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セツ編終章― 黄昏の終わり

前回のお話

今回でセツの話は最後です。最期までゆったりと進行していきます……。




ある日の夕暮れ、セツはいつものように縁側に腰を下ろしていた。
畑を渡る風が、熟した稲の香りを運んでくる。
その香りの中に、懐かしい日々の気配を感じた。

「今日もよう働いたのう」
夫が隣に腰を下ろし、湯気の立つ茶碗を差し出した。
「もうお前が畑に出ることも無いのに、まだ顔を出しておる」
「うぬ。体は動かんが、気持ちはまだ働きたいんじゃ」
「まったく……相変わらずじゃのう」
そう言って笑い合うふたりの頬を、夕風がやさしく撫でていく。

沈みかけた陽を眺めながら、セツは小さく呟いた。
「……不思議なもんじゃな。気づけば、あっという間じゃ」
夫は黙って頷き、茶をひと口すすった。
その静けさが、何より心地よかった。

夜、囲炉裏の火が赤々と灯る中、
セツはふと、遠い記憶の中の声を思い出す。
両親の笑い声、妹の手のぬくもり、
そしてあの少年――トモの面影。

「皆、先に行っとるんじゃろうな」
呟いた声は火の音に溶け、ゆっくりと消えていった。

その晩、セツは深く静かに眠りについた。
まるで安らかな夢に身を預けるように。
傍らには夫が座り、彼女の手を握りしめていたという。

――その夜、外には一陣の風が吹き抜けた。
稲穂がざわめき、空には満ちる月。
翌朝、村人たちは、静かな微笑みを浮かべたまま眠るセツを見つけた。

彼女の顔には、悔いのない人生を終えた者だけが持つ穏やかさが宿っていた。


【総括】

セツという人は、
決して特別な力や英雄譚を持つ人物ではなかった。
だが彼女は、与えられた日々を大切に抱きしめ、
愛する人々の中で笑い、働き、生き抜いた。

その生き方は、
時代の荒波を越えてもなお、誰かの心にあたたかく灯り続ける。
まるで土の匂いに混じる陽だまりのように。


……というわけでセツ編はこれで終わりです。あまり盛り上がりは無い話だったと思いますが……最後まで読んでくださった方、有り難うございます。
次回はセツの人生に触れて私が思ったことを訥々と語りたいと思います。

私が作成したセツのイメージソング…の一曲です。

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