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日記 ビールとビル

留学生と話す機会は結構ある。そういうときに、日本語で何がむずかしいか聞くのが好きだ。自分は日本語を母語とするが、それでも知らなかった日本語の一面を知ることができる。


ビールとビル

韓国に行ったときに、現地の学生と話していて言われた。
「ビールとビルの違いが聞き取れない」らしい。かなりびっくりした。自分にははっきり聞き分けられるから、考えたこともなかった。一音のばす長さの感覚がわからない、どちらも同じ単語に聞こえるそう。「ー(伸ばし棒)」って他の言語に存在しないのかもしれない。英語でも「No」を「Nooooo」のように言ったり書いたりして、強調を表したりするけれど、同じ単語だ。音の長さで意味が変わってしまう単語ってあるのだろうか。

日本語でビールとビルを間違えても、文脈からどちらか判断できそうではあるが、一歩間違えるとコントみたいなやりとりになってしまう危険がある。

ちなみに、韓国語には「ざじずぜぞ」の発音がないらしい。「ぞ」が「ジョウ」になってしまう。進撃の巨人好きの人と話していて、名言「心臓を捧げよ」を日本語で言ってもらおうとしたら、「シン(↓)ジョウ(↑)を捧げよ」になってしまって、いくら練習しても言えずじまいだった。「ぞう」を発音しようと意識しすぎてイントネーションもつられて上がってしまって、みんなでたくさん笑ってなんだか楽しい時間だった。


お疲れ様です、よろしくお願いします

ラボから帰るときは、必ず残っているメンバーに対して「お疲れ様です」と言って出る。もう癖になっていて、相手が日本人だろうと留学生だろうと構わず「お疲れ様でーす」と言うことにしている。でも留学生に対してだったらその後に「See you!」とか「See you tomorrow」「See you next week」「Have a good weekend」などと続ける。

英語には「お疲れ様です」に当たる単語がない。
一度、留学生から「あなたが今言ったお疲れ様ですってどういう意味?」と聞かれて答えに窮してしまった。「Good jobとかかな…」と答えたが、どう説明するのが正解だったのか、心に引っかかっている。

部屋を出るときに言う「お疲れ様です」と「お疲れ様でした」の違いは何?とも聞かれたことがある。同様に、飲食店で食事をして店を出るときに言う「ご馳走様です」と「ご馳走様でした」の違いは何?とも言われた。
そのときは、現在形で使えるものと過去形でしか使えないものの違いかな、と答えた。でも、どちらも正解な場面は多いし、自分でも気分で使い分けている。どちらにしても、今までやっていたこと(仕事や食事など)が終わった後に発する言葉ではあって、その現在形と過去形って何?という気持ちにもなる。考えたこともなかった。

「よろしくお願いします」も日常で頻出の単語だが、英語には存在しない。場面によって「Nice to meet you」だったり「Thank you」や「Best regards」と言った単語に置き換えることはできるけれど、「よろしくお願いします」そのものを表す単語は英語にないのだ。コンセプトが存在しない。

そういう点でいうと「すみません」も、英語では複数単語に分かれる。
「Sorry」に訳しがちだけれど、場所を譲ってほしいときや店員に声をかけると言ったシチュエーションでは「Excuse me」の方が自然な気もする。
イギリスに行ったとき、体や手がぶつかってしまったときは「Sorry」と言って、日本の「すみません」よりも確実に、かつ素早く言われてびっくりしたことがある。日本のすみませんって、Sorryよりも弱々しい感じがする。


懐かしい

英語にはコンセプトがない日本語の一つが「懐かしい」らしい。

「nostalgic」はフラットな感情やちょっとマイナスなイメージの単語で、あまり使わないとも言われる。日本語でノスタルジーというと懐かしいと同義語のような気がしてしまうが、違うらしい。

故郷に帰って両親に「日本が懐かしいなー」と言いたかったとき「懐かしい」が言えない!と、もどかしい思いをしたそうだ。日本語の懐かしいには、ただ思い出すだけではなく、ポジティブなやさしい気持ちを持って思い出す意味がある。「しょうがない」とかも英語にはない。

英語以外にも、スペイン語には「いただきます」に当たる言葉がなかったり、逆に日本語にはないコンセプトの単語もいろいろあるんだろうなと思う。


「が」と「は」の使い分け

日本語を学んでいくと当たる壁らしい。
服選びのときなんかに「私は好き」は言うけれど、「私が好き」とは言わないし、どちらかと言えば「私これ好き」と言った方が自然。「は」と言ってしまうと、「他の人はどう思うかわからないけど…」と含みがあるように感じてしまう。でも文法的には「私は好き」と「私が好き」はほぼ同じような気がして、その違いを説明するのはむずかしい。

英語の「the」と「a」の使い分けみたいな感じなのだろうか。


同じ漢字でも読み方がちがう

中国から来た留学生が当たる問題。
同じ漢字だから意味はわかる、でも読めない。訓読みと音読みがあるのトリッキーすぎるよなとは自分も思う。母語でも読み間違えるし。
ちなみに中国語の「化学」は、日本語から逆輸入した単語らしい。「物理」とかも同じ。日本で先に漢字に訳されて、海を渡ったのだ。


エナジードリンクとエネルギー

エナジードリンクもエネルギーもどちらも同じ「energy」を指している。なのに読み方がちがう。「エネルギードリンク」とは言わない。え、なんでなんだろう?他にもポルトガル語由来のもの、ドイツ語由来のもの、イギリス英語由来のもの、アメリカ英語由来のものなど、カタカナ語にはいろんな外来語がある。先に由来の言葉を話していた人にとって、日本語版の単語を覚えるのは結構大変そうだなと思う。

日本人の話すカタカナ英語がわかりにくい、通じない、と言った話にもつながる。日本語のカタカナを先に知っているから、「energy」を「エネルギー」と発音しましうのだ。おかげで、ちょっと発音がネイティブ英語っぽいだけで、あなたは日本人なのに英語が聞き取りやすい、発音がいいね、と留学生にほめてもらえることが多い。

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