数字は合っているのに、なぜ中国子会社の実態は日本本社に伝わりにくいのか
はじめまして。現在、中国に駐在している公認会計士です。
仕事を通じて日本企業の中国現地法人に関わっていると、本社と現地の間で、こんなすれ違いが起きることがあります。
日本本社は、
「月次決算の数字は届いている。でも、会社の実態がよく分からない」
と感じている。
一方、中国現地法人は、
「期限までに決算を締めて、必要な資料も提出している」
と考えている。
どちらかが間違っているわけではありません。
問題は、数字そのものよりも、数字を見る前提や説明の仕方にズレがあることです。
今回は、中国子会社の実態が日本本社に伝わりにくくなる代表的な5つの理由をまとめます。
1.同じ勘定科目でも、中身が違う
「売掛金」「前払金」「その他未収入金」といった勘定科目は、日本と中国のどちらにもあります。
しかし、同じ科目名でも、実際に計上されている取引の内容や管理方法が同じとは限りません。
例えば、「その他未収入金が増えています」と報告されても、本社が知りたいのは残高だけではありません。
誰に対する債権なのか
いつから残っているのか
回収予定はあるのか
営業取引なのか、一時的な立替えなのか
ここまで確認して、初めて数字の意味が分かります。
2.発票と会計上の認識時期が混同される
中国の実務では、発票は非常に重要な書類です。
そのため、現場では「発票が発行された時点」や「発票を受け取った時点」を基準に処理を考えやすくなります。
ただし、発票の発行・受領時期と、会計上の売上や費用を認識すべき時期が、必ずしも一致するとは限りません。
本社側は、発票の有無だけでなく、
「商品やサービスは、実際にいつ提供されたのか」
という取引の実態を確認する必要があります。
3.損益計算書だけでは会社の変化を捉えられない
月次報告では、売上・利益・予算差異など、損益計算書の説明が中心になりがちです。
しかし、子会社で起きている問題は、貸借対照表に先に表れることがあります。
売掛金の回収が遅れている
在庫が積み上がっている
前払金や仮払金が長期間残っている
利益は出ているのに現金が減っている
損益だけを見ると順調に見えても、運転資金やキャッシュフローまで確認すると、違った姿が見えることがあります。
4.月次決算を締めること自体が目的になっている
毎月、短い期限の中で決算を締める現地経理担当者にとって、まず重要なのは期限に間に合わせることです。
その結果、次のような論点が後回しになる場合があります。
未計上費用の見積り
売上や仕入れの期間帰属
在庫の滞留状況
一時的な勘定に残っている金額の整理
前月から大きく変動した理由の説明
数字を早く出すことと、数字の内容を正しく説明することは別の作業です。
本社からの依頼も、「いつまでに提出してください」だけでなく、「どの変動について、何を説明してほしいのか」まで具体化する必要があります。
5.数字は翻訳できても、背景までは翻訳されない
中国語で作成された資料を英語や日本語に翻訳すれば、数字や勘定科目は読むことができます。
しかし、
なぜこの取引が発生したのか
中国では通常どのように処理されるのか
現地担当者がどこを問題だと考えているのか
本社がなぜその情報を必要としているのか
といった背景までは、単純な翻訳では伝わりません。
中国子会社管理では、語学力だけでなく、会計・税務・商習慣をつなぐ役割が必要になります。
本社が毎月確認したい3つの質問
まずは、月次決算の際に次の3つを確認するだけでも、子会社の見え方は変わります。
前月から大きく増減した貸借対照表科目は何か
利益の動きと現預金の動きに矛盾はないか
一時的な処理や翌月以降に修正予定の金額はないか
大切なのは、すべての取引を本社が細かく確認することではありません。
問題が起きやすい場所を決め、毎月継続して確認できる仕組みを作ることです。
試算表からこうした異常兆候を抽出するClaude Code用テンプレを作りました。コードは不要で、CSVを読み込ませるだけで確認事項と質問案を整理できます。
▶ テンプレはこちら
https://note.com/right_swift262/n/nb28f8db8ee3f
このnoteで発信していくこと
このnoteでは、主に次のようなテーマを、できるだけ専門用語を使わずに解説していきます!
・中国子会社の月次決算・管理
・海外取引の会計・税務
・日本本社と海外現地法人のコミュニケーション
・中国駐在で得た実務上の気づき
次回は「中国子会社の月次決算で、本社が確認すべき20項目」を取り上げる予定です。フォローしていただけるとうれしいです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、内容は筆者個人の見解です
