博士課程1年5月|学園祭で研究紹介1
大学の学園祭で、院生による研究紹介企画に参加した。
今回はその記録と反省を書いておきたい。
多様な専門を持つ大学院生が、自らの研究分野付近の「ちょっと面白い」話題を取り上げ、「誰でも通りすがりに聴くことができ、最先端の研究に関する土産話を持ち帰ってもらえる講演」をコンセプトにプレゼンを行う企画です。
10年ほど続く長寿企画で、「講演者を募集しているけど興味ない?」と友人から誘ってもらった。昨年の講演は観客として聴きにいって、何人か知り合いも出ていたから、二つ返事で参加することにした。
大学7年でも学園祭企画に参加できるなんて!と嬉しい気持ちになった。
自分が今回発表した内容は、この記事を10分程度にまとめたものだ。
実際に話した大まかな内容は以下の通り。
(発表してから時間が経てば経つほど、どんどんダメダメに見えてくるので見返したくない…)
接着とは何か
水中接着の難しさ
水中接着の需要
海洋生物を模倣した水中接着剤(ムール貝を例に)
フェノール修飾水中接着剤の接着原理(3HS polymerを例に)
接着強度とは何か(実際の測定手法紹介)
最新水中接着剤の接着強度

発表準備
学園祭本番(5月18-19日)で発表するまでの流れを紹介する。
2月に講演者募集フォームに回答、企画slackに招待され、3月に顔合わせ、4月に第1回練習会、5月に第2回練習会が、毎回3人ほどのグループでzoomにて開催された。
顔合わせでは、講演案を2,3個用意した。
自分の研究内容ドンピシャでなく、周辺のトピックでも良いとのことだったので、いくつか案を出すことができた。参加者の方に「これは面白そう」とか「これは興味があるけど、最新研究の話につなげるのは難しそう」など、コメントをいただき、改めて自分の案を冷静に分析することができた。

第1回練習会では、スライドを用いて発表内容を共有した。
この時点ではまだ10分に収まっておらず、内容にも自信がない状態だった。レビューしてくれる他の講演者の方々は、さまざまな分野で研究している大学院生である。専門が違うからこそ、テーマがブレるからカットした方がいい部分や、伝えたいことが何かはっきりさせた方がいいスライド、気になるから詳しい説明が欲しい部分、「解説ではなく自分の話として話す」ように意識する、といった指摘をいただいた。
ぼんやりしていた自分が「10分で話したいこと」をはっきりさせることができた。生物模倣が好きなので、それについてたくさん話してしまっていたが、接着剤が生物模倣であることが大事なのではなく、強い水中接着剤を作る手段としての生物模倣が意識できて、発表の流れが決まった。
同時に、このタイミングで要旨とタイトルを決めた。これらは、HPやSNSでの広報に活用された。
【講演紹介14】 超強力な水中接着剤
— 10分で伝えます!東大研究最前線 (@ut10min) May 12, 2024
しっかり貼ったはずの絆創膏が,お風呂で剥がれてしまったことはありませんか?水のある環境でものをくっつけたくても,普通の接着剤では困難です.水中で使える超強力な接着剤はどうしたら作れるのでしょうか? pic.twitter.com/2beuTPO6SQ
第2回練習会では、本番用のスライドを使って10分の発表練習をした。
事前に手元で練習していたら、どうしても11分になってしまうのでちょっと焦った。スライドの中にあるわかりづらい単語や、多用してしまっていた「くっつく」の言い換えなどを指摘していただいた。複数の練習会で一緒になった講演者の方の発表は、練習会までとは比べものにならないほどブラッシュアップされており、作られていく過程を見ているだけに、おどろきと尊敬の念を抱いた。すごい。
講演当日
学園祭当日は、2日間で3回講演した。
会場には平均して70〜90名ほどの来場者がおり、オンラインのウェビナー配信では30〜40名ほどの方が講演を聞いてくださったらしい。企画OBOGや、自分が以前所属していたサークルの同期や先輩、専攻の知り合い、家族など、たくさんの人に聞いていただいていたらしく、ありがたい限り。
五月祭も2日目となりました!
— 10分で伝えます!東大研究最前線 (@ut10min) May 19, 2024
昨日に続き、本日も様々な分野の大学院生による研究トークが予定されています。
まもなく11:00より企画開始です。
工学部3号館にてお待ちしております!
タイムテーブルなどはこちらからhttps://t.co/6p3TOGjQm0#五月祭2024 pic.twitter.com/54WHDe6BTW
発表後、10分間の質疑応答では、時間いっぱいに質問をいただいた。
発表は準備してきたものをしゃべればいいので気楽なものだが、質問はとても緊張した。どういう方が聞いているんだろう?と思うような(学会みたいな)質問が飛び出て、ずっとプルプルしていた。
来場者の中には、企画発足当初から毎回来ているような方もいらっしゃるらしく、愛されている企画なのだと実感した。講演後は、会場の外で個別の質問にも答えた。化学好きな高校生らしき学生と話したりと、実際に興味を持ってくださった方とお話しできたのはとても楽しかった。
出た質問やコメントは、「裏座長」と呼ばれる仕事のシフトに入ったメンバーが記録してくれていた。登壇しているとなかなかメモも取れないので、大変ありがたいシステム。いただいた主な質問は以下の通り。
つきにくい材料はあるか?
10 MPaという接着強さは実際どのくらいの値なのか?
空気中なら乾くとくっつくというのは感覚的にわかるが、水中で乾くとはどういう現象なのか?
