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AX推進部門の中で、なぜ話が噛み合わなくなるのか― 同じミッションを掲げているはずなのに

なぜ、同じミッションなのに話が噛み合わないのか

AX推進部門には、共通のミッションがあります。
生成AIを活用し、組織の意思決定や業務のあり方を変えていくこと。

それにもかかわらず、
同じ部門にいるはずのメンバー同士で、
うまくコミュニケーションが進まない場面を多く見かけます。

ミッションは同じなのに、なぜなのでしょうか。


意欲や能力ではなく、時間軸の違いとして捉える

私は、このすれ違いを、
意欲や能力の差ではなく、
それぞれが責任を負ってきた「時間軸の違い」だと捉えています。

たとえば、これまでDX推進部門でPMを担ってきた人や、
上流設計を担当してきたメンバーにとって、
生成AIの登場は「待っていました」という感覚から始まることが多いように感じます。

DX推進の現場では、
データ整備や資料作成、関係者調整など、
人のスピードだけではどうにもならない業務を数多く経験してきました。

彼らは、
半年後、1年後に「変わっていないと困る未来」に
責任を負ってきた人たちです。

だからこそ、
今変えなければ将来が詰む、
という感覚を強く持っています。


守ってきた人が見ている、別の将来

一方で、システムや基盤を主に担当してきたメンバーは、
生成AIの急速な発展に対して、比較的慎重な姿勢を取ることが少なくありません。

彼らが責任を負ってきたのは、
3年後、5年後も「壊れずに動いている未来」です。

過去の経験から、
新しいものに飛びついた結果、
後になって大きな負債として返ってくるケースを
何度も見てきました。

そのため、
「遅れること」よりも
「軽率な判断が将来の足かせになること」の方が怖い。

この判断も、極めて合理的です。

どちらも将来を見ています。
ただし、見ている将来のスパンと質が違うのです。


失敗が、いつ返ってくるかという感覚の差

この違いは、
「失敗がいつ、どう返ってくるか」という感覚の差にも表れます。

前に出てきた人ほど、
失敗は早く返ってきます。
しかし、その分、修正する時間も残されています。

一方で、守ってきた人ほど、
失敗は時間差で返ってきます。
しかも、その頃には取り返しがつかないことも少なくありません。

だからこそ、
前者は「まず動こう」と言い、
後者は「もう少し様子を見よう」と言う。

これは感情の問題ではなく、
それぞれの立場に立てば、自然な判断です。


技術のプロフェッショナルの中でも、スタンスは分かれる

エンジニアについても、一枚岩ではありません。

最新技術の情報を追い続けながらも、
組織の制約上、自分たちでは決められないことを理解している人。

状況を見ながら意見を述べるタイプもいれば、
自ら前に出て、AX推進部門の一員として
組織を動かそうとする人もいます。

ここでも、
能力差ではなく、裁量の違いが表に出ているように見えますが、
その裁量の違いも、結果的には
「見ている時間軸の違い」として現れている
と感じています。


AX推進部門に限られた話ではない

AX推進部門の話をしてきましたが、
ここからは、それ以外の部署の社員についても考えてみたいと思います。

多くの社員は、日々の既存業務で手一杯です。
自分の業務が楽になるのであれば、
生成AIの活用に時間を割くことを検討する余地はあるでしょう。
しかし実際には、
それを考える時間そのものが取れないほど、
日々の業務に追われているケースも少なくないように感じます。

生成AIを使えば楽になるかもしれない。
一方で、業務プロセスを変えることで、
何かミスが発生しないだろうか。
これまでと異なる流れになることで、
安定するまでスケジュールが読みにくくなるのではないか。

そうした懸念を一つひとつ考えていくうちに、
「今のままでいい」という判断に落ち着いていく。
そのプロセス自体は、決して不自然なものではありません。

あるいは、
新しい取り組みは「組織として決まったら対応するもの」であり、
自分が主体的に考える役割ではない、
という認識を持っている人も一定数いるでしょう。

その結果として、
推進部門との間に、どこか距離を取った関係性が生まれるのも、
無理はないことだと思います。



運用の時間軸と、変革の時間軸

多くのすれ違いは、

・今、この案件をどう進めるか
・この判断が、1年後、3年後に何を残すか

どちらに重心を置いているかの違いから生まれます。

これは、
短期思考と長期思考の対立というよりも、
運用と変革、それぞれが前提としている
時間軸のズレに近いものだと感じています。

ここで伝えたいのは、
誰が正しいか、という話ではありません。

組織の中には、
異なる時間軸、異なる責任、異なる判断基準を持つ人が
同時に存在しています。

だからこそ、
どの立場に立って判断しているのかを
意識しないまま議論を続けるほど、
すれ違いは大きくなっていきます。

そして今、多くの人にとって、
「この組織に居続ける前提で、自分のキャリアを考えていいのか」
を、改めて考える時期が近づいているように感じます。


キャリアの選択に、AIが与える錯覚

組織を信じ、その中で変化を起こそうとするのも正解です。
一度、組織を離れてみるのも、選択肢の一つでしょう。

選択は自由で、自己責任です。
私は、とやかく言う立場ではありません。

これはあくまで私個人の立場としての補足ですが、
若手で、まだ十分なビジネススキルを身につけていない段階で、
副業を本業に切り替える判断は、慎重であるべきだと感じています。

生成AIによって仕事ができるようになった「感覚」と、
市場で通用するスキルや価値は、必ずしも一致しません。

AIがもたらす錯覚によって、
自分のスキルセットや市場価値を見誤ることだけは、
起きてほしくないと思っています。



次回に向けて

AX推進は、技術の話であると同時に、
人のキャリアと選択の話でもあります。

次回は、
こうした時間軸のズレを前提にしたとき、
AX推進部門や「考える人」は、
どこに立ち、どんな役割を担うべきなのか。

もう一段、踏み込んで考えてみたいと思います。

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