マレーシア・フィリピン、後発進出が一番勝ちやすい市場
「目立たない国」だからこそ、日本ブランドにチャンスが残っている
ASEAN越境ECシリーズ、6回目です。
ここまでシンガポール・台湾・タイと、ASEANで存在感の大きい市場を順に見てきました。今回扱うのは、その三つに比べると、地味な印象のある二つの国です。
マレーシアとフィリピン。
東南アジアの話題になると、たいてい後回しにされる二つの市場ですが、私たち韓国スタートアップから見ると、この二つは 「後発で入っても勝ちやすい」 という、とても貴重な特性を持っています。
今回は、その理由と、日本ブランドが取るべき具体的な戦略を整理していきます。
なぜ「目立たない市場」が、後発に有利なのか
ASEANで日本ブランドが進出する順番は、ほぼ決まっています。
シンガポール → 台湾 → タイ → そして、その次にようやくマレーシア・フィリピン・インドネシアが検討される。
この「定石」の結果、何が起きているか。
シンガポール・台湾・タイには、すでに数百の日本ブランドが押し寄せていて、競争が激しい。一方、マレーシアとフィリピンは「日本ブランドの密度がまだ低い」状態で残されています。
つまり、後発進出組にとっては、
先行ブランドが少ない = 競争相手が少ない = 認知ゼロから始めなくていい
という三つの好条件が揃っている市場なのです。
「日本ブランドだから」というだけで、ある程度の差別化ができてしまう。これは、シンガポールや台湾ではもうあり得ない状況です。
マレーシア市場の「3つの特性」
1. 多民族国家だが、購買行動は意外と統一されている
マレーシアは、マレー系・中華系・インド系が混在する多民族国家です。「言語が違う、宗教が違う、文化が違う、ターゲティングが難しそう」というイメージを持たれがちです。
しかし、ことECに関しては、現実はずっとシンプルです。マレーシアのEC市場の 約7割は、英語と中国語(マンダリン)で完結 します。マレー語は補助的に使われる程度。商品ページを「英語+簡単な中国語」で作れば、十分にマレーシア市場全体をカバーできます。
タイやインドネシアと違って、現地語専門のローカライズに大きな投資をしなくていい。これは中小企業にとって、大きなメリットです。
2. 購買力は「ASEANの中では中上位」
マレーシアの一人当たりGDPは約1.3万ドルで、シンガポール・台湾には及ばないものの、タイ・インドネシア・フィリピンより上です。
ECプラットフォームでの平均購入単価も、ASEANの中では比較的高い水準。「中価格帯の上質な日本商品」が最も売れやすい価格レンジ です。シンガポールほどプレミアムを取りにくく、タイほど安売り競争に巻き込まれない、ちょうど良いポジション。
3. ハラル認証は「あれば強い」が「なくても売れる」
マレーシアの人口の約60%はマレー系イスラム教徒です。「ハラル認証がないと売れないのでは」と心配される方が多いのですが、これは必ずしも正しくありません。
中華系マレーシア人(人口の約23%)と、ECヘビーユーザー層(若い都市部の中間層)は、ハラル非認証の日本商品も普通に購入します。
ハラル認証はあれば確実にプラス、しかし最初から取得しなくても市場参入は可能 ― これが現実的な感覚です。
フィリピン市場の「3つの特性」
1. 英語が完全に通じる、ASEAN唯一の市場
フィリピンの大きな強みは、英語が事実上の第二公用語 だということです。商品ページ・カスタマーサポート・SNS広告 ― すべて英語だけで運用できます。
シンガポールも英語圏ですが、シンガポールは市場規模が小さい。フィリピンは人口約1.1億人 ― ASEAN第二の市場規模を持ちながら、英語で運用できる、ほぼ唯一の国です。
これは越境ECの運用コストを劇的に下げる要素で、特にリソースが限られた中小企業にとって、フィリピンは非常に入りやすい市場です。
2. ライブコマースとSNSの強さ
タイほどではありませんが、フィリピンもライブコマースとSNS購買が急速に伸びている市場です。特にFacebook・TikTokを通じた購買行動が、若年層を中心に定着しています。
ただしタイとは違って、フィリピンのライブコマースは 「親しみやすさ」「エンタメ感」 が成功要因。タイのような価格交渉文化ではなく、「楽しいから買う」という感情が強く動く市場です。
3. 平均購入単価は低い、しかし「数」が出る
フィリピンの一人当たりGDPは約3,800ドル ― ASEANの中では低めです。一回あたりの購入単価も低い傾向があります。
しかしこれは弱点ではなく、「安価で高頻度で売れる商品」と相性がいい市場 という意味です。日用品・食品・スキンケア消耗品など、リピート購入が起きやすいカテゴリーで強さを発揮します。
韓国ブランドのマレーシア・フィリピン攻略事例
