SNSマーケティングの次の一手:なぜXではなくThreadsなのか
「日本でテキストSNSを始めるなら、まずはXの公式アカウントからですよね」
先日、日本市場への進出を準備しているソウルのスタートアップのオフィスで、マーケティング担当のMさんからこう切り出されました。
日本のテキストSNSといえばX(旧Twitter)。企業アカウントもインフルエンサーもXに集まっており、SNSマーケティングの起点としてXを選ぶのは、一見すると非常に合理的な判断のように思えます。
しかし、日本市場のデジタル環境を継続的に観察してきた私たちからすると、この「常識」はすでに転換点を迎えつつあります。
私たちがその場でMさんに提示したのは、まったく逆の提案でした。
「今から日本でテキストSNSの発信を始めるのであれば、XではなくThreadsから始めるべきです」
Threadsといえば、「Instagramのおまけ」という印象を持たれている方も多いのではないでしょうか。
なぜ今、日本市場においてThreadsがスタートアップの武器になるのか。
私たちが実際に日本語アカウントを運用して得たデータと、市場の変化をもとに、その理由を解き明かしていきます。
モバイルアプリの世界で、ThreadsはすでにXを抜いている
まずは、客観的なデータから見てみましょう。
調査会社Similarwebが2026年初に発表したレポートによると、Threadsのモバイルアプリにおける1日のアクティブユーザー数は1億4,150万人。同時期のXは1億2,500万人にとどまりました。
つまり、スマートフォンアプリの利用者数においては、すでにThreadsがXを上回っているのです。
「それは世界全体の話であって、日本は別でしょう」と思われるかもしれません。
ところが日本国内においても、Meta社は公式数値こそ公表していないものの、アプリダウンロード数の国別比率からMAU(月間アクティブユーザー数)は1,000万人を超えていると推測されています(ホットリンク調べ)。しかもMeta社自身が、日本を「最注力国の一つ」と公言しています。
さらに、国内の利用実態調査(hotice社、536名対象)からは、興味深い利用スタイルが浮かび上がります。
週1回以上アクセスする層は約48%
「ほぼ毎日」利用するユーザーは約5人に1人
約7割のユーザーが、1日の利用時間を30分以内に収めている
ここから見えてくるのは、Threadsが「ダラダラ眺めるSNS」ではなく、隙間時間に情報を効率よく摂取する「常駐型メディア」として定着しつつあるという事実です。
この利用スタイルは、ビジネス情報との親和性が極めて高い。私たちはそう分析しています。
なぜスタートアップにとって「今」なのか:3つの構造的優位
データを踏まえた上で、リソースの限られたスタートアップにとってThreadsが有利に働く理由を、3つの観点から整理します。
1. 「ジャンル定番アカウント」の椅子が、まだ空いている
大手ブランドの一部はすでに数十万フォロワーを獲得していますが、業種別に見れば空白地帯が多く残されています。特にBtoB、ニッチ業種、地方企業ほど、先行者優位を取りやすい状況にあります。
象徴的な事例が、石川県白山市のブロッコリー農家・安井ファームです。
スタッフ2名による運用で、フォロワーは10万人超。大手でもなく、都市部でもなく、派手な商材でもない。「SNSで勝ちにくい条件」が揃っているにもかかわらず、です。
「勝敗を分けているのは、予算ではなく設計である」
この事例が示す事実は、リソースの限られたスタートアップにとって、何よりの追い風といえます。
2. 外部リンクへの「ペナルティ」が、まだ軽い
Xでは、外部リンクを含む投稿のリーチが大きく抑制される傾向が年々強まっています。プロダクトのLPやオウンドメディア、採用ページへ誘導したいスタートアップにとって、これは死活問題です。
一方Threadsは、現時点で外部リンク投稿のペナルティが相対的に軽い設計となっています。「発信→サイト送客」という導線が、まだ素直に機能するプラットフォームなのです。
加えて、投稿は最大500文字、画像は10枚まで添付できます。Xの無料版(140文字)と比較して、プロダクトの背景やストーリーを語る余白が圧倒的に広い。説明を要する商材を扱う企業ほど、この文字数の差が効いてきます。
3. Meta広告の資産を、そのまま流用できる
2025年4月より、Threads広告はMeta広告マネージャーから配信可能になりました。Instagram・Facebook広告と同じピクセル、同じオーディエンス、同じクリエイティブ資産をそのまま利用できます。
すでにMeta広告を運用している企業であれば、追加工数ほぼゼロで配信面だけを拡張できる。この構造的メリットは、広告予算の限られたスタートアップにこそ大きく働きます。
