レコード男子|1×1|⑨│Chuck Berry × The Beach Boys|ロックンロールは、海へ行った
※この記事には、プロモーションが含まれています。※記事の作成・構成には生成AIを使用しています。内容は筆者が確認し、加筆・編集しています。
「1×1」を続けていると、同じChuck Berryでも、相手が変わるだけで物語がまるで変わる。
Beatlesと並べれば、
ロックンロールを受け取った英国の若者たち。
Rolling Stonesと並べれば、
憧れのレコードを、そのまま身体で鳴らした英国の若者たち。
では、Beach Boysと並べるとどうなるのか。
これは少し事情が違う。
いや、かなり違う。
なにしろ二組の間には、
「Surfin' U.S.A.」という、
あまりにも有名な一曲がある。
そしてその向こうには、
Chuck Berryの「Sweet Little Sixteen」がある。
影響。
引用。
模倣。
著作権。
後から追加されたクレジット。
いろいろな言葉で語られてきた。
だから今回は、少しだけ因縁のある「1×1」である。
Chuck Berry × The Beach Boys。
ロックンロールが、カリフォルニアの海へ出た話を追ってみたい。
1958年|Chuck Berryの「Sweet Little Sixteen」
まず、Chuck Berry。
1958年。
「Sweet Little Sixteen」
を発表する。
全米ポップチャート2位、R&Bチャートでは1位となった大ヒット曲だ。
Chuck Berryらしい曲である。
若者。
音楽。
街。
興奮。
そして、アメリカ各地の地名が次々に登場する。
Boston。
Pittsburgh。
Texas。
San Francisco。
St. Louis。
New Orleans。
曲を聴いていると、アメリカ中を移動しているような感じがする。Chuck Berry公式にも、その地名を連ねる歌詞が掲載されている。
ここが後になって重要になる。
1961年|カリフォルニアでBeach Boysが始まる
その3年後。
1961年。
カリフォルニア州ホーソーンでBeach Boysが結成される。
Brian、Carl、DennisのWilson兄弟。
従兄弟のMike Love。
友人のAl Jardine。
Beach Boys公式が紹介するように、彼らはやがてサーフィン、若さ、恋、カリフォルニアという世界を、洗練されたハーモニーとアレンジで世界へ送り出していく。
でも彼らもまた、ゼロから音楽を作ったわけではない。
Brian Wilsonの中には、
The Four Freshmenのハーモニー。
Phil Spector的な音作り。
そして、Chuck Berryのロックンロールがあった。
ここが面白い。
Beach Boysの特徴を乱暴に二つへ分けるなら、
声はFour Freshmen。
身体はChuck Berry。
そんなところがあったのかもしれない。
1962年|まだ「Surfin' Safari」
1962年。
Beach BoysはCapitol Recordsと契約。
ファースト・アルバム『Surfin' Safari』を発表する。
タイトル通り、サーフィン。
海。
若者。
カリフォルニア。
ここでBeach Boysのイメージができ始める。
でも、本当の爆発は翌年だった。
1963年|「Surfin' U.S.A.」
1963年。
「Surfin' U.S.A.」が出る。
Beach Boysの初期を代表する曲。
アルバムのタイトル曲にもなった。公式ディスコグラフィーでも1963年作品として確認できる。
イントロが鳴る。
ギター。
リズム。
そして歌。
カリフォルニアの海岸が次々に登場する。
サーフィンをするなら、
ここ。
ここ。
ここ。
まるで全米サーフィン案内である。
明るい。
速い。
楽しい。
Beach Boysそのもの。
ところが。
音楽を知っている人なら、
「あれ?」となる。
「Sweet Little Sixteen」に、よく似ている
Chuck Berryの「Sweet Little Sixteen」を続けて聴いてみる。
似ている。
かなり似ている。
メロディの骨格。
進み方。
そして何より、
地名を次々と並べていく発想。
Chuck Berryは、アメリカ各地でロックンロールに熱狂する若者たちを歌った。
Brian Wilsonは、
アメリカ各地のサーフスポットを歌った。
テーマは違う。
歌詞も違う。
でも設計図が近い。
Chuck Berryのロックンロールを、
サーフィンの歌へ作り替えた。
そう聞こえる。
これは単なる「影響」では済まなかった
ここから、話が少し生々しくなる。
初期盤では、「Surfin' U.S.A.」の作曲者としてChuck Berryの名前は入っていなかったとされる。
しかし「Sweet Little Sixteen」との類似性が問題になり、のちにChuck Berryへ作曲クレジットが与えられることになった。Vocal Group Hall of FameのBeach Boys史でも、当初の表記から後のプレスでBerryが作曲者として扱われるようになった経緯が紹介されている。
つまり、
「影響を受けました」
では終わらなかった。
権利の問題になった。
だから「因縁」という言葉が少し似合う。
でも、「盗んだ」で終わらせると面白くない
もちろん現代の感覚なら、
「似すぎでは?」となる。
実際、権利処理まで行われた。
そこは曖昧にする必要はない。
でも音楽史として面白いのは、その先だと思う。
Brian Wilsonは「Sweet Little Sixteen」をそのままBeach Boysで演奏したわけではない。
Chuck Berryが歌っていたのは、
ロックンロールに夢中なアメリカの若者。
Beach Boysが歌ったのは、
サーフィンに夢中なアメリカの若者。
つまり、音楽の骨格を借りながら、1950年代のロックンロール文化を、1960年代のカリフォルニア文化へ置き換えた。
ここが重要だと思う。
Chuck Berryの車が、Beach Boysではサーフボードになった
Chuck Berryの世界には、
車。
ハイウェイ。
学校。
ダンスホール。
ギター。
若者の移動。
がある。
Beach Boysにも、
車。
海。
サーフボード。
女の子。
夏。
