第3部|「これは運の貯金だよ。3年後」
手続きをすべて終えた夜。
わたしはあの子に「堅あげポテト」を差し出した。
「頑張ったね」
……それだけ言うのが、精一杯だった。
あの子はポテトをバリバリと、いい音を立てて噛みながら、真っ直ぐな目でこう言った。
「これは、運の貯金なんだと思ってる。
3年後だ」
参ったなあ。
わたしが過去の点数にこだわろうとすると、
「浪人生じゃないんだから必要ない」
そう言って、あっさり未来へ視点を飛ばしてしまう。
昔からそうなの。
あの子は、わたしよりずっと大人だ。
わたしに氣を使うような、柔な育て方はしていない。
だからこそ、あの言葉は慰めなんかじゃない。
あの子自身の内側から、
そのまま出てきた言葉なんだと思った。
自分で考え、自分で立ち上がろうとする背中。
やっぱり、たのもしい。
あの日。
万全じゃないコンディションでも「行く」と決めて、戦い抜いた。
その経験はきっと、
あの子の中に何かを残している。
わたしたちが必死に探していた未来は、
思い描いていた形とは少し違った。
けれど、あの子の視線はもう
次の「3年後」をまっすぐ見ている。
そのたのもしさに救われながら、
わたしの心は、まだ少し追いついていない。
それでもいい。
あの子が前を向いているなら、
わたしもきっと、いつかこの「不本意」を笑って束ねられる日が来る。
あの子が貯めた「運」が、
3年後にどんな花を咲かせるのか。
その景色を一番近くで見るために、
わたしもまた、わたしの場所で立ち上がろうと思う。
まあ、人生。
予定調和じゃない方が、
案外おもしろいのかもしれない。
「日々の氣付きを、零のまま置いています。もしよければ、また読みに来てください。」