マレーシア:「中華系コミュニティ起点」が成功の鉄則
マレーシアで成功している韓国ブランドの多くは、最初に中華系マレーシア人をターゲット にして展開を始めました。
理由は明確で、中華系マレーシア人は韓国コンテンツ(K-pop, K-drama)への接触が最も多く、購買力も高く、ECヘビーユーザーだからです。彼らをアーリーアダプターとして取り込み、レビューと口コミが蓄積された段階で、マレー系・インド系へ自然に広がる ― この順番を守ったブランドが長期で勝ち残っています。
日本ブランドにとっても、この戦略はそのまま適用可能です。マレーシアの中華系都市部(クアラルンプール、ペナン、ジョホールバル)を最初の3〜6ヶ月のターゲットに絞る ことで、効率の良い立ち上げが可能になります。
フィリピン:「マイクロKOLの数」で勝負
フィリピンで失速した韓国ブランドの多くは、メガKOL一人に大型予算を投下して終わりました。一方、長期で残ったブランドは、フォロワー1万〜10万のマイクロKOL を数十人単位で起用しました。
フィリピンの消費者は、「身近な誰か」のおすすめを強く信じる傾向があります。芸能人クラスの巨大インフルエンサーよりも、自分と同じ生活圏にいる人が「これ良かった」と言うことの方が強く効くのです。
タイがメガKOLとマイクロKOLの中間層(中堅KOL)で勝負する市場だとすれば、フィリピンは完全にマイクロKOLの市場です。
日本ブランドが、この二つの市場で取るべき4つの原則
原則1:マレーシアは「英語+中国語」、フィリピンは「英語のみ」で十分
両国ともに、ローカライズの言語ハードルが低い市場です。タイ・インドネシア・ベトナムへの展開と比べて、現地語ネイティブチェックのコストが大幅に下がります。
シンガポール・台湾で作った英語版商品ページを、ほとんどそのまま流用可能。これは中小企業にとって、運用効率の面で大きな利点です。
原則2:マレーシアは「中華系都市部」から、フィリピンは「マニラ首都圏」から
両国ともに、最初から国全体を狙わないことが鉄則です。
マレーシアならクアラルンプール・ペナンの中華系都市部、フィリピンならメトロマニラ。人口の3割未満をターゲットにすることで、運用効率と学習速度を最大化 できます。
成果が出てきた段階で、徐々に地方都市・他民族層・他地域へ広げていく。これがASEAN後発進出の標準的な勝ちパターンです。
原則3:価格帯を、両国で変える
両国は購買力が違うので、価格戦略も変える必要があります。
マレーシア向けは「中価格帯・少し高品質」のSKUを 、フィリピン向けは「低価格帯・高頻度購入」のSKUを 中心に投入する。同じ商品ラインの中で、マレーシア用とフィリピン用を意識的に分ける戦略が効きます。
原則4:インフルエンサー戦略を、国別に変える
マレーシアでは中堅クラスのKOL(フォロワー10万〜30万)が中心、フィリピンではマイクロKOL(フォロワー1万〜10万)を数多く起用する。これが両国の標準パターンです。
タイで効いた「メガKOL一発勝負」は、両国とも通用しません。タイ・マレーシア・フィリピンで、それぞれインフルエンサー戦略を変える前提で予算を組んでください。
「目立たない市場」を、最初の本命にする選択肢
ここまで、シリーズ全体で6カ国を見てきました。
シンガポール・台湾・タイは、確かに ASEAN の主要市場です。しかし、これらの市場はすでに日本ブランドの競争が激しく、後発で入る企業にとっては、決して入りやすい場所ではなくなっています。
一方、マレーシアとフィリピンは、依然として「日本ブランドの空白地帯」が多く残っている市場です。後発で入っても、最初の数ヶ月で目に見える成果を出せる可能性が、他の3カ国よりも高い。
「ASEAN越境ECを始めたいが、シンガポールも台湾もすでに競合だらけだ」 と感じている日本企業にとって、マレーシアやフィリピンを最初の本命に据える という選択肢は、実はとても合理的なのです。
「目立つ市場だから良い市場」ではない。「自社が目立てる市場が、良い市場」 ― これがASEAN進出の本質です。
次回予告
第7回は、これまで何度か触れてきた 「韓国K-beautyがASEANで起こしたこと」 を、一つの章として深掘りします。
なぜK-beautyはASEANであれほど成功したのか。 日本ブランドがそこから学べる戦略は何か。 そして、K-beautyがすでに通った道を、日本ブランドはどう自社流に活かせるのか。
具体的な事例とデータで、次回も丁寧に見ていきます。
今すぐ相談を申し込んで、Rindaが代わりに行う 1〜2週間の無料営業 を始めてみませんか?
ご相談やお問い合わせは、いつでもお気軽にLINEからご連絡ください。
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

