見出し画像

ベストハードロックバラード ギター編(25曲)

 ピアノ、アコギに続いて、今回はギター(エレクトリックギター)をメインとしたハードロックバラード編。ギターはハードロックのサウンドメイキングに欠かせない楽器。リフにせよ、ソロにせよ、曲をよりハード&ヘヴィに、よりエネルギッシュに、よりドラマティックに仕立てる役割を持っている一方、長いロックの歴史の中で、奏法、エフェクター類の活用、フレーズパターンの多様化などにより、バラードに活用できる様々な静的な表現も発展してきました。
 ハードロックバラードに絞ると、ギターがメインで使われる楽曲パターンは、大きく分けてクリーンアルペジオ系、リフ系、ソロフレーズ系の3つ。それをもう少し曲調などのニュアンスの違いで細分化すると、おおよそ以下の6パターンに集約されるのではないかと思っています。

クリーンアルペジオ系
①クリーンアルペジオやストロークで、物悲しいメロディアスなフレーズをしっとりと鳴らしていくアコギバラードに近いタイプ。これが1番多いタイプで、これから紹介する曲の中ではDef Leppard, Dokken, John Norumなどがこれに当たりますね。

②エフェクターをふんだんに活用し、メジャーコードの明るく透明感あるアルペジオで展開する、洗練されたポップさを強く感じさせるタイプ。これはHeartやVandenbergの曲が該当します。

リフ系
③メジャーコードのキャッチーなリフをゆったり弾くことで、優しく包み込むようなスケールの大きな雰囲気を醸し出すタイプ。この手法は案外少なく、今回はRattとCheap Trickくらいですね。

ソロフレーズ系
④チョーキングやビブラートなどで音を揺らしたり、伸ばしたりする泣きのソロフレーズから始まる哀愁強調タイプ。Blue MurderやTwisted Sisterがこれに当たりますね。

⑤滑らかかつメロディアスなギターフレーズ(ハーモニー)が曲のイントロの決めフレーズとして機能しているタイプ。Bad 4 Good, Pretty Maids, Vince Neilなどがこのタイプ(M.S.G.はどっちの要素もある感じですかね)。

⑥ブルース的なエモーショナルなギターをゆったりと鳴らしていくスポンテニアスさ重視タイプ。これはブルース要素が強い70年代バンドに多く、Thin Lizzy, Bad Companyが当てはまりそうです。

複数の要素が絡み合っている場合や、更にはシンセやアコギとの複合体もあるので、きれいにスパッとは分けられませんが、目安としてご参考いただければと思います。


Bad 4 Good - Nothin’ Great about a Heartache

 あのスティーヴ・ヴァイが見出した10代前半~中盤の凄腕少年だけを集めたバンド
 イントロから心地良いギターフレーズ。適度な哀愁感と開放感。アコギを挟みメロウな展開を見せつつ、サビで大きく盛り上がる当時のハードロックバンドらしいパワーバラード。サビの最後にブレイクを少し挟んで”Cause there’s nothin’ great about a heartache”と力強い歌と演奏で締める展開が絶品。ちょっとハスキーなボーカルが楽曲をしっかりとハードな雰囲気に引き締めてますね。
 「心の痛みに良いところなどない」という歌詞の重さも含めて、とても10代が歌い、演奏してるとは思えない超高品質ハードロックバラード(ちなみに作曲はスティーヴ・ヴァイ)。
(“REFUGEE” 10曲目|1992年)

Bad Company - Anna

 同じポール・ロジャースの歌なのに、ブルースベースのブリティッシュロックという感じのFreeに比べると、明らかにハードロック的な整合感とアメリカンロック的親しみやすさがあるのがBad Company。”Love me Somebody”を始め、名ハードロックバラードが多数ありますが、その中でも、フェイクを多用したポールの渋い歌い回しが絶品の隠れた名曲をチョイス。
 ブルージーな要素はあるのに全く泥臭くならず、洒落た都会感を醸し出すイントロのギターから痺れますモータウン系ソウルっぽい雰囲気。ドラムとベースも最高の仕事っぷり。そしてなんと言っても、ポールの歌い回しのセクシーなこと。目立たない曲ですが、ソウルフルで、聴いてると思わず酒が進んでしまうような、深みのある逸品。
(“STRAIGHT SHOOTER” 7曲目|1975年)

