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【答え合わせ】2025年に貧困は終わる!と予言した名著『貧困の終焉』の壮大な実験はどうなった?

2005年に出版されたジェフリー・サックスの著書『貧困の終焉』は、世界の貧困問題に書いてある、すごい有名な本です。

日本では早川書房から出版され、今でも多くの人に読まれています。

この本は、1日1ドル未満で生活し、貧困の罠(貧しすぎて自力では抜け出せない状態)にいる10億人以上の人々を救い、2025年までに世界から極度の貧困をなくすことができる!っていう素晴らしい内容の本。

サックスは、人々が貧しいのは個人の怠けのせいではなく、地理的に孤立していたり、重い病気が蔓延していたり、道路や電気などのインフラが不足していたりするためだと主張しました。

そして、豊かな国々がほんの少しの資金援助をするだけで、貧しい国々は自立して経済を成長させることができると説明しました。

そして本が出版されてから20年以上が経ち、目標の「2025年」を過ぎた現在、世界はどうなっているのでしょうか。

この記事では、サックスの考え方やそれに対する批判、実際に行われた実験の結果、そして2026年現在の世界の貧困状況について解説します。


臨床経済学という考え方

サックスは、貧しい国を救う方法を、医者が患者を診察する臨床医学に例えて「臨床経済学」と呼びました。

これまで世界銀行などの国際機関は、どんな国に対しても「国の予算を削る」「貿易を自由にする」といった同じ解決策(万能薬)を押し付けてきました。

サックスはこれを、医者が患者の症状をちゃんと見ずに、誰にでも同じ薬を出すようなものだと批判しました。

国によって、気候や歴史、病気の状況はまったく違います。サックスは、それぞれの国が抱えている病気の原因を正しく診断し、それに合った解決策を出す必要があると訴えました。

たとえば南米のボリビア。

標高が高くて貿易がしにくいことや、物価の異常な上昇(ハイパーインフレ)が原因で貧しかった。ってことは、まずは通貨の安定が必要と診断。

あとポーランドなんかは、共産主義から資本主義への急な変化による混乱が原因だったんですよね。

なので、この国の場合は、ヨーロッパ市場に早く参加させる仕組みが必要。

あとは、サハラ砂漠より南のアフリカとかは、マラリアなどの病気や、土地が痩せていることが原因です。

この場合、経済政策の前に、蚊帳(かや)や薬の配布、農業用肥料の支援がまず必要。

貧困の罠

極端に貧しい人々は、毎日の食事や医療にすべてのお金を使ってしまうため、将来のために貯金したり、教育や農業に投資したりすることができません。

これでは次の世代も貧しいままです。これが貧困の罠です。

ここから抜け出すためには、少しずつの支援では足りません。

教育、医療、農業、道路など、生活のあらゆるもおに、同じタイミングで、結構な額を投資しなきゃいけない。

途上国だけではお金が足りないため、先進国がまとまった援助(ODA)をしてその穴埋めをすべきだと主張し、国連を通じて具体的な資金援助の計画をまとめました。

ジュビリー2000

サックスは学者として理論を唱えるだけでなく、実際に行動も起こしました。

その代表が、貧しい国の借金を帳消しにする「ジュビリー2000」という世界的なキャンペーンへの参加です。

ロックバンドU2のボノやローマ教皇なども参加したこの運動は、世界中で1,700万人もの署名を集めました。

貧しい国が、過去の独裁者が作ったような借金の返済に追われ、教育や医療にお金を使えないのはおかしいと訴えたのです。

一部の人々は「借金をなくすと、また無駄遣いするのでは」と心配しましたが、サックスたちは「浮いたお金を確実に医療や教育に使う仕組み」を作ることで反論しました。

結果として多くの借金が免除され、そのお金はアフリカのエイズ対策などに使われました。

援助は本当に役立つのか?

サックスの「大規模な援助で貧困をなくす」という考えには、強い反対意見も出ました。代表的なのがウィリアム・イースタリーという経済学者です。

イースタリーは、これまでアフリカに巨額の援助がされたのに経済が成長しなかったのは、上から目線の計画のせいだと批判しました。

彼は、専門家が外から計画を押し付けるのではなく、現場の人々が何を求めているかを探りながら少しずつ解決していくアプローチや、個人のやる気を引き出す市場の仕組みが大切だと主張しました。

また、ダンビサ・モヨという経済学者も、「外国からの援助が逆に途上国の政治の腐敗を招いている」として、援助をやめるべきだと激しく批判しました。

これに対しサックスは、「アフリカで蚊帳や薬を配ることで、実際に多くの命が救われている。援助は確実に役に立っている」と反論しています。

実験村の結末

自分の理論が正しいことを証明するため、サックスは2005年からアフリカで「ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト」という壮大な実験を始めました。

様々な村で、農業、医療、教育などの支援を一気に投下し、5年間で貧困をなくせるかを見るものです。

初期の頃は「マラリアが減った」「農作物の収穫が増えた」といった良い結果が報告されました。

しかし、このプロジェクトの評価については専門家の間で激しい議論が起きました。

「プロジェクトをしていない普通の村」との比較が不十分だったため、生活が良くなったのが本当にプロジェクトのおかげなのか、それとも国全体の景気が良くなっただけなのか、証明しにくいと批判されたのです。

2018年に発表された最終的な評価によると、農業やマラリア対策などでは確かな効果があったものの、当初の目標の多くは達成できず、村人が「貧困の罠」から完全に抜け出して豊かになるほどの成果は出なかったと報告されています。

2026年現在の貧困状況と厳しい現実

サックスが「貧困を終わらせる」と目標にした2025年を過ぎた現在、世界はどうなっているでしょうか。

世界銀行が発表した2026年の最新データを見ると、まあ現実は非常に厳しいことが分かります…

現在、物価の上昇などに合わせて「極度の貧困」の基準は、1日3ドル未満に引き上げられています。

この基準で見ると、2024年の時点で世界には約8億4,700万人(世界人口の約10.4%)の極度に貧しい人々がいます。

かつては中国やインドの経済成長によって貧困層が大きく減りましたが、この10年ほどは貧困を減らすペースが止まってしまっています。

その理由は、新型コロナウイルスの流行、気候変動による災害、そして世界各地の紛争など、複数の危機が重なっているためです。

また、サックスが求めたような先進国からの大規模な資金援助(ODA)も、各国の国内事情(ウクライナ支援や難民受け入れなど)により、2025年には大きく減ってしまいました。

答え合わせができる珍しい本

「2025年までに極度の貧困を終わらせる」というサックスの予言は、残念ながら実現しませんでした。

なんですけど、彼が主張した「医療、教育、農業、環境などに同時に取り組まなければならない」という考え方は、実は国連のSDGsの基礎にそのまま引き継がれています。

この本とサックスの活動によって、多額の資金が集まり、実際に何百万人もの命が救われたことは紛れもない事実です。

貧困問題は、ただお金や技術を外から注ぎ込むだけでは解決しない、もっと複雑なもの。

でもだからといって放置しっぱなしっていうわけにもいかない。みんなに読んでもらって、ぜひ考えてほしいな、と思う本。

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おすすめの本を紹介しまくる人 これからも毎日、本を紹介したいのですが、このnote、ずっと赤字状態です。もし本好きの方がいらしたら、チップを送っていただけると嬉しいです。

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