

 斜め前に座っている仲間が、PSPで、吉田類さんの酒場放浪記を見ていたら。
 隣の女性がかぶりつき。

 もはやカップル

 なんやかんやで、上海到着。
 当たり前の

 「うぇい?」「うぇい?」「うぇい?」

 コンテナに叩きつけられる私のトランク。
 もう、麻痺してるんでしょう。

 なんの感情も湧きません。

 ただ、グループの中でただ一人、添乗してくれた代理店の社長。

 実に機嫌が悪い

 で、上海のガイドさん。
 うさんくさ.....したたかな感じの、ベテラン男性。
 バスに乗るなり。
 「ちゅーコクざツきタン、ドうですカ」
 「イまなラ1マンえんデよヤクとれますヨ」

 社長のこめかみがぴきりと音を立てます。
 「夕食など、予約がありますので」

 ガイドさん聞いちゃいない。
 「ジャあへんめンはとうですカ?カおがかわっテ、楽しいれすヨ」

 ぴきぴきぴきぴき

 社長限界寸前です
 ひとまず、お昼ですが、ホテルに荷物を置けることに。
 エレベーターに乗った瞬間叩きつけられる社長の荷物。

「何が雑技団やあほんだら!!予定がある言うてるやろが、クソガイド!」

 大噴火です。
 添乗員を宥めるツアー客と言う、不思議な図式が現れました。

 私たち一行は、上海最大の市場、豫園に向かいます。
 ガイドさん
 「ミなさン、さいフはなるべク、ミえるところにネ。りゅクはマえニつけてくらさイ」

 (ランちゃんの方が、日本語上手だったな)

 「あト、とケい、ろれくスだったら、外してくださイ」

 「うテこと、モていカれまス」

 私は、妻からの結納返しのオメガをそっと外しました。

 なんやかんやで豫園、すごい人。
 私は景徳鎮と言われた小さな硯、750元を400元で購入。

 娘用のピンクのチャイナ服を購入。
 歩いていると、客引きが、ぬいぐるみを振りながら

 「アンパンマンスキですカ?」

 とぬいぐるみをひらひら
 真面目なOくんが、それを見ていきなり

 ぶぼふ!

 と吹き出します。

 確かに、アンパンマンです、顔も、服も、マントも、だけど。

 顔の輪郭が、夢の国の首領。あのマウス

 これは欲しい!
 どっちも好きな娘は喜ぶ!
 マウス好きな妻は爆笑だろう!
 しかしながら

 確実に税関で没収される

 泣く泣く諦めました。

 そして、夕食。
 実は上海で、寿司屋を開業して成功している幼馴染がいて、その店に
 ピラミッドみたいなショッピングモール。
 隣はなんと、すき焼き今半

 美味しかった。
 ルビーのような赤身に、北海道でしか食べられないと言う、防腐処理をしていないウニ。
 キンキンに冷えたビールと、冷酒
 最高でした。

 最後に、社長の機嫌を取るためにスナックへ
 完全にツアーのパワーバランスが崩れています。

 なかなか綺麗な所、スタッフも日本語上手。
 焼酎の水割りを頼んで、乾杯
 一口つけると、なんじゃこりゃ?薄い
 まるで

 水割りの水割りじゃないか

 薄めてやがるのか!
 許せない、これは許せない。
 酒に対する冒涜です。
 何しろ私たち。
 酒羅の国

 南国土佐からやってきた、いごっそうズ

 芋だってこんな姿になるために、焼酎になったわけじゃない。
 みんなの心が一つになります。

 なめたらいかんぜよ!

 普段ぜよは使わないけど、こう言う時便利です。
 大蔵省のHさんが頷きます。
 ここで、我らに伝わる秘技。

「返杯」

 発動です。
 ルールは簡単。
 グラスを
 空ける→渡す→空ける→返す
 これをエンドレス
 あとから出てきた、麦と芋のブレンドも火に油を注ぐだけ。

 帰りに、肩を担がれて三人くらいが退店するのとすれ違った気がします。

 こうして上海の夜は更け、明日はいよいよ帰国です。

 最終日、予定はシルク博物館でした。
 駐車場が少し離れていたので、徒歩で向かいます。
 すると、街ゆく人々に違和感が。
 おじさんたちがみんな。

 シャツの裾を捲り上げて、丸いお腹をでっぷり丸出しで歩いてる。

 ガイドさんに聞いたら。
 「フとっテるのハ、オ金もチのしルし」
 「たカら」

「モテモテでスよ」

 それは、聞き捨てならない!
 ぼよんなお腹なら、自信マンマンだ!
 しかし、ガイドさん。

 あんたは信用できない

 ランちゃんが言ったら、私思い切り捲し上げて、ペチペチ叩きながら風を切って歩くのに。

 そして、シルク博物館に到着。
 なかなかルネッサンスな建物、しかし、その前に立ちはだかる新たな壁が。

 信じられないくらい、目つきの悪い男が三人
 私たちを見つけると、立ち上がり、ゆっくりと近づいて来ます。

 不安になって、ガイドさんを見ると
 へらへらするだけ。
 社長はまたぴきぴき。

 ギラリと見開かれた、眼光鋭い目。
 浅黒い肌。
 どことなく、ゆらりとした足取り。
 三人は何かを、呟きながら。
 箱から、ゆっくりと腕時計を掲げます。

 近づいて来るに従って、言葉が聞き取れるようになりました。

 センエン...センエン...