Blue Murder - Save My Love

 ロングトーンによる痺れまくりのチョーキングフレーズから始まる名バラードサザンオールスターズを思わせるような洒落た雰囲気。爽やかなのに泣かせる。思わずカラオケで歌いたくなるようなポップ性がありますね。
 こういう様々な音楽ジャンルを飲み込んで自分色のハードロックに染め上げていく超越感は、Thin Lizzyのフィル・ライノット的。なお、この曲が収録された”NOTHIN’ BUT TROUBLE“のアルバム全体も、1stがWhitesnake路線(サーペンスアルバスは俺の能力で作ったんだ誇示)だとすると、歌い方含めて明らかにThin Lizzyの多様性やポップ性を意識してます。
 何年経って聴いても全く古くならない普遍性を持った哀愁の名曲。ジョンの歌もギターも何もかもが圧巻。改めて真の天才だと思いました。
(“NOTHIN’ BUT TROUBLE” 7曲目|1993年)

Cheap Trick - Never Run Out of Love

 ロビン・ザンダーのボーカルからいきなりスタートするCheap Trickらしい爽やかなバラード
 ギターも、アコギも、キーボードも色々入ってますが、曲全体をゆったりとしたギターリフが引っ張っていくので、”ギター編”に入れ込みました
 イントロのボーカルメロディが、サビではコーラスになり、よりメロディアス度が高まっています。爽やかさと適度な哀愁感が絶品。曲後半では、キーボードとギターが一体となり、繰り返されるメインメロディをより盛り立てていきます。とにかくボーカルメロディが優れた曲ですね。
 グランジ/オルタナティブ全盛期に発表され、あまり売れなかった”WOKE UP THE MONSTER”収録曲ということで、世の中の注目は集まりませんでしたが、作曲はリック・ニールセンとSurvivorのジム・ピートリックというヒットメーカーの2人。80年代のアルバムに収録されていたらきっとヒットしたであろう隠れた名バラード
(“WOKE UP THE MONSTER” 4曲目|1994年)

Danger Danger - One Step from Paradise

 イントロからキラキラ感あるキーボードに、メロウなギターフレーズが絡んでくるコテコテに甘いメロハーバラード。テッド・ポーリーの甘い声が、楽曲のスウィート感を更に高めてます。
 ヴァースまではキーボードメイン、ブリッジからバンドサウンドも入り、サビで一気に盛り上がる展開は、ベタですが完成度がすこぶく高く、とても心地が良いですね。ギターソロも、派手さはないもののしっかりとメロディアスなフレーズを紡ぐメロハー職人っぷり。
 アルバム全体が結構甘い雰囲気だけに、アルバムの流れで聴くよりも、単体で取り出して聴いた方が、この曲の持つポテンシャルの高さをより感じることが出来る気がします。
(“DANGER DANGER” 8曲目|1989年)

Deep Purple - Love Conquers All

 メロディアスな作風ながらも比較的地味目の楽曲が多い印象の”SLAVES AND MASTERS”の中では、飛び抜けてわかりやすく哀愁のメロディが展開されるバラード
 物悲しいストリングスからスタートし、クリーントーンのアルペジオで静かにスタート。ジョー・リン・ターナーのボーカルメロディが非常にメロディアス。この曲、構成が少し変わっていて、ヴァースを2回繰り返し、次にようやくブリッジで心地良く盛り上がるものの、絶頂直前まで展開しながらサビに行かずにギターソロへ。ただこれがリッチー・ブラックモア印満載の実に泣ける内容で、クライマックスへの橋渡しとしても最高の機能を果たしています。
 そしてようやくラストで登場するサビ。このメロディがまた物悲しく絶品ジョーの胸が張り裂けそうなソウルフルな歌い回しの官能さは、ポール・ロジャースにも匹敵するほど。隠れた名曲。
(”SLAVES AND MASTERS”6曲目|1990年)

Def Leppard - Love Bites

 ポップで非常に洗練された雰囲気のバラード。サウンドプロダクションやアレンジも信じられないくらい豪華に作り込まれていて、ギターも一体何本重ねてあるのやらといった感じ。全米1位を獲得し、世界中でも大ヒット
 クリーントーンを穏やかにつま弾くイントロから物悲しい雰囲気。デフレパ印の重層的なコーラスによるブリッジのメロディの流れが素晴らしく、そこだけで名曲確定。サビでは更にテンションを上げ、高音コーラスに合わせるように、ジョー・エリオットがハイトーンで絶唱。この胸に沁みるメランコリックなメロディが輪をかけて素晴らしい。
 ソフトで洗練された雰囲気なのに歌メロの泣きは濃厚という珍しいタイプのバラード。名曲。
(“HYSTERIA” 4曲目|1987年)

