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シロクマ・フィクション027|お嬢ちゃん寄席に行く

気分転換して帰宅する。
 
自宅がなんだか新鮮だ。
 
窓を開けて空気を入れ替える。
 
少しだけ柔らかくなった
陽光が気持ちいい。
 
旅先で買ってきたお茶を淹れる。
いい香りだった。
 
旅館の部屋に置いてあったものが
気に入ったので買ってきたのだ。
 
ほっとする。
やっぱり家はいいな。
 
少し休んだら着替えて
続きを書き始めよう。
 
 ――えーっと。
ノートパソコンの画面を開いた。

旅先で得たエネルギーのおかげか、
指は驚くほどスムーズに動いた。


主人公の落語家が、寄席の楽屋の片隅で
小さくなっているシーン。
師匠たちの着替えを手伝い、
お茶を出し、神経をすり減らす前座の日々。


キーボードを叩く音だけが、
静かな部屋にリズミカルに響く。
 
最後まで一息に書けるかもしれない。
一気に二千字ほど書き進めたところで、
私はふと手を止めて、
ぬるくなったお茶をすすった。

部屋は、相変わらず静かだった。
 
なんだか、話が冗長になってきた
気がしたので
近くで寄席が見られる場所を探す。
 
今はネットでも聴けるけど
やっぱり本物には敵わない。
 
できれば真打まで見たいけど。
 
翌日さっそく出かけることにした。


初めて寄席というものに来てみた。
 
年齢層は高めだけど、
ちらほら若い人もいる。
舞台上では着物姿の人たちが、
忙しそうに動き回っている。
 
なんだか新鮮。
 
めくりを初めて見てちょっと感激。
見るからに上質そうな座布団にも感激。
 
舞台はそんなに大きくないけど
一度始まると、
そんなこと気にならなくなった。
 
すぐに引き込まれた。
 
さすが、話が上手い。
 
私の初落語は、少々知識があった
「寿限無」だった。
おかげでわかりやすくて助かった。

気付いたことや、細かいことを
ノートに書き留めて
あとは笑っていたらあっという間に
トリの出番に。
 
テレビなんかでも時々見かける
有名な落語家だった。
知名度が高いのに、まだ高座に
上がっているなんて正直意外だった。
 
トリはやっぱり別格だった。
話にあっという間に引き込まれる。
 
時々挟み込まれる、師匠方の悪口も
おもしろかった。
 
私の初寄席は満足のいくものだった。
 
さてと。帰宅して仕上げなければ。    

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