「踏み台にされた人生:不器用な私が、泥を啜りながら看護師として生きる理由」
序章:褒め言葉という名の呪い
「真面目だね」という言葉は、私にとって称賛ではなく、呪いだった。
人より数十倍努力しなければ、人並みのスタートラインにすら立てない。朝一番に出勤して雑務をこなし、要点を掴めない不安を「圧倒的な物量」の課題で埋め合わせる日々。
要領のいい人間が軽やかに飛び越えていくハードルを、私は爪を剥がしながら這い登ってきた。
第一章:理不尽な「NO」——居場所を奪われた日
准看護師から正看護師へ。
奇跡が起きた
病院付属の高等看護学校からの合格通知が手元に届く。
ステップアップの切符を掴んだ私に突きつけられたのは、信頼していた上司からの「あなたは不器用だから、一度辞めて学業に専念しなさい」という言葉。
しかし、他校のましてや病院付属ではない同条件の高等看護学校に進む同期や先輩は、あっさりと「非常勤」としての籍を残すことを許された。
なぜ私だけが、住み慣れた居場所を追い出されなければならなかったのか。この時、私の心に最初の深い亀裂が入った。
第二章:私のレールを歩く者たち
看護に興味などなかったはずの年の離れた兄弟が、いつの間にか私の母校を辿り、私が追い出されたはずのあの病院へ、そつなく、当然のように就職していった。
もちろん、わかっている…。
彼ら自身、みんな一人一人が私の知らない場所で目に見えないような様々な血の滲むような努力を行った結果掴んだ賜物なんだろう…。
そのことについて私自身、彼らに関して心を込めて「おめでとう」と祝福の気持ちを本心でしっかり抱いている。
だけど度々ふとした瞬間、自分の人生が何かの拍子にターニングポイントを迎えたり、スランプに陥った時。
私の心の中の悪魔のような感情が奥底から「ひょっこり」と顔を出す。
私が必死に石を退け、整備したはずのレールを、彼らは汚れ一つない靴で歩いていく。
さらに追い打ちをかけた友達からの言葉。
「前の職場の人たち、あなたが戻ってこないでほしいって言ってたよ。」
善意を装った刃が、私のプライドを切り刻んだ。
第三章:選ぶ側から、選ばれる側へ
意地とプライド。それだけを杖にして、私はかつての居場所から遠く離れた。
かつての職場は今や、誰もが羨む高待遇の病院になったという。家庭を持つ身には喉から手が出るほど欲しい条件。だが、私にはもう帰る場所はない。
数市を跨いだ見知らぬ地で、私は今日も「選ばれる側」として、誰よりも早く現場に入り、雑務をこなし、誠意という名の泥臭い努力を見せ続けなければ、看護師として食らいついていけない。
終章:祝福できない自分を抱えて
「おめでとう」と口では言いながら、心の中ではどす黒い感情が渦巻いている。
他人の成功を心から喜べない自分。それは、私が自分の人生を必死に守ろうとしてきた証拠でもある。
美談にはできない。けれど、この「割に合わない人生」を、私は今日も看護師として生き抜いている。
