レコード男子|③藤井風は何を聴いて藤井風になったのか|ジュリー・ロンドンから90年代R&Bまで
※この記事には、プロモーションが含まれています。※記事の作成・構成には生成AIを使用しています。内容は筆者が確認し、加筆・編集しています。
前回、ステージを降りた藤井風さんについて書いた。
朝には瞑想。
両親には白米10kgを送る。
そして、心を落ち着かせたいときには、
ジュリー・ロンドン。
チェット・ベイカー。
さらに90年代R&B。
この話を知ったとき、僕はちょっと引っかかった。
というのも、単なる「好きな音楽」の羅列には見えなかったからだ。
もしかすると、ここから逆にたどっていけば、
藤井風という音楽が、どこからやって来たのか。
その一部が見えてくるのではないだろうか。
ジュリー・ロンドンとチェット・ベイカー
2025年の海外インタビューで、藤井風さんは、自分を落ち着かせたいときにジャズやR&Bをよく聴くと話している。
そこで名前を挙げたのが、ジュリー・ロンドンとチェット・ベイカーだった。
なるほどなあ、と思う。
ジュリー・ロンドンは、声を張り上げない。
チェット・ベイカーも、トランペットで聴き手を圧倒しようとはしない。
二人とも、むしろ音を減らすことで空間を作る音楽に聞こえる。藤井風さんの歌にも、それに近いものを感じることがある。
全部を歌い切らない。
全部を説明しない。
ちょっと力を抜く。
そこに妙な余白が生まれる。
もちろん、藤井風さんが二人から直接そうした表現方法を学んだ、と断定することはできない。ただ、自分を落ち着かせるために繰り返し聴く音楽というものは、意識しなくても身体のどこかに残るものだと思う。
レコード好きなら、これはよく分かる。
何度も針を落としたレコードは、いつの間にか自分の感覚の一部になる。
ところが、突然90年代R&Bになる
面白いのは、その次だ。
ジュリー・ロンドン。
チェット・ベイカー。
ここまでは静かなジャズの世界。
ところが藤井風さんは続けて、
トニ・ブラクストン。
アリーヤ。
Boyz II Men。
マライア・キャリー。
と名前を挙げる。
一気に90年代になった(笑)。
でも、この振れ幅こそ藤井風さんなのかもしれない。
ジャズの余白。
R&Bのグルーヴ。
ソウルの歌。
そしてポップス。
全部が同じ棚に入っている。
12、13歳で「自分の音楽」になったR&B
さらに別のインタビューを読むと、もっと重要な話が出てくる。
藤井風さんは、父親から幼い頃から音楽を教わっていた。
しかし、
「音楽が自分自身のものになったと感じたのはいつか」という質問に対して、12歳か13歳頃にR&Bに出会ったと答えている。
具体的には、
アッシャー。
メアリー・J・ブライジ。
そしてマライア・キャリー。
両親が普段聴いていた音楽とは違う、現代のR&Bを自分自身で見つけたのだという。
ここは、かなり重要だと思う。
親から教えてもらった音楽。
自分で見つけた音楽。
この二つは少し違う。
子どもの頃、家にあるレコードを聴く。
そしてある年齢になると、自分でレコード屋へ行って、自分のお金で一枚を買う。
そこから、本当の意味で「僕の音楽」が始まる。
僕らにも、そんな瞬間があった。
藤井風さんの場合、それがR&Bだったのだ。
クラシックもジャズもR&Bも同居する
藤井風さんは、YouTube時代からジャンルをほとんど気にしていない。
カーペンターズ。
アリアナ・グランデ。
そしてショパン。
まるでレコード店の棚を無視して歩いているような選曲だった。
GQも2021年の時点で、藤井風さんの音楽について、ジャズ、クラシック、R&Bが自然に行き来するジャンル横断的なものとして紹介している。
これは後から「世界向け」に作ったスタイルではなかった。
最初から棚がなかったのだ。
いや、正確には、
棚はたくさんあるけれど、本人がその間を自由に歩いている。
そんな感じだ。
『Prema』になって突然海外音楽へ行ったわけではない
