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【放課後ライティング俱楽部/シロクマ文芸部】宇和島・祭りの夜に

1.
 夜店から買ってきたハリケーンポテトを、小学3年生の息子に見せびらかして、
「食うか?」と聞いた。
「いらない ぼくはマクドナルドのハッピーセットがいい」
 息子はセットのおもちゃが目当てらしい。さっきからこぶしをにぎりしめているから、どうしたのかときいたら、黙ってこぶしを開いてみせてきた。よくわからないネジがのっている。いつのまに拾ったのやら。

 だいたい祭りの後にマクドかよ。妻も息子に同調するように「ナゲット買って家でビール飲みたいわ」などと言う。最寄りのマクドナルドといえば港のそばの国道56線沿いにある。夏祭りの後、オレたちみたいな家族連れで、きっとマクドナルド宇和島店の駐車場は混み合っているにちがいない。
 せっかくの屋台を楽しもうとは思わず、マクドを求めるとは何事だ。

2.
 宇和島の祭りはオレにとって単に見物するものだが、このところ頼まれれば案内したり、動画をあげたりすることがある。謝礼が入れば副業になる。が、本業は別にあるし、ガツガツ報酬を求めるのは無粋という宇和島の風習と言うか、慣習に縛られて、6件ほど案内しても謝礼は0件。
 宇和島で生まれ育った妻は、こういう武士は食わねど高楊枝的な慣習に慣れていて、涼しい顔で「(宇和島は)こんなとこよ」などと言い放つ。
 すねたオレが「いっそ低予算でフィルムを1本とるならこういうところを狙うべきだと、公開してやりたいくらいだ」と言おうものなら、こう返ってくる。「でもそこまで特徴もなければ価値もないから金にならない」思わぬ反撃にオレはエビ反り姿勢になる。「だからさびれていくだけなのよ」その気迫に押されて、オレは妻に来週公開される映画のエンドロールに、監修者として名前が載ることを言いそびれてしまった。

3.
 宇和島でオレの出身地を訊かれると、そんなに目立つのかと心配になる。別に隠すでも恥じるでもないが、生まれも育ちも京都「市内」になる。ちっぽけな話だが、同じ京都とといえど「府内」か「市内」では似ているようで違う。宇和島にきて「宇和島の人は松山を嫌う」という風説を耳にして、似ている気がしたものだ。
 どうなのだろう。息子は小学生で和霊小学校に編入した。近隣地区では児童数の減少に伴って統廃合が進んでいるという。京都市でも再編が進んでいるが、S区の住民から「K区と同じ学校はちょっと」などといった苦情が出ていると耳にしたことがある。
 宇和島でも、似たような苦情がささやかれているにはちがいないが、京都のささやきがオレに聞こえるのは、生まれも育ちも京都市内だからだ。宇和島のささやきは聞こえない。あて推量にすぎないが、妻や息子には聞こえるのだろうか。 

4.
 京都の祭りと言えば祇園祭だが、宇和島の祭りと言えば、和霊大祭だったのが、うわじま牛鬼まつりに呼び名が変わった。京都で金襴緞子の山車が、宇和島では手作り感満載の牛鬼が主役だ。マクドナルドの紙袋を抱えた妻が「たまには和霊様まで歩く?」と言う。普段は静かな宇和島も、このときばかりは人で混みあう。息子は、と見ると慣れない人混みに戸惑っている。「多分これから御幣争奪なんだよね」さすが妻は詳しい。「どうする?」息子は気圧されている。オレは息子の答を待ちながら、祭りの主役は牛鬼という妖怪なのか、和霊様となった山家清兵衛のどちらなのか、混在する信仰について思いをはしらせていた。
 
 祭りひとつとっても、どうしてなかなか謎は深い。
 

【終】
タイトル画像は、牛鬼に似ていますが宇和島の魔除けらしいです。詳細は良く分かりません。ご存じの方がおられるとうれしいです。

《今週の三題噺》

1.映画のエンドロール
2.マクドナルドのハッピーセット
3.よくわからないネジ



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