なお、Threadsはビジネスアカウントへの切り替えが不要で、通常アカウントのままインサイト機能まで利用できます。「まず試す」ためのハードルが、極めて低く設計されているのです。
(Meta広告の活用については、前回の記事「なぜLinkedInではなくMetaなのか」で詳しく解説しています)
韓国市場で先に観測された「ビジネスSNS化」の波
ここで、私たちが韓国市場で目撃してきた変化を共有します。
実は韓国では、Threadsが一足先に「ビジネス系発信の場」として定着し始めています。スタートアップの創業者、マーケター、営業担当者が実名で知見を発信し、そこから採用や商談、協業へとつながるケースが日常的に生まれているのです。
特徴的なのは、その温度感です。
Xのような「バズを狙った強い言葉」ではなく、失敗談や試行錯誤の途中経過をそのまま共有する。すると同じ課題を持つ読者からリプライが集まり、コメント欄が小さな勉強会のような空間になっていく。
私たち自身、韓国語アカウントでの発信をきっかけに問い合わせをいただいた経験が何度もあります。展示会への出展には数百万円を要しますが、Threadsの投稿は10分で書けます。「見込み客との接点を継続的に生み出す装置」としての費用対効果は、比較になりません。
日本のThreadsを観察していると、この波が1〜2年遅れで到来している感覚があります。国内調査においても、Threadsは速報性よりも共感を軸としたコミュニケーションの場になりつつあると分析されています。
派手な広告よりも「顔の見える発信」が信頼につながる日本のビジネス文化と、この空気感はむしろ相性が良いのではないでしょうか。
日本語アカウント運用で見えてきた「4つの鉄則」
それでは、実際にどう運用すべきか。私たちが日本語アカウントの運用を通じて得た、4つの鉄則を共有します。
1. 500文字を「使い切らない」
Threadsは最大500文字まで投稿できますが、反応が良いのは意外にも短い投稿です。1スクロールで読み切れる長さに、具体的な数字か体験談を1つだけ入れる。情報を詰め込むほど、読了率は下がります。
2. 「会話量」がアルゴリズムを動かす
アルゴリズムは公式には非公開ですが、リプライ数と引用数が重要なシグナルであると推測されています。完成された情報発信よりも、「皆さんはどうされていますか?」と問いかける投稿のほうがリーチは伸びる。発信ではなく、会話の起点を設計する意識が求められます。
3. 完成品より「途中経過」を出す
プレスリリース的な告知投稿には、驚くほど反応がありません。逆に「今こんな失敗をしている」「この数字の解釈に迷っている」といった進行形の投稿にはリプライが集まります。Threadsで求められているのは広報ではなく、「人」なのです。
4. DMまで含めて、商談導線を設計する
ThreadsではDM機能が利用できるため、投稿への反応をそのまま商談につなげる設計が重要です。コメント欄で会話を生み、関心度の高い相手とはDMで個別にやり取りし、必要に応じて資料・LP・問い合わせフォームへ誘導する。
この導線を事前に用意しておくことで、単なるエンゲージメントを、具体的な商談機会へ変えやすくなります。
まとめ:「様子見」のコストは、静かに上がっていく
先行者優位のフェーズは、永遠には続きません。参入企業が増えれば、フォロワー獲得の難易度もコストも一気に上昇します。かつてのX運用やSEOがそうであったように。
しかもThreadsの発信は、リード獲得だけにとどまりません。実名で試行錯誤を発信し続けるアカウントには採用の応募が集まり、投資家や提携先からの声がかかる。一つの発信チャネルが、マーケティング・採用・PRの三役を担ってくれるのです。
必要なのは大きな予算ではなく、週2〜3本の投稿を続ける体制と、会話に付き合うわずかな時間だけ。
まずは1ヶ月、社内の誰か一人が「1日15分」をThreadsに投資してみてはいかがでしょうか。想像より早く、御社の業界における「定番アカウント」の椅子が見えてくるかもしれません。
【無料DL】実行編プレイブックをご用意しました
とはいえ、いざ始めるとなると「具体的に何から手をつければいいのか」と迷われる方も多いはずです。
そこで今回、本記事の内容をそのまま実行に移せる資料として、『Threadsスタートアップ・マーケティング・プレイブック』(PDF・全8ページ)をご用意しました。
アカウント開設前のチェックリスト
下線部を埋めるだけで使える投稿テンプレート5型
1日15分で回す「最初の30日プラン」
週次で確認すべきKPIシートと、アカウントを殺すNG集
記事では書ききれなかった「実行編」を、すべてこの1冊に詰め込んでいます。以下より無料でダウンロードいただけますので、ぜひ明日からの運用にお役立てください。
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