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『バーバリアン狂騒曲』翻訳の裏話⑤ 大画面で改めて感じた、映画の力

皆さまこんにちは。難民映画祭広報サポーターの青井夕子です。

先日、字幕制作を手がけた『バーバリアン狂騒曲』を初めて大きなスクリーンで見る機会をいただきました。そして一視聴者としてとても感動したので、ぜひより多くの方に見ていただきたいと思い、番外編として⑤を書かせていただこうと思い立ちました。


久々のチーム集合

参加したのは6月30日に文京シビックホールで行われた「難民映画祭パートナーズ上映会2026第2部」です。
上映前には、ビル内のカフェで翻訳チームのメンバーと会うこともできました。平日の夕方ということもあり集まったのは4人でしたが、中には九州から飛んできたメンバーもいました。
字幕制作を行ったのはちょうど1年前です。一つひとつのセリフについて、自分の担当範囲を超えて一緒になって議論を重ねた熱い思いを持つ人たち。作業中のことを語り合っていたら、うっかり上映時間ギリギリになってしまい、会場まで小走りで向かいました。

何とか受付を済ませ席に着くと、上映前に文京区の総務部総務課ダイバーシティ推進担当の方から、区で取り組んでいる難民支援活動についてのお話がありました。地域の中で難民支援について考え、実際の行動につなげる取り組みがあることを知り、映画を見る前から背筋が伸びる思いでした。


大画面で見る迫力と、観客の反応

明かりが落ちて映画が始まると、まずそのスクリーンの大きさと音のボリュームに圧倒されてしまいました。
あれだけ一字一句見つめてきた字幕がなんと小さく見えること!
翻訳作業は字幕制作ソフトを使って行うので、私のノートパソコン上での映像のサイズはせいぜい縦横10cm×15cmくらいですし、音もイヤホンで聞いています。なのでどうしてもそれと比較してしまうのですが、真っ暗な中、大画面・大音量で見るというのは、映画の中に入り込んだかのような、ものすごい臨場感を味わえるものですね。人物の目力が強くなり、作品の力そのものがパワーアップしたように感じました。

また、周りの観客の「ニヤッ」「フフッ」「アッハッハ!」という笑いや悲しみに涙している様子、時には驚いて思わず漏れた「えぇー?」という声まで聞こえてきて、皆さんが映画に集中している様子がとてもよく分かりました。翻訳に関わった者にとって、これは忘れられない特別な体験です。


笑って観るうちに、「他人事ではない」と気付かされる作品

『バーバリアン狂騒曲』のジャンルはコメディで、大・中・小の笑いが起きます。困っているシリア人家族のために、戸惑いながらも何とか力になろうとする村の人たちの姿が滑稽に描かれています。その可笑しさに笑っているうちに、受け入れる側、受け入れられる側、それぞれの不安や戸惑いが見えてきます。

親切心から「無料で食料も住居も提供する」ことにしたけれど、受け取る側は「物乞い」のような気持ちになってしまう。

ちゃんとお金を払いたいし、自分のスキルを活かして村の役に立ちたいけれど、仕事がない。

受け入れ賛成派と反対派の対立。その間に立たされ脅迫電話がかかってきてうろたえる村長。

こんなシーンが随所に登場します。
余談ですが・・・
村長への脅迫電話の内容で「膝の皿を割ってやる」と具体的な部位を言っているのも面白いところです。ここを読みやすさ・分かり易さを優先して「歩けなくしてやる」と訳すのもアリだったかもしれませんが、それじゃ怖さだけで面白さゼロになりますね。
つい脱線してしまいました。ごめんなさい。

「コメディ仕立てにすることで軽い気持ちで多くの人に見てもらいたいと考えた」
というジュリー・デルピー監督ですが、人物描写の綿密さには驚かされます。何気ないセリフや、登場人物のちょっとした行動が、その場だけのものではなく、別の場面につながっています。
15人以上にもなる人物一人ひとりを丁寧に描くことで、彼らの状況や気持ちが手に取るように分かります。
だから観客は自然に「自分だったらどうするだろう?」と考えさせられるのです。改めて、見事な構成だと思いました。
上映時間は101分ですが、ストーリー展開が速く始まりから終わりまでグイグイ進み飽きません。その間、きっと心はあちこちに揺さぶられると思います。でも最後は優しい気持ちになれる映画です。


映画を見た後に心に残るべきなのは、登場人物の表情や声、物語の余韻だと思います。
字幕を読んでいることを意識しないまま、笑ったり、驚いたり、胸を痛めたりできる・・・
「よい字幕は透明なもの」と翻訳学校で学びました。この作品の日本語字幕も、透明に近いものになっていたらいいなと思います。

エンドロール後に翻訳チーム全員の名前がスクリーンに映された時は、胸がいっぱいになりました。両隣に座っていた翻訳チームの仲間と、小さく拍手を交わしました。

『バーバリアン狂騒曲』は7月31日まで視聴可能です。この機会にぜひご覧になってください。
この作品が、ひとりでも多くの方に届きますように。
そして住みかを奪われた人たちのことを少しでも考えるきっかけとなりますように。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。心から感謝いたします。

『バーバリアン狂騒曲』字幕翻訳チームリーダー 
青井夕子


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