【2025年新作童話】ステーション#2〈ブルーマンデー〉

#2〈ブルーマンデー〉

いっそのこと
雷にでも撃たれてしまえば
良かったんだ
落ちてしまえば、
もう恐怖と戦うこともない
だけどわたしは落ちたくなかった
だから捨てた
わたしの大切だったもの
全てをーー

「あったー!!お宝だー!!」
受付の奥にあった金庫を弄りながら
声高らかに海賊が叫んだ。
「お宝?」
仲間に混じりながら、わたしが覗く。
重厚に鍵の掛かった金庫の中には
笑ってしまいそうなくらい
ポップなキャンディが…

「それ、何?」
海賊の親父が、その何本もあるうちの
一本の黄色いロリポップを
わたしに渡す。

「アチュートメント・ロリポップ??」
包み紙を剥がして
口の中へ放り込むと途端にドキドキして
何とも言えない気分になった。
胸が締め付けられて、とても苦しい。
切なくてどうしようもなく辛い。
いっそのこと嫌いになってしまいたい。
なのに、それすら出来ない。
四六時中そのことばかり考えて
お腹が一杯で食欲もなくて
切ない。苦しくてドキドキが止まらない。
「これ、何?」
包み紙には
『惑星年齢域/金星/16〜25才の姿』
とある。
「アチュートメント・ロリポップ!
仮の姿を用意できる
お宝だゼェ!!」
宇宙海賊は緑のロリポップを
口に放り込んだ。

途端に成功者の姿へ変身した。
「これは成功の味!
お前のは初恋の味だゼ!」
ビックリして
金庫のピカピカの板に自分を
映してみる。
わたしもだ!!
お化粧なんて初めてだし
お洋服もすごく可愛い。
短めだった髪が腰まで長くて
フワフワしてる。まるでコットンキャンディ!
ちょっと身長も伸びて
お姉さんって感じ!
「本当の乗り物はこれからだゼェ!!」

東の地平線から
新しい顔をした朝日が昇る。
朝の列車を待つ黄色い線の内側で
皆同じ顔色と同じ色の
スーツを着たサラリーマン達は
苛々として列車を待つ。

貧乏揺すりを始めた横の人が
わたしにぶつかると
駅のアナウンスが響いた。
「ようこそ、ブルーマンデーへ。
ダイレクト行き、
順行の方は出口Dへ
レトログレード行き、
逆行の方は出口Rへ…」
奇妙なアナウンスに反応した
中学生は
「レトログレードって?」
ブルーの背広を着たサラリーマン達は
中々来ない乗り物に
苛立ちを感じている。

駅の表札には
「ブルーマンデー」と奇妙な文字が
建っており大人達は話しかけても
青い顔をしている。
「タナトスだーー!!!」

誰かが叫ぶと
ホームに化け物が現れた。
逃げ出した人々の中で
わたしは必死に逃れようと走る。
が、化け物のスピードが速い。
化け物は次第にわたしに追い付き
ブルースーツの男達は
口の中に吸い込まれていく。
もう、駄目かもしれない…
手の中に圧力を感じる。
一瞬で、わたしは
電話ボックスの中へ移動していた!

タナトスが通り過ぎて行く…
手が熱い。
「マモッテアゲル」
手の中が光ってわたしにサインを送った。

それも束の間、
電話ボックスのベルが物凄い
音量で鳴り出し、
もう心臓が幾つあっても足りない。
もう怖いことだらけ。
どうしてこんなに怖いところに
来てしまったんだろう。
怖いけど勇気を出した。
受話器を取って耳に当てる。

「そこから早く逃げて!!
××を××にするのよ!!!」
ノイズが混じっていて、ハッキリ聞こえない。
「え?聞こえないわ!」
音声はリピートを続ける。
その声は確かにわたしの肉声
だったのだーー。
ハッキリしないノイズがかった
自分の声に話しかけても
会話は成立しない。諦めて受話器を切る。
するとまた
けたたましくベルが鳴り出す。
そしてその音量は大きく
壮大になって
駅そのものに響いていく…
駅は壮大な音によって崩れていく。
またしても
わたしは電話ボックスに命を救われた。
駅は崩壊した。

そして、残ったのは
足元にある螺旋階段だけ。
そこにはとても奇妙な表札。
「順行←留→逆行」
「自己否定←留→自己肯定」
「天国←留→地獄」
人間達は人生の中で幾度となく
下降と上昇を繰り返す。
どこを目指したら満足で
何にぶつかったら不正解なんだろう。
悪者と呼ばれた愚かな人間。
悪者の末路には
地獄が待っているのだろうか。
わたしは確信した。
間違いなく、わたしは今
落下しているーー。
#2〈ブルーマンデー〉END
最終回まで読んだ貴方を
絶対に後悔させない。
来週水曜日もお楽しみに!!
コメント喜びます🥲
六花💌
