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本に愛される人になりたい(109) 村上元三「勝海舟」

 近々執筆を始めたい小説のために、勝海舟、新門辰五郎と清水次郎長の関連資料を読み込んでいて、ふと村上元三さんの「勝海舟」を思い出し再読しました。
 村上元三さんは戦前から活躍された時代小説作家で、何より読みやすいのが惹かれます。読者の目線に沿った言葉選びはまさに大衆小説作家ですね。
 本書は1969年に初版が発行され、祖母が読んでいたのを中学生のころ読んだはず。歴史の教科書は年表を追うだけ感が強く、だらだらと教壇の先生の話につき合っていたのですが、本書を読んでいると勝海舟という人物を通じ幕末を自分も生きている感じがしたものです。NHKの大河ドラマなどと同じく、教科書では分からない、生きた歴史がそこにありました。勝海舟こと勝麟太郎の人生は、ひと言で言えば「スジ」を通した人生だったかと思います。私がいま構想を練っている小説の骨組みの中心になるものも、この「スジ」を通すことになりそうです。幕末動乱期に、この「スジ」を通したのは勝海舟だけでなく、彼とは深い繋がりがあった本所の新門辰五郎、そして新門辰五郎と深い繋がりがあった清水次郎長…と、同時代に素敵な漢たちの姿がありました。
 彼が残した言葉は、「氷川清話」にも数々現れますが、たとえば「徳川の政治と思うから間違っておる。天下の政治でござる。」は、現代の政治家たちも改めて考えて欲しい言葉です。
 貧しい御家人の勝小吉の長男だった勝麟太郎は剣術をおさめつつ、やがて蘭学を学び、咸臨丸でアメリカに渡り…と、幕末という時代の大海原へと身を置きます。
 歴史上の人物をこうやって追うだけでも、歴史上には具体的な人物が、私たちと同じく喜怒哀楽を重ねつつ息をしながら生きていたことが確認できるもので、歴史は地続きなのだなぁと、改めて実感しました。中嶋雷太

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