Dokken - Alone Again

 いまだにセットリストに欠かせないDokkenの代表曲の1つ
 クリーントーンのアルペジオでスタート。全体的にアメリカのバンドらしからぬ翳りがあります。哀しみに溢れた曲調ですが、歌詞も別れた女性を想い、独り身の自分を憂える寂しい内容。ドン・ドッケンの線は細いもののクリーンで伸びやかなハイトーンが、曲の持つ哀愁感を更に高めてます
 繊細なメロディが展開される一方、バックの演奏は意外とハード。ジョージ・リンチのリフも、ミック・ブラウンのドラムも非常にパワフル。ドンの優しいボーカルとの対比が面白いですね。
 ギターソロも力強いヴィブラートで熱く展開。ソロパートが終わっても、泣きのフレーズをエンディングまで弾きまくってます。哀愁味とHR/HMのバラードらしい力強さの調和が絶妙な名曲
(“TOOTH AND NAIL” 9曲目|1984年)

Ghost - Darkness at the Heart of My Heart

 80年代のアリーナロックへの憧憬を自身のサウンドに巧みに採り込んだ名盤”IMPERA”収録のドラマティックなバラード。
 ギターのクリーントーンによる物悲しい反復フレーズからスタート。テクノのような陶酔感がありますね。そこにトビアス・フォージの囁くようなボーカルが絡み、なんとも荘厳な冷んやりとした雰囲気。ブレイク後は、ビッグコーラスによる超キャッチーなサビに。そこから展開されるギターの美しいメロディ含めて、まるでAsiaかBostonかとでも言いたくなる見事な完成度。
 楽曲全体を通してドラマ性を高めるアレンジの仕掛けの多さと仰々しさはプログレとハードロックの中間に位置するMagnumやKansasっぽいと言えるかも。往年のハードロックバラードの手法と世界観を古臭くないやり方で提示してみせたトビアスの才能には感嘆するしかありません。
(“IMPERA” 9曲目|2022年)

Giant - I’ll See You in My Dreams

 セッションプレイヤー兼プロデューサーのダン・ハフ率いるGiant最大のヒット曲。全米20位。
 クリーントーンのアルペジオからスタート。シンセの音が緩やかに鳴り響く中、ダンの少しハスキー掛かった大人の色気漂う歌唱が素晴らしい。ギターも上手いですが、ボーカリストとしても食っていけるだけの才能を持っていますよね。
 サビではバンドサウンドと共に、強烈なフックを持ったメランコリックなメロディで一気に盛り上がる、まさにパワーバラードのお手本のような曲
 とにかく曲づくりとアレンジのセンスが抜群。どうすればキャッチーで心地良い流れの曲になるかを知り尽くしてる感じ。ゆったりとした泣きのメロディと流麗な速弾きによる計算されたギターソロも素晴らしい。ミュージシャンシップの高さを感じさせる流石の1曲。
(“LAST OF THE RUNAWAYS” 4曲目|1989年)

Heart - All I Wanna Do is Make Love to You

 メランコリックな名曲”Alone”も素晴らしいですが、明るくソフトなこちらも負けず劣らずの名曲。
 The Police”Every Breath You Take”Def Leppard”Hysteria”を彷彿とさせる、明るめのクリーンアルペジオ。エフェクト(コーラスやディレイ等)を上手く掛けて、透明感と独特の広がりのあるサウンドに上手く仕立ててます。
 プロデューサーは、ジョン・マット・ランジ。彼がプロデュースを手掛けたことがよく分かる洗練されたサウンドプロダクション。サビのポップなメロディが極めて秀逸ハードロックファン以外のリスナーにもすんなりと受け入れられるであろう親しみやすさがあります実際全米2位を獲得し、世界各国でも大ヒットしました。
(“BRIGADE” 2曲目|1990年)

