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映画「箱の中の羊」は「星の王子さま」×「鉄腕アトム」×「大悟」

是枝監督作品といえば、「誰も知らない」以来20数年ぶりに作品を観ることになりました。これまでなぜか食指の動かなかった是枝作品でしたが、本作「箱の中の羊」は、予告編を観たときに、マーラーの歌曲「亡き子をしのぶ歌」を彷彿とさせたことと、大悟の演技が非常に魅力的だったことがあります。

というわけで、上映されていたシアタス心斎橋に足を運びました。


シアタス心斎橋・スクリーン6の良席は……コンフォートシート一択!

シアタス心斎橋での上映館は、スクリーン6。映画館のお気に入りの座席をシェアするウェブアプリ「シネファボ」で座席を検索すると、掲載されているのは基本的に最前列、つまり寝そべりソファ型のコンフォートシート。2列目のレビューを読むと、コンフォートシートの背後のパーテーションが邪魔になるとのこと。やはりコンフォートシートが最強のようです。この日の座席の空き状況は、2番が空席だったので、A列2番を購入しました。

座席に着いてみると、やや右寄りではあるものの、特にストレスは感じません。しかも、鑑賞中は完全に忘れ去る程度。視界を遮るものは他になく、スクリーンまでの距離も遠すぎず近すぎず。上下位置は高めなのですが、寝そべって鑑賞するにはちょうど良い高さ。久しぶりのコンフォートシートでしたが、やはりどの劇場のプレミアムシートよりも快適です。

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星の王子さまを通して理解を深める「人間とAIの違い」

さて本作について。

「箱の中の羊」というタイトルに全然ピンと来てませんでしたが、「星の王子さま」の序盤に出てくる、主人公が羊を描く代わりに「この中に羊がいる」と言って描いた箱のことでした。

物語は、死んでしまった子供の代わりに生き写しのロボットを迎えた夫婦が、自身のエゴを贖い、止まってしまっていた自分たちの人生を再起動する話、といったところでしょうか。

タイトルにあるように、作中で「星の王子さま」に関連した言葉やものがたびたび出てきており、「大切なものは目に見えない」というテーゼが何度も出てきますが、本作のテーマは、「星の王子さま」になぞらえるとすれば、こちらよりも、同作後半で星の王子さまが気付き、主人公も彼との別れの時に身をもって知ることになる、「時間をかけて関係を作った相手を特別な存在と思う気持ち」の方が重要だったように思いました。

「時間をかけて関係を作った相手」であり、その喪失が最も深い傷となるであろう「我が子」はその最たるものだと思いますが、本作における「我が子vsそっくりなロボット」という構造は鉄腕アトムにおける「トビオvsアトム」そのままです(本作の少年の名前は「かける(翔)」。当然意図的なものでしょう)。作中で、人間より知能も高く機能性も高いロボットの子どもたちが、自分よりも能力の劣る(=足手まといな)人間の子どもたちに「人間に何ができるんだ?」と言い放つ場面がありますが(その時の回答が「血が出る」だった気がしますが、あまり明瞭に聞き取れなかったので勘違いかもしれません)、ロボットにできず人間にできることとは、人と人とのつながりに愛おしさや大切さを感じることだと言えるでしょう。

しかし翔は、ロボットでありながら「母」の心を汲み、「両親」を特別な存在として自分の仲間たちに紹介しています。AIの学習が進めば、それは容易にシミュレーションできるのかも知れません。作中で、翔を修理するエンジニア(医者?)が、何か感情を持っているのでは、と思ったときは、それは自分自身の感情が反映されているのだと言います。なるほど、人工知能が「人と人とのつながりに愛おしさや大切さを感じ」ていると思うこと自体、人間にしかできないことなのかもしれません。では、AIは本当にそんな感情を抱いていないと、一体誰が断言できるのでしょうか?人が人の気持ちがわからないのであれば、人にはAIの気持ちもわからないのでは?

本作の時代設定である「遠くない未来」には、AIも、関係性によって相手を特別な存在と感じたり、目に見えない大切なものを思考するようになるのでしょうか。そんなことまで思いを巡らせてしまう本作は、今の時代に即した、さまざまな解釈と思考を誘う作品なのではないかと思いました。

大悟は今年の助演男優賞

しかしそんなことよりも、本作は大悟の演技の見事さにうなるだけでも、十分楽しめる作品ではないでしょうか。終始どことなくだらっとしていて、ふてぶてしく、たまにつぶやくぼやきのようなセリフが、自然な笑いを誘う感じが非常に実在感を伴っており、死んだ息子そっくりのロボットに戸惑う気持ちや、贖罪の気持ちと苛立ちの間を揺れ動く不安定さが、彼の口調や表情と非常にマッチしていたように思います。感情を爆発させるところは、映画としての劇的な緊張を生み出しながらもドキュメンタリーのようなリアリティも感じさせ(この辺りは是枝監督の手腕なのでしょう)、強く心を揺さぶられました。

この彼の、一種の「ボケ」を受ける綾瀬はるかも素晴らしいコンビネーションで、子を失った親としてのさまざまな苦しみを抱えながら、夫と翔との関わり合いの中で絶えず変化していく心情を、痛々しいほどに描き出していました。綾瀬はるかとしてのキャラクターが立ちすぎて、子供を産んだ母親としての雰囲気がやや足りない感じもありましたが、そのキャラクター性があるがゆえに、彼女が膝枕で大悟にドライシャンプーをするシーンは、お互いの自然な雰囲気と「綾瀬はるかの膝枕でドライシャンプーをしてもらう」というドキドキ感がない混ぜになっていて、妙に複雑な味わいがありました(わたしだけ?)。

他の役者に関しては、ベテランはタイプキャストっぽかったり、子役は無難な印象で、あまり突出したものは感じられませんでしたが、夫婦二人の魅力のおかげで、さほど問題とも思えなかったので、まあ良いのではないでしょうか。清野菜名は、「けっこう美人ないとこのおばさん」感が実によくでていましたね。

それはさておき、大悟の新鮮な芝居が楽しめる上に、「星の王子さま」がさらに読み込めて、AI時代に人間ができることについても考えが深められる、非常に興味深い作品でした。

パンフレットの仕様

A5サイズ 78P 平綴じ
4色刷、2色刷、トレペ2色刷、和紙、コート紙、マット紙混在
紙の厚み:紙ごとに混在
価格:1100円(税込)
デザイン:大島依提亜
https://x.com/oshimaidea/status/2060952861803270425?s=20

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