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遠い日の麦畑

小学校1年生の頃に住んでいた家の近くは麦畑が一面に広がっていました。私は仲良しの友人と三人でよくその麦畑に入り込み、かくれんぼなどをして遊んでいました。小学校1年生ですから、麦の穂丈は私よりずっと高く、下から見上げると空が覆い隠されていました。

そんな麦畑の中をその日は友人と二人で歩いていました。もう一人のA子とは前日に学校で言い争いをしており、その日は遊びませんでした。すると目の前に突然年上の女の子が現れました。それまでは麦畑の中で人に出会うことなどなかったのでびっくりしました。

彼女はとても怖い顔をして私たちの前に立ちはだかりました。そして「A子のこと知ってるよね」と言いました。私たちが「知ってる」と答えると、彼女は突然私たちの頬に平手打ちを加えました。そして友だちが大事に手に持っていた
箱を奪い取ると、中のものを地面に投げ捨て、無言で立ち去りました。箱の中にはこれまで3人が作った紙細工の人形が入っていました。

あっと言う間の出来事でした。何が起こったのかわからず呆然とする友人と私。麦の根元には人形たちが散らばっています。それらを見て私は無性に悲しくなりました。

A子とは翌日仲直りをし、以前のようにまたいっしょに遊ぶようになりました。ずっと後になって知ったのですが、上級生はA子のお姉さんだったのです。彼女は妹から言い争いのことを聞き、私たちを懲らしめようとしたのでしょう。

私にとっては理不尽な体験でした。でも、今になって思います。お姉さんの理不尽な暴力は妹思いの気持ちの表れだったのかもしれません。けれど、子ども時代の鮮烈な記憶として今も残っています。

あの頃の麦畑はもうありません。

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