House of Loads - Another Day from Heaven

 アメリカンロック的要素の強かった初期作に比べて、よりメランコリックなメロハー寄りになった再結成後の作品から。作曲はプロデューサーのジェフ・ケント。キーボードのグレッグ・ジェフリアは不参加ですが、ジェイムズ・クリスチャンのエモーショナルな歌唱さえあればHouse of Loadsは成立するのでサウンド的には大きな変化はなし。
 イントロの泣きのギターハーモニーで早くも心を鷲掴み。そこからキーボード主体の産業ロック的な展開に移行。ジェイムズの歌が本当に素晴らしい。ブリッジからはバンドサウンドが入り、グッと哀愁味が増し、そしてこの曲のハイライトであるコーラスへ。Last Autumn’s DreamやLillian Axeにも匹敵する強烈な哀愁のメロディが炸裂。歌詞もかなり重く、アメリカのバンドとは思えない寂寥感を感じさせてくれます。隠れた哀愁の名バラード
(“COME TO MY KINGDOM” 5曲目|2008年)

John Norum - In Your Eyes

 ポール・ロジャースやデヴィッド・カヴァーデイルと並ぶソウルフルなハードロックシンガー、グレン・ヒューズが歌う濃厚な泣きのバラード
 冷ややかな雰囲気のシンセが薄く流れる中、悲しげなクリーンアルペジオで曲はスタート。そこにジョン・ノーラムの泣きのギターが奥ゆかしく絡み、グレンのエモーショナルなフェイクへと展開していく導入部から早くも泣けてきます。サビで曲はグッと盛り上がり、グレンが高音を使ってエモーショナルに熱唱。巧みな歌い回しが琴線にバシバシ響いてきます。
 グレンの”Yeaaaaah”のシャウトに導かれるかのようにスタートするギターソロもこれまた絶品。短いながらも非常に印象的なフレーズをこれでもかと繰り出してきます。師匠ゲイリー・ムーアにも全く引けを取らないスローバラードにおける泣きの名演。
(“FACE THE TRUTH” 3曲目|1992年)

Kix - Tear Down the Walls

 完成度は過去イチなのに、何故かセールス的には振るわなかった”HOT WIRE”。この曲もヒットはしませんでしたが、大ヒットした”Don’t Close Your Eyes”を上回る煽情力を持ったバラードだと個人的には思っています。
 クリーントーンでの美しいストロークからスタート。一瞬ボーカル&バンドサウンドで盛り上がり、また静かな展開へと流れる前半戦。ブリッジで緊張感を少し高め、サビでダイナミクスが一気に頂点へ。スティーヴ・ホワイトマンが、甲高いハイトーンボイスで、フックの強いメロディを歌い上げるコーラス部の濃厚な展開が圧巻
 甲高い声が続くので、ハードロックファン意外のリスナーにとっては少しクドさがあるのかもしれませんが、逆にこれこそがハードロックバラードの醍醐味。強烈な高揚感が得られます。
(“HOT WIRE” 4曲目|1991年)

McAuley Schenker Group - This Night is Gonna Last Forever

 マイケル・シェンカーのメロディアスなギターフレーズからスタートするメロハー系パワーバラード。Aメロではアコギでしっとりしますが、全体的にはバンドサウンド主体。マイケルは、”Never Trust a Stranger”同様に、ポップな曲でもお構いなしにイントロやソロパート以外にもメロディアスなオブリガードを弾きまくり
 かつてBURRN!では「平坦」「のっぺり」などと批判されることが多かったロビン・マッコリーの歌ですが、個人的には非常にエモーショナルで安定感抜群のボーカリストだと思っています。この曲でも、持ち前の少しハスキーな声質を存分に活かした巧みな節回しが胸に沁みます隠れたメロハーバラードの逸品
(“M.S.G.” 10曲目|1991年)

Mr.Big - Anything for You

 Mr.Bigがまだブリティッシュロックへの憧憬を音に反映させていた頃の楽曲。ブルース由来の渋味、ブリティッシュロック的哀愁、ソウル的な官能、ハードロックらしい熱さと情熱の全てがバランス良く味わえる名バラード
 ポール・ギルバートの印象的なクリーントーンでの滑らかなギターフレーズからスタート。とにかくエリック・マーティンの歌が情熱的過ぎてヤバい。ブリッジでリズムが変わり、上手く場面展開。そして「お前のためなら何でもする」と歌う力強く情熱的なサビへ。2回目の”Anything for you〜”のエモーショナルな歌いっぷりは、何度聴いても胸が締め付けられるような感動を覚えます。
 哀愁のメロディから、お得意のスキッピング奏法による情熱的な速弾きへと展開するギターソロも超絶エモーショナル。やっぱり”To Be with You"よりこの曲ですね
(“MR.BIG” 9曲目|1989年)