若者の移動。
がある。
そう考えると、二組は実はかなり近い。
Chuck Berryが描いたのは、
1950年代のアメリカの若者文化。
Beach Boysが描いたのは、
1960年代のカリフォルニアの若者文化。
だから「Surfin' U.S.A.」がChuck Berry型になるのは、ある意味では必然だったのかもしれない。
Beach Boysは、Chuck Berryの作ったロックンロールの器へ、サーフボードを積んだ。
そんな感じがする。
「Surfin' U.S.A.」というタイトル自体が面白い
Chuck Berryの「Sweet Little Sixteen」は、アメリカ各地を巡る。
Beach Boysも、サーフスポットを各地へ広げる。
つまり、ひとつの場所の音楽ではない。
サーフィンはカリフォルニアの文化だった。
でもBeach Boysは、
「これは全米の若者文化だ」と言わんばかりに、U.S.A.と名付けた。
Chuck Berryがロックンロールをアメリカ中へ広げる歌を作り、Beach Boysはその方法でサーフ文化を全米へ広げる歌を作った。
やっぱり、よくできた翻訳なのである。
Brian WilsonはChuck Berryだけではなかった
もちろん、Beach BoysをChuck Berryだけで説明するのは無理がある。
最大の特徴であるハーモニーには、
The Four Freshmenなどの影響がある。
Brian WilsonはそこへChuck Berry型のロックンロールを組み合わせた。
結果、
Chuck Berryのビート
+
美しい多声コーラス
+
カリフォルニア文化
という、今までなかった音楽が生まれた。
Beach Boysという発明の面白さは、新しい材料を発明したことより、すでにある材料を、誰もやっていなかった配合で混ぜたことなのかもしれない。
音楽は、本当にゼロから生まれるのか
今回の「1×1」は、少し厄介な問いを投げてくる。
音楽はどこまで似ていたら影響で、
どこからが盗用なのか。
何を変えれば新しい作品になるのか。
これは簡単には答えられない。
Chuck Berry自身だって、その前のブルースやカントリーやR&Bから多くを受け取っている。
ロックンロールそのものが、さまざまな音楽が混ざって生まれた文化だ。
だから、
「完全なオリジナル」
という考え方そのものが、音楽では案外難しい。
ただし。
影響を受けることと、権利をきちんと処理することは別問題。ここは分けて考えた方がいい。
「Surfin' U.S.A.」は、その両方を考えさせる格好の例なのだと思う。
そしてBeach Boysは、Chuck Berryから離れていく
ここからがBeach Boysのすごいところだ。
もし彼らが「Surfin' U.S.A.」型の曲だけを続けていたら、おそらく1960年代前半を代表する楽しいサーフ・バンドとして歴史に残っただろう。
でもBrian Wilsonは、そこでは止まらなかった。
「In My Room」。
「Don't Worry Baby」。
「California Girls」。
そして、『Pet Sounds』。
Chuck Berryの直接的な影響から、どんどん遠くへ行く。
ハーモニー。
オーケストレーション。
スタジオ録音。
内面世界。
数年後には、「Surfin' U.S.A.」を作った人と同じ人物とは思えないところまで行ってしまう。
ここが面白い。
源流は、やがて見えなくなる
Beatlesもそうだった。
Rolling Stonesもそうだった。
Beach Boysも同じ。
最初はChuck Berryがはっきり見える。
でも成長するにつれて、自分たちの音楽になっていく。
源流は消えたように見える。
でも本当は、地下を流れている。
Beatlesのポップセンス。
Stonesのギター。
Beach Boysの初期の推進力。
それぞれ違う形でChuck Berryが残っている。
1964年|同じステージに立つ
そして面白い接点がもう一つある。
Chuck Berry公式の年表によれば、Berryは1964年に収録された映画『T.A.M.I. Show』に出演し、そこにはBeach BoysやRolling Stonesも登場した。
考えてみると、すごい光景だ。
源流にいるChuck Berry。
その音楽から大きな影響を受けたBeach Boys。
そしてRolling Stones。
同じショーの中にいる。
ほんの数年前まで、若いミュージシャンたちはChuck Berryのレコードを聴いていた。
その本人と、同じステージの時代へ来た。
ロックンロールの世代交代が、目の前で起きている。
Chuck Berryは、サーフィンをしていなかった
たぶん。
少なくともChuck Berryと聞いて、サーフボードは思い浮かばない(笑)。
なのに、Beach Boysの代表曲の一つの奥には、Chuck Berryがいる。
これが音楽の面白さだ。
影響は、同じ格好をして現れるとは限らない。
セントルイスのロックンロールが、
カリフォルニアへ行く。
ギターリフが、サーフィンになる。
「Sweet Little Sixteen」が、
「Surfin' U.S.A.」になる。
文化が移動すると、意味まで変わる。
因縁だけれど、それだけではない
Chuck Berry × The Beach Boys。
確かに「Surfin' U.S.A.」をめぐる権利問題がある。
だから因縁の組み合わせでもある。
でも、それだけで終わらせたくない。
むしろ僕には、ロックンロールという音楽が、次の世代によって別の若者文化へ翻訳された瞬間に見える。
Chuck Berryは、ロックンロールをアメリカの若者の音楽にした。
Beach Boysは、そのエネルギーをカリフォルニアの太陽と海へ持っていった。
そして数年後、
Brian Wilsonはそこからさらに離れ、
『Pet Sounds』まで行った。
源流。
模倣。
問題。
変換。
独立。
一組のアーティストが自分の音を作るまでには、
きれいな一本道だけではない。
いろいろある。
だから面白い。
Chuck Berry × The Beach Boys。
ロックンロールは、海へ行った。
そして、そこで新しい音楽になった。
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