 彼らはもう、目の前です。
 そこで、試合開始のホイッスルが鳴り響いた気がしました。

 コレ、センエン!コレモ、センエン!
 センエン!センエン!センエン!センエン!


 バッタもんの時計を掲げた男たち。
 私たちは囲まれて、尚も大合唱。

 すると、ガイドさんがへらへら宥めて。
 無事に入館。
 初めてこのガイドさんを、見直した瞬間でした。

 シルク博物館では、支配人がお出迎え。
 もっとも日本語が上手な中国の方でした。

 やはり、日本人相手の仕事をしてるだけのことはある。

 しかし

 目が笑っていない

 たとえるなら、あの芸人さん。
 タンバリンの、

 ゴンゾーさん

 演奏中の、あんな感じ。
 支配人が口を開きます。

「皆様、ヨうこソ。当すぅいるく博物館ニお立ち寄りいたダき、大変こぅおえいでス」

 しかし、なんとなく品がある。
 目は笑ってないけど。
 シルクか、カミさんにはショールかな?
 いや、ショールはトラウマが。
 (詳しくは、別記事おのろけ、いきまーす!をご参照ください)

「それでワ、皆様をすぅいるくの世界にゴあんない、する前に」
「ワたしの、くぅおれくしぃよんを、特別に、お見せいたします」


 おやおや?なんだか雲行きが怪しくなって来たぞ?

 ちょっとした、ガラスの扉が閉まったショールームのような、狭い部屋に通されました。

 綺麗な石が並べられ、一番目立つ最上段には、占い師の水晶玉の様な大きさの、虎目石の球体が鎮座しています。
 それを、淡々とした口調で、無表情で説明する支配人。

「どうですカ?うっつくしいでショ?」
「すっバラしいでショ?」


 どうでもいいから、早くしてよ

「あなたガたは、ラッキーでス」
「ワタシの一番のお気に入リですガ?」
「あなたたチとの、ゴえん、ワタシ大事にしたい」


 支配人の目は最前列のHさんをロックオン!
 Hさんから目を離さないで、続けます。

「ドうですカ?すごいぷぁわーを」
「感じませんカ?」 


 Hさん、「い、いやあ...」と冷や汗、しかし畳かける支配人。

「感じるハずでス」
「感じるでショ?」


「え、いや、まあ...ははは」

「アなた、ラッキーです」
「スっバラしいでス」


 もう、支配人の目はHさんしか見ていません。
 その右手の人差し指が、すっと立ち上がりました。

「一マン円、一マン円で、あなタのものでス」
「はかクでショ?」
「デモ、ざんねんながラ、ひとツだケ」
「他の皆さん、ゴめんなさイ」


 支配人の笑わない目が、Hさんを射抜きます。

「どうですカ?」

「いや、けど...え〜!?」

「どうですカ?」

「か、買います」

「あなタ、ラッキーです」
「この石のぷぁわーで、アなたはしあわセにしかなれませン」
「他の皆さンは、とってモアンラッキーでしタ」

 「ふふんっ」


 口は笑ったけど、目は笑っていません。
 この、支配人のモノマネ。
 私の宴会での鉄板ネタです。

 Hさんは、虎目石ボールを一万円で購入。
 おかげで博物館で、何を見て何を買ったか、さっぱり覚えてません。

 バスまでの道中、千円カバディズをまたガイドさんがあしらい、横断歩道を渡ります。
 パッと道を見たら、なんだありゃ?
 帰国して話をしても、誰も信じてくれない。

 だけど、僕は確かに見たんだよ!
 この旅のメンバーが見たんだよ!

 この旅のフィナーレを飾るに相応しい。
 真のラスボスを

 車道の最内で、引かれるリアカー。
 車を引くのは、痩せ細った初老の男性。
 その荷台には、板切れや、タンスなどが満載で、その高さは3メートルほど。

 そして

 その天辺に、どっかりと腰を下ろす。

 ダンプ松本か、アジャコングか!?
 と言わんばかりの女傑。


 それだけでは、ありません。
 何かの果物をひたすらかじり

 種を、車道にも、歩道にもぷっぷ、ぷっぷと撒き散らす。

 本当に凄い体験の連続でした。
 帰りはコードシェア便で、JALのCAさんも同乗。
 なんと言うか、

 あぁ、女神さま

 でしたね。
 ですが、正直人生観変わりました。

 肩肘張らずに生きていこうと

 まあ、上海万博直後の中国。
 バブル真っ盛りのエネルギーに溢れていましたね。

 ランちゃん元気かな?

 運転の下手な運転手に、当たってなければ良いが......

 ではでは

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