🌸第14話「共鳴」
「兄さん!!」
白百合の叫びが夜気を裂いた。
崩れ落ちた黒百合の身体を抱きしめるその手は震えていた。
焦燥と涙が混じった声。
その光景を前に、私は息を呑んだ。
「……どうしたら、いいの……?」
呟きながら、私は黒百合の頬に手を伸ばした。
ひどく冷たい。
まるで、心臓の鼓動まで止まってしまったようで。
白百合は唇を噛み、静かに黒百合の胸の上に手を重ねた。
「兄さん……大丈夫だ、僕がいる。――絶対に離さない」
その言葉とともに、柔らかな光が白百合の手から広がる。
癒しと浄化の力。
けれど、それは自分の生命を削る行為でもあった。
「白百合、やめて! そんなの、あなたまで……!」
私は叫んだ。
白百合は一瞬だけ振り返り、穏やかに微笑んだ。
「僕は兄さんを、ひとりにはしない。それが僕の願いなんだ」
眩い光が辺りを包み、二人の身体が静かに崩れ落ちた。

「いや……! 二人とも、お願い……!」
どうしたらいいのかわからなかった。
涙が頬を伝って落ちる。
――失いたくない。
この手で、もう一度笑わせたい。
その瞬間、耳元でかすかな音がした。
――チリ、と。
かすみ草のピアスが光っていた。
「……これは……」
胸の奥に熱が広がり、私の中から何かがあふれ出す。
白百合の癒しの光と、黒百合の破壊の力の残響が、私の中に流れ込んでいく。
三つの光が重なり合い、ひとつの脈動になった。
――「大丈夫。あなたの想いは、ちゃんと届いているから」
どこからか、優しい女性の声が聞こえた。
懐かしくて、あたたかい声。
お母さん……?
花びらが風に舞い、光が渦を描く。
その中心で、二人の身体が柔らかく輝き出した。
呪いの黒い紋が溶け、白い花弁のように消えていく。
「……黒百合、白百合……!」
光が静まり、私は目を見開いた。
そこに立っていたのは、
幼い姿ではなく、凛とした17歳ほどの二人――
穏やかな瞳で、私を見つめ返していた。