No Sweat - Stay

 Def Leppardのジョー・エリオットがプロデュースした先行シングル”Heart and Soul”が母国アイルランドでNo.1を獲得し、期待の新人として日本でも伊藤政則が大プッシュ。マイナーなバンドですが、もしかすると90年頃にPower Rock Todayを聴いてた人ならご存じの方も少なくないかも?
 クリーントーンのストロークでスタート。キーボードに、少しブルージーな感覚のギターが鳴らされ、ハスキーなボーカルが中音域で大人な雰囲気のメロディを熱唱
 サビは分厚いコーラスでかなりキャッチー。一方でボーカルは結構渋い雰囲気。仄かなブルースっぽさが、Whitesnakeにも通ずる都会的でアダルトな雰囲気を醸し出すのに一役買ってますね。
(“NO SWEAT” 3曲目|1990年)

Pretty Maids - Please Don’t Leave Me

 発売当時、日本のHR/HMファンの間で大人気だったジョン・サイクスのカバー曲。
 まずイントロのギターの掴みが強烈。ジョン・サイクスの天才的なメロディセンスが堪能できます。Pretty Maidsバージョンでは、ここにキラキラ感あるキーボードを絡ませ、夏(というかサザンオールスターズ)を思わせる日本人には何とも聴きやすく親しみやすいアレンジ
 また原曲では、サビまで一貫してフィル・ライノットの低く渋い歌唱が聴けますが、このカバーではロニー・アトキンズがサビを桑田佳祐ばりに情熱的に歌い上げる形に改変曲の魅力を更に高みに引き上げています。
 少しテンポが早くメロディは穏やかな原曲も素晴らしいですが、後追いで原曲聴いた人の多くが、よりバラードらしいタメと上手いボーカルが堪能できるカバー曲の方を支持したんじゃないかなと思います。
(“SIN-DECADE” 11曲目|1992年)

Ratt - Givin’ Yourself Away

 パワーコードリフでシンプルに攻める分、アルバムを通しての表情に少し乏しいRattのカタログの中では、最も色彩豊かな作品ということで個人的にはそれなりに評価している”DETONATOR”収録のパワーバラード。
 天才ヒットメーカー・デズモンド・チャイルドが作曲を手掛けた曲で、実はRattとしては初のバラード曲メジャーコードの穏やかなリフから始まるWhitesnakeの”The Deeper the Love”と同系統の楽曲。
 ヴァースパートの低音はともかくも、ブリッジ以降はお馴染みのスティーヴン・パーシー節。Rattのバラードだなあって強く思わせてくれます。ブリッジでメロディが転調し、そこからパッと明るく視界が開けるようなサビパートへ。この流れの巧さはデズモンド・チャイルドならでは。Ratt全盛期に発表されてたら大ヒットしたかも。
(“DETONATOR” 10曲目|1990年)

Talisman - Forevermore

 膨大なHR/HM作品で熱い歌を披露しているジェフ・スコット・ソート。HR/HM、ファンク、ソウル、AORと幅広いルーツを持つ彼の歌の良さが一番発揮された作品が、このTalisman(特に3rd以降)。
 ちなみにこの曲、バンド最終作に収録のフレディ・マーキュリーに捧げたバラード。とはいえ特にQueenっぽさはなく、AORテイストの感じられるエモーショナルな曲に仕上がっています。
 美しく優しい音色のクリーントーンのストロークからスタート。ボーカルが入ると一転、感傷的な雰囲気に。ジェフのエモーショナルな歌が沁みます。そして”ウーアーコーラス”の入ったメロウでスケールの大きなサビへジェフもそれに合わせて熱い歌唱を披露。ギターソロも活躍するパワーバラードなんですが、無邪気に盛り上がる訳ではなく、どこかムーディーで大人な雰囲気に仕立て上げてあるのがTalismanらしくて良いですね。
(“7” 7曲目|2006年)

Thin Lizzy - Still in Love with You

 フィル・ライノットとアイルランドのソウル系ボーカリスト・ヘンリー・ミラーのデュエットによる哀愁のブルージーなバラード
 これがもうスケールの大きなとんでもない名曲。ゲスト参加のゲイリー・ムーアのギターが全編に渡って泣きまくっています。フィルの情感豊かなボーカルもまた素晴らしい出来。ブライアン・ダウニーのジャジーなドラミングの影響もあって、やってることはかなりブルージーなのに、全く泥臭さのない洗練されたバラードに仕上がってます。
 このナチュラルな越境感覚と小洒落たセンスがフィル・ライノットの真骨頂なんですよねえ。あのソウルグループSADEのカバーが全く違和感なくハマってたという事実が、いかにこの曲が洗練された楽曲だったかを良く表していると思います。しんみりしたい気分の時に、つい手を伸ばしたくなる名曲中の名曲。
(“NIGHTLIFE”4曲目|1974年)