剥がすことはできるか?
ムール貝の仕組みから水中接着剤が作れれば、逆にムール貝を岩から簡単に剥がすこともできるということか?体の中に入れて使うためにはどうしたらいいか?
-OHが増えると接着力が高まるのはどういうメカニズムか?
化学的なファクターのうち、最も寄与しているものは何か?
発表してみて
直接コミュニケーションする機会
自分がこういったイベントに参加する理由の一つは、自分が大学に入って感じた「高校までには知らなかった世界(学問分野)がたくさんあることへの気づき、おどろき、興奮」を、誰か(=過去の自分)に伝えたいからだ。自分が面白いと思う、「研究」や「それをしている人」を知ってほしい欲求がある。その点で、実際の参加者を前に発表し、リアクションがもらえる場は、絶好の機会だ。同じ理由で、高校時代から学園祭の手伝いをするのが好きだった。
学会もそうだが、ラボメンバー以外と研究内容について話ができるのはとてもうれしい。もっとも楽しいのは、他者からの反応だ。自分の話を好意的に受け取ってもらえるときも、批判的、敵対的、予想もしていなかったリアクションが得られるときもある。自分は物事に疑問を抱くのが苦手で時間がかかるので、できるだけ他の人の力も借りたいと思っている。素朴な疑問、答えにくい質問ほど、うれしい。
知人に自分の研究分野を知ってもらえた
今回、何人かの友人たちが発表を聞いてくれて、「わかりやすかった」「こんな研究があるとは知らなかった」「こうやって説明すればいいのか」と感想を伝えてくれた。家族や親戚も、ウェビナー配信で聞いていてくれたと連絡があった。(内容が全部伝わったかはわからないけど)自分が研究を頑張っているらしい、ということが伝えられたのは良い機会だった。
多様な講演者メンバー
講演者は、修士2年〜博士の学生で構成されている。専門分野も、ゲノム、材料、理論物理、数学、考古学、文学と(理系多めではあるが)幅広い。普段の院生生活で接点があるのは、せいぜい同じ専攻内くらいで、研究科すらまたいだ知人を得られるのは貴重な機会だ。
30代の先輩研究者である企画OBOGとの交流もあり、ちょっと先の将来ってこういう雰囲気なのかなと想像することができた。
講演者の一人である自分自身も、他の講演を聞くのがとても楽しい。新しいことを知るのはいつでもわくわくする。講演者としてだけでなく、参加者としても楽しめた。
どこまでを自分の専門と呼ぶか
正直に言うと、講演準備をはじめた時から今まで、「世界にはもっと詳しいひとが…」「自分がメインでやってる研究じゃないので…」と逃げたくなってしまう気持ちもあった。人前に立っていることがものすごく不安になる。でもこの先、毎回そう言って逃げ続けるわけにはいかない。
お世話になっている先生に相談してみたところ、講師になってはじめて授業を受け持った時に、似た悩みを抱えた話をしてくださった。
「先生」と呼ばれたくない、と思ったそうだ。
受け持った授業内容は、教科書を書くような先生たちがたくさん思い浮かぶのに、自分なんかが教えていいのだろうか、そもそも教えるほどの力量なんてない。初年度は、毎授業自分がわかっていない部分に次々気づいて、質問を受けても「来週までに調べてくるから待ってて…」と答えるしかない状況。
それでも、繰り返し授業することで、自分もその分野に再度詳しくなれる楽しさや、この内容をこの学生たちにうまく伝えられるのは自分しかいないと思えるようになって、慣れていったそうだ。
どれほどダメダメで落ち込んだとしても、少しずつ自分の中で反省して改良して、続けていくことで、見えてくるもの得られるものがありそうだなと思えた。もっと深い内容も話せるように研鑽しないといけないなとも思ったし、胃が痛くなるような気持ちにもなるけれど、次回以降も参加したい。
間違えたときにどうしたらいいか
事実がある(と思われている)話なので、嘘は言わないように十分気をつけて話をしている。一方で、まだまだ勉強不足な部分も当然あり、全く初歩的な内容でもあとから間違っていたことに気づくことがある。そんな時は、スーッと血の気が引くし、ドキドキしてうまく眠れない。今すぐにでも話を聞いてくださった人全員のところを回って、間違っていた部分を伝えて説明したい衝動に駆られる。
ネット上の記事なら、あとから訂正するのは容易だ。だからこそ、引用の際には閲覧日を記載する。一方で、対面のイベントやライブ配信など、その場限りのものは、あとから訂正するのがとても難しい。そこに集まった人たちとは二度と出会うこともないだろう。動画の場合も後から再編集しづらく、再度アップすると別動画として登録されてしまう。あとから訂正したいとき、どうしたらいいのだろう。
製品開発でリサイクルについても考えるように、情報を誰かに渡したら終わりではなくて、受け取った人がどうしていくのか、それが消費された後のことも考えなくてはいけないのだなと思った。今回参加した企画は、正直な間違いが許容されるような議論の雰囲気があったので、あまり怖がりすぎないでもいいのかもしれない。
大前提として、内容や伝え方含めて、できるだけ正確な情報発信に気をつけることは、肝に銘じていきたい。
いろんなところに飛び込んでみると、世界の違った一面が見えて面白い。
自分の発表に関して、内容や話し方含めて反省点ばかりなので、改善を目指して次回、秋の学園祭でも講演者をやれたらいいな。
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