第二十三話 やきもち|新しい春
第三章 ユウ先輩編
第二十三話 「やきもち」
今までなら、
たぶん気にならなかったと思う。
ある日のサークル。
ユウ先輩が、
女の先輩と楽しそうに話していた。
ユウ先輩と同じ二年生。
二人の話が聞こえてきたのは、
夏合宿の話をしていたからだった。
「ユウ、今年も海入る?」
「入ると思う」
「去年めっちゃ焼けてたよね」
「ちょっと調子乗った」
「今年は日焼け止め貸してあげるから」
「ユウ」って呼ぶんだ。
それに、
日焼け止めを貸すなんて、
ずいぶん仲がいいんだなと思った。
同級生なんだから、
それくらい普通なのかもしれない。
でも、
なぜか少しモヤモヤした。
それからも、
なんとなく二人の会話が気になった。
去年の合宿の話。
私がまだ、
この大学にも、
このサークルにもいなかった頃。
去年のユウ先輩を、
この人は知ってるんだ。
海に入ったことも、
日焼けしたことも。
私の知らないことを、
当たり前みたいに知っている。
「今年も楽しみだね」
女の先輩が言った。
「そうだね」
ユウ先輩が答える。
いいな。
そう思った。
自分でも、少しびっくりした。
別に二人が
特別仲良さそうだったわけじゃない。
ただ同級生で、
去年も一緒に合宿に行っていて、
その思い出を話しているだけ。
それなのに、
なんとなく羨ましかった。

帰る頃。
「ユウ、すぐ帰る?」
また、
あの先輩の声が聞こえた。
「うん」
「うちの電球替えてくんない?」
「電球?」
「届かないんだよね」
「いいよ」
二人が並んで歩いていく。
電球替えてもらうんだ。
ってことは、
普通に家に行くんだ。
下宿している先輩たちは、
こういうことも普通なのかな。
実家から通っている私には、
なんだか少し羨ましかった。
今日の私は、
そんなことばかり気にしていた。
彼女と別れたら、
もっと楽に好きでいられると思ってた。
でも、そうでもなかった。
誰と仲がいいのか。
誰がユウ先輩のことを
私より知っているのか。
そんなことまで、
気になるようになった。
好きなままでいられたら、
それでいいと思っていたのに。
私も、もっと近くにいたい。
もっと、ユウ先輩のことを知りたい。
これが、
やきもちなのかな。
夏合宿まで、あと少し。
二泊三日も一緒にいたら、
今より少しは、
ユウ先輩のことを知れるかな。
そんなことを、
少しだけ期待していた。
第二十四話へ続く
私の高校生の頃の恋は
こちらから🌸
