【放課後ライティング俱楽部/シロクマ文芸部】夏じゃこ天レシピ
1.
波の音を、熱帯夜にyoutubeで流している。夫が帰宅しても気に留めないよう、音は絞っている。果たして気づく素振りも無く、夫はテレビを付けた。録画しておいた梅雨明けからの高校野球を見るのだという。甲子園よりも地方大会の方がアツいらしい。
2.
私は宇和島東高校の戦況が気になるが、本日は夕食当番だ。作り置きのイカ大根にダシで炊いた厚揚げを加え、冷ややっこの豆腐を切り、薬味のショウガと青ネギにカツオブシは多め。食べ盛りの子と食卓を囲むときは、これに惣菜のメンチカツ、またはカラアゲ、コロッケと千切りキャベツが山盛りという1皿が加わる。
日焼けした球児が画面に大写しになった。球児だって、うちの子と同じように期末テスト範囲を気にしたり、汗拭きシートを忘れてあわてて取りに帰ったりしているかもしれない。りりしい横顔にそんな影は見えないけれど。
夫は冷蔵庫からビールを出してきた。食卓を見ると、既にグラスを2つ並べている。
「おつまみ何がいい?」
答えなど待たずに、私は冷蔵庫のキュウリとじゃこ天で酢の物をしようと野菜ケースを開けた。
この場合(なんでもいい)と返すと、私が意欲を失うことを、既に夫は学習している。しかし黙っていると「聞いているんだから答えて!」と追撃される。夫は最適解を返した。
「こんな暑いとなんかちょっとお酢のもんがええなあ」
3.
私の酢の物は、甘酢ではなく、三杯酢だ。初見でおどろかれたこともあった。きっと夫は、私と暮らすうちに慣れたのだ。
キュウリ1〜2本をさっと水で洗い4cmほどの拍子切りにする。じゃこ天は1枚。いり胡麻(白)大さじ1〜2は時間があれば、もう一度炒って摺る。胡麻をすることをあたると言ったりもする。
「やっぱり手際ええな」
「こんなん簡単よ」
私は三杯酢は作りおきしない。まず日持ちしないし、体調に合わせて酢を加減するからだ。今では平気な顔をしているが、夫は結婚当初この三杯酢を酸っぱいと言って嫌がった。
「味みてくれる?」
「うん」
三杯酢の味見をさせると、夫は文句を言わなくなった。こういう味だと諦めたのか、腹を括ったのか、どちらだろう。
4.
しゅうとめによれば、関西は甘酢が主流で、また卵焼きは甘くするものらしい。さらに言えば、料理に甘みを足すのは白砂糖で、味醂(みりん)を常備するのは料亭くらいなものだという。私は、しゅうとめの当てこすりの意味するところがつかめなかったし、だからどうしようという気持ちにもならなかった。そもそも、魚肉に山芋を混ぜて漂白した半片(ハンペン)、という練り物など私の辞書には永久に存在しない。したがって食卓に上ることもない。
少々意地の悪い気持ちになって夫にたずねてみる。
「白くて四角い半片?ああいうフワフワした白い方が好き?」
「いや じゃこ天の『魚食べてる』感がええねん」

5.
拍子切りのキュウリと、じゃこ天を各適宜。三杯酢大さじ1〜2で和えて適量の胡麻をあたって加える。
作り置きした場合は3日で食べきる。
食後、夫は自分の夕食当番でもこれを作りたいと言ってレシピを紙に書きき、丁寧にクリップで止めた。
それはそれで構わない。が、しかし。
「あんたせっかくやし半片で作ったら?」
たまには違うものも食べてみたいと思うのが、人の常なのだ。
【終】
・有限会社安岡蒲鉾
宇和島 安岡蒲鉾ホームページ
超簡単『夏の副菜』3分で出来る!!知らないと損します【じゃこ天ときゅうりの和え物】
上記を参考にしました。ちなみに宇和島のじゃこ天は手作業でお高いので、近所のスーパーで買えるじゃこ天は八幡浜の機械生産のお手頃品です。かまぼこ板美術展というアート展は必見です!
《今週の三題噺》
1.クリップ
2.梅雨明け
3.テスト範囲
#木曜日は3ースデイ
#放課後ライティング倶楽部
#このレシピが好き
#シロクマ文芸部
#宇和島
#じゃこ天