Twisted Sister - The Price

 まだグラムメタルのサウンドが洗練される前の84年発表曲ということもあって、このバラードも音的には結構無骨な感じ。伴奏のギターも、ヘヴィで荒っぽく、洗練とは程遠い演奏とアレンジ。まるで不器用な男の生き様を表しているような感じですが、実際歌詞内容も、バンド活動に賭ける自らの人生について歌ったものらしく、歌詞と曲調・演奏とが見事にシンクロしてますね。
 イントロのメロディアスなのに豪快感のあるギターソロの後、クリーントーンのアルペジオをバックに、ハスキーな高音で力強く歌うディー・スナイダーのボーカルが素晴らしい。正直こんな上手いボーカリストだったっけと思うくらい深みもあり、メロディと歌詞の良さもあって実に感動的。
 同時期に活躍していたDokkenやScorpionsの繊細な侘び寂び感とは異なる、骨太な哀愁が味わえるバラード
(“STAY HUNGRY”6曲目|1984年)

Vandenberg - Once in a Lifetime

 メジャーコードのリフで軽快にスタートし、テンポダウン後には、Def Leppard”Hysteria”を彷彿とさせる爽やかなクリーントーンのギターへ。そして、その上にバート・ヒーリングのちょっとスティーヴ・ペリーがかった軽やかなメロディが乗る、非常にポップな楽曲曲調はDef LeppardでコーラスはJourney といった印象サビでは分厚いコーラス。キャッチーで見事な完成度。爽やかな青空が思い浮かびます。
 このバラードに象徴される完成度の高いポップ路線に寄せてきたのに、なぜかセールス的に惨敗してしまった”ALIBI”。やっぱり皆んなVandenbergには、”Burning Heart”や”Different Worlds”みたいな70年代ハードロック風味を残した哀愁のねっとり系楽曲を求めてたってことですかね。ただ売れませんでしたが、優れたバラードだと思います。
(“ALIBI”3曲目|1985年)

Vince Neil - Forever

 ビリー・アイドルのギターだったスティーヴ・スティーヴンスが参加。ボーカリストのソロアルバムなのに、1番強烈なインパクトを残したのはギターというなかなか衝撃的な内容だった”EXPOSED”。
 とは言え、このバラードの主役はヴィンス・ニール。イントロのギターハーモニーから分かりやすく「甘く爽やかなバラードです」と宣言してます。その後、アコギのストロークで爽やかに展開。ヴィンスはバラード歌わすと本当に良いですね。ブリッジの”Is it too late?”のメロディが強烈なフックになり、”ウーアーコーラス”で盛り上がるメロウなサビに流れる展開が秀逸
 そして、ギターソロがまた素晴らしい内容。弾きまくりはしませんが、アコギ〜エレキ〜アコギ〜エレキと緩急を付けた見事な構成で、1分近くあるソロパートを劇的に盛り上げています(ヴィンス主役の曲でも凄い存在感!)
(“EXPOSED”11曲目|1993年)

Whitesnake - Is This Love

 全米2位の大ヒットバラード。派手に盛り上がる曲の多かったハードロックバラードに、ボーカルの低音の魅力とアダルトなサウンドでも魅力的な曲が作れることを示した画期的な楽曲。フィル・ライノットから継承したジョン・サイクスのナチュラルな越境感覚に、デヴィッド・カヴァーデイルの卓越した官能的歌唱が組み合わさったからこそ出来た楽曲という気がします。
 そして影でこの曲の魅力を底上げしているのがキーボードのドン・エイリー。空間に広がりを持たせながら、曲全体の空気感(この曲だと大人の哀愁感)をさり気なく支配するプレイが素晴らしい。
 もちろん、ジョン・サイクス印満載の超絶エモーショナルなギターソロも最高で、本当に一部の隙のない見事なバラード全く古さを感じさせないアレンジやサウンドプロダクションも秀逸。いまだによく聴きたくなる曲です。
(“WHITESNAKE”6曲目|1987年)

#Bad4Good
#NoSweat
#Houseofloads

いいなと思ったら応援しよう!