藤井風さんの3枚目のアルバム『Prema』は、全編英語詞になった。
そのため、
「いよいよ海外仕様になった」
と見ることもできる。
でも、音楽のルーツを調べてみると、どうも話は逆なのではないかと思えてくる。
英語圏のR&Bは12、13歳の頃から聴いていた。
マライア・キャリーも聴いた。
アッシャーも聴いた。
メアリー・J・ブライジも聴いた。
大人になってからもジュリー・ロンドンやチェット・ベイカーを聴いている。
だとすれば『Prema』は、
海外へ行くために新しく外国の音楽を身につけた作品ではなく、昔から自分の中にあった音楽を、いよいよ表側へ出したアルバムと考えた方が自然なのかもしれない。
そして、エイミー・ワインハウス
さらに面白い名前がある。
同じインタビューで、好きなアーティストとして挙げたのが、
エイミー・ワインハウス。
人生は悲劇的だったけれど、その音楽が大好きだと話している。
これも妙に納得してしまう。
エイミー・ワインハウスの中にも、
ジャズ。
ソウル。
R&B。
昔の音楽。
現代の音楽。
それらが全部混じっている。
藤井風さんが好む音楽を並べてみると、ひとつ共通するところがある。
ジャンルより、人間の声やグルーヴが先に来る。
そんな音楽が多い。
姉のCDからグウェン・ステファニー
もうひとつ。
藤井風さんが最初に夢中になったアーティストとして挙げているのが、グウェン・ステファニー。
きっかけは、お姉さんが持っていたアルバム『The Sweet Escape』だったという。
そこで音楽の奇妙さ、雰囲気、格好良さに衝撃を受けたらしい。特に「Cool」のミュージックビデオを高く評価している。
ここでも家族だ。
父から音楽。
姉のCDからグウェン・ステファニー。
そして大人になった藤井風さんは、両親へ白米10kgを送る(笑)。
藤井家では、音楽と米が循環している。
藤井風のレコード棚を想像してみる
もし藤井風さんの架空のレコード棚を作るなら、かなり面白いことになる。
ジュリー・ロンドン。
チェット・ベイカー。
マライア・キャリー。
トニ・ブラクストン。
アリーヤ。
Boyz II Men。
アッシャー。
メアリー・J・ブライジ。
エイミー・ワインハウス。
グウェン・ステファニー。
そしてショパン。
隣り合わないはずのレコードが、普通に隣に置かれている。でも、その棚を眺めたあとに藤井風さんの音楽を聴くと、
「ああ、なるほど」
と思うところがある。
ピアノは自由。
歌にはR&Bがある。
コードにはジャズの匂いがする。
ポップなのに、ときどき妙な方向へ曲がる。
それでも難しい音楽には聞こえない。
いろいろ入っているのに、最後にはちゃんと「藤井風」になっている。
音楽のルーツとは、ジャンル名ではないのかもしれない
よく、
「このアーティストのルーツは何ですか?」
という話をする。
ジャズ。
ロック。
ソウル。
R&B。
クラシック。
でも藤井風さんを見ていると、そんな分類自体が少し古いのかもしれないと思えてくる。
YouTubeを開けば、ショパンの隣にアリアナ・グランデがいる。
Spotifyなら、チェット・ベイカーを聴いたあとにアリーヤへ行ける。
音楽の棚は、もう壁で仕切られていない。
藤井風さんは、そんな時代に育った音楽家なのだ。
ただし面白いのは、
その新しい聴き方の中に、
ジュリー・ロンドンやチェット・ベイカーという古い音楽が普通に生きていること。
新しいから古いものを捨てるのではない。
古い音楽も新しい音楽も同じ現在形で聴く。
これは、レコードを聴いている僕にも、とてもよく分かる。
1950年代のレコードだって、
今日初めて針を落とせば、
今日の音楽なのだ。
そして、前の記事で書いたことにまた戻ってくる。
音楽には、何度でも新しい発売日がやって来る。
藤井風さん自身も、
そんな聴き方から生まれたアーティストなのかもしれない。
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