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考える人はどこに向かうのか― AX推進が進む中で感じている違和感

生成AIの活用が進み、
業務は以前よりも速く回るようになりました。

この変化自体は、間違いなく前向きなものだと思います。
一方で、AX推進に関わる立場として、
最近少し気になっていることがあります。

それは、「速く判断すること」が、いつの間にか善として固定されつつあるのではないかという感覚です。


速さが求められるのは、自然な流れ

生成AIを使えば、
資料のたたきや要約、整理といった作業は、
短時間で終えられるようになりました。

役員やマネジメント層が「もっと速く判断できるはずだ」と期待するのも、自然な流れだと思います。

ただ、その期待が、すべての仕事に当てはめられ始めたとき、少し違和感が生まれます。

すぐ決められる仕事と、そうでない仕事

実務の中には、すぐに決めてよい仕事と、
少し立ち止まった方がよい仕事があります。

たとえば、
•定型的な承認や事実確認
•過去事例を踏まえた初期案の作成

こうした仕事は、生成AIを使いながら即断で進める方が合理的です。

一方で、
•方針や優先順位に関わる判断
•組織や評価に影響する決定

こうした判断まで同じスピード感で扱ってしまってよいのかは、慎重に考える必要があるように感じています。


迷う時間や、先送りの背景にあるもの

仕事をしていると、
どうしても判断に迷う瞬間や、
少し先送りしたくなる場面があります。

それは必ずしも、怠惰や判断力の欠如だけが理由ではありません。
•影響範囲が見えない
•前提条件が揃っていない
•自分なりに引っかかる点がある

そうした状態で立ち止まることは、
考えている証拠でもあります。

AX推進の文脈では、この「迷い」をどう扱うのかが、一つの分かれ道になるように思います。


生成AIに聞けることと、聞いてはいけないこと

生成AIは、とても優秀な補助輪です。
ただし、すべてを任せられるわけではありません。
•何を決めるべきか自体が曖昧な問い
•前提や責任の所在が定まっていない判断

こうしたものをそのまま投げてしまうと、
答えは返ってきても、人が考える余地はどんどん小さくなっていきます。

AIは、考えなくてよい状態をつくる道具ではなく、考える人の思考を広げるための道具なのだと思います。


思考が深まることと、時間がかかること

また、考える人にとって生成AIは、
心地よい「壁打ち相手」になる場面もあります。

人と対話するのと同じように、生成AIとの対話を重ねることで、思考が深まることもあるでしょう。

一方で、
思考が深まるほど時間がかかる可能性があること、そして「どこで思考を止めるか」を
人が判断する必要があることも、あらためて意識する必要があるように感じています。


速さと質をどう見るか

生成AIを使うことで、短時間でそれなりに整ったアウトプットを出すことは、以前よりずっと簡単になりました。

一方で、
時間をかけて問い直し、判断の背景まで整理されたアウトプットは、完成までに時間がかかります。

どちらが良い、という話ではありません。
ただ、
どの仕事で、どちらが求められているのか
を分けて考えないと、評価の軸が歪んでしまうように感じています。


「全部できる人」ではなく

AX推進の文脈で価値が高まっているのは、
すべてを一人でこなせる人よりも、
•自分の苦手を把握している
•AIに任せる部分を意識的に切り分けている
•人が考えるべきところに時間を使っている

そうした人ではないでしょうか。

自分の弱さを前提に、AIと協働できる人の方が、
結果として判断の質を高めているように見えます。



おわりに
生成AIの活用が進むほど、私たちは「速さ」とどう向き合うのかをあらためて問われている気がします。

AX推進は、AIを使うこと自体や、スピードを高めることを否定するものではなく、人がどう考え、どう判断するかを組織としてどう扱うかを考える営みなのだと思います。


次回は、こうした「速さ」と「思考の質」の話が、
なぜ同じAX推進部門の中でも噛み合わなくなるのか。
その背景にある“時間軸”や“責任の違い”から、
もう少し整理してみたいと